ヤマトはアマゾンに倉庫や店舗として搾取されている/純丘曜彰 教授博士
INSIGHT NOW! / 2017年3月8日 23時41分
純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学
なぜデパートが潰れるのか。都心一等地に、一日で実際に売れる以上の商品在庫を抱えているから。その日に売れるのではない商品は、死に在庫。翌日まで、ただ物を置いておくだけの場所として一等地を使っている。だから、総面積当たりの売り上げが悪い。置いただけの分を、ほぼその日のうちに売り切る、回転率のいい百均の方がまし。だから、デパートは潰れ、百均に替わっていく。
一方、なぜアマゾンが儲かるのか。無店舗だから。大量多種の商品を抱えていても、しょせんは郊外倉庫。地代は安く、倉庫運営費は知れている。配送料をアマゾン側が負担しても、都心一等地に店を構えるよりは、はるかに安く済む。
そして、ヤマト。自分を配送業だと思っている。それが間違い。ほんとうは倉庫業、テナント業、販売代行業だ。デパートのような都心一等地ではないまでも、ヤマトもまた、法外に地代の高い、都心住宅地に配送拠点がある。個々の荷物が入ったり出たりで見えなくなっているが、その配送拠点で、アマゾンが毎日、実質的に占有し続けている面積は、かなりの広さに及んでいる。つまり、アマゾンは、都心住宅地のヤマトの配送拠点を、荷物を動かす配送料だけで、実質的に自分の「店舗」として乗っ取り、タダで永続的に使っている。
それだけではない。アマゾンは、ヤマトのトラックも、自分の動く「倉庫」として、タダで利用している。本来ならアマゾンが自分で費用をかけて倉庫の中に保管しているべきものが、全国へ散っていくトラックに乗って移動しているだけで、それもまた、あいかわらずアマゾンの「在庫」。この間の保管費用も、ぜんぶヤマトがタダでかぶっている。
もしヤマトがほんとうに純粋な配送専業者で、アマゾンの郊外倉庫から、アマゾンの都心住宅地の「店舗」へ、そして、そこから個々の顧客へ、即日に荷物を運ぶことだけに徹すれば、地代の高い都心住宅地の配送拠点の面積をもっと減らすことができ、はるかに安く運営できるだろう。逆に、アマゾンは、より多くの「在庫」をヤマトのトラックや配送拠点の中に預ければ預けるほど、倉庫や店舗の運営費用を浮かすことができてしまう。
アマゾンがオプションにしている速達サービスも、実質的にはヤマト側の時間指定をうまく利用したもので、ヤマトの負担増で、アマゾンが儲かる。おまけに、アマゾンは、倉庫からの早出しで、より多くヤマト側の保管負担にでき、むしろ経費節減。アマゾンの箱は、いつもどれもスッカスカだが、あれはヤマト側の負担になる空間占拠費用を考慮していないから。そのせいで、ヤマトは、カラに近いアマゾンの箱で、トラックも配送拠点も埋め尽くされ、配送回数がムダに増える。
ヤマトが、ちょっとやそっと配送料を上げても、このカラクリは変わらない。通販業者は、配送料だけで済むのなら、実質的に、ヤマトが持つトラックや都心住宅地の配送拠点を、自分の「倉庫」や「店舗」として搾取的に利用しようとする。ほんとうに自分で都心に倉庫や店舗を持ったら、その取得費用、維持費用は固定で自分持ちになり、デパートのように大きなリスクを背負い込むことになる。だが、これが配送料で済むなら、それは費用としてフローで、おまけに顧客側の負担に付け替えられる。一方、ヤマトは、自分のトラックや配送拠点を通販業者に占拠され、そのくせ、その固定的な資産維持リスクは、デパート並みにヤマトが被ることになる。
動的なものは、動きを追うのではなく、マクロ的に総体をひとつかみに見ないと、実体がわからない。ヤマトは、現実と将来を見極めて、ゼロから事業再定義すべきだ。そうでないと、今後も増え続ける通販業者に、古い宅配システムのアラをいいように利用され、いくら配送料を上げても、ワーキングプアが追いつかないことになる。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『死体は血を流さない:聖堂騎士団 vs 救院騎士団 サンタクロースの錬金術とスペードの女王に関する科学研究費B海外学術調査報告書』『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)
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