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サービス向上の事業成長モデル (1) 【連載サービスサイエンス:第31回】/松井 拓己

INSIGHT NOW! / 2017年5月23日 0時0分


        サービス向上の事業成長モデル (1) 【連載サービスサイエンス:第31回】/松井 拓己

松井 拓己 / 松井サービスコンサルティング

サービスの事業成長を考える観点として4つのポイントについて触れてみたいと思います。サービス向上の取り組みで大きな成果を出している先進企業では、下記の4つをしっかりと踏まえて取り組んでいます。

①サービスを受けたいと思っていただくこと

②サービスに満足して頂くこと

③サービスを再度受けたいと思っていただくこと

④サービスを誰かに勧めたいと思っていただくこと

このなかで、「②サービスに満足していただくこと」に努力していない企業はないと思います。しかしお客様にいくら「ありがとう」と言って頂けても、事業である以上、収益の向上に繋がらなければ意味がありません。つまり、①③④のように、新たなお客様にサービスを利用していただいたり、何度もリピートしていただくための取り組みも進めなければ、CS向上を経営貢献に繋げることは難しいと言えます。

サービスは目に見えないので、①の「サービスを受けたいと思っていただくこと」は簡単ではありません。モノであれば見たり、触ったり、使ってみるということが容易にできますが、サービスは受けてみなければ分からりません。サービスを受けたいと思って頂くことは、思った以上に難しいのです。

多くの場合、CS向上の大きな目的の1つに、③の「サービスを再度受けたいと思っていただくこと」を掲げています。しかし、CSが向上したのにリピートが増えなくて苦悩している企業が実に多いものです。リピートに繋げるためのCS向上の仕方を理解する必要があるのです。

また、「リピート」と聞くと、「わが社は一生に一度しか利用しないお客様が多いから関係ないのでは?」「お客様のリピートはだいぶ先なのでピンとこない。」と仰る方もいます。実は「リピート」とひとことで言っても、様々なタイプがあります。「リピートはうちには関係ない」と切り捨てる前に、価値あるリピートのタイプを掴んでおくことが大切です。

そして、クチコミや顧客紹介にあたる④の「他人に勧めたいと思っていただくこと」。これは、BtoCビジネスにしか当てはまらないのではと思われる方も多いですが、実はBtoBビジネスでも熱心に取り組んで成果を出している企業がたくさんあります。もしこの観点を普段意識していなければ、ここにもチャンスがあるかもしれません。

一見すると当たり前に思えるこれら4つのポイントの中にも、取り組みの盲点や価値ある気付きが潜んでいます。それでは早速、CS向上を経営貢献に繋げるための4つのポイントの中で、見過ごされがちな①③④について詳しく見ていきたいと思います。

サービスを受けたいと思って頂く

お客様に喜んでいただくためにサービスを磨いても、お客様が来てくれなければサービスを提供することすらできません。まずは「サービスを受けたいと思っていただく」必要があるのです。

言われてみれば当たり前ですが、実はこれが意外に難しいのです。サービスは目に見えないので、お客様の期待に合ったサービスかどうかは、サービスを受けてみないと分からないという特徴があります。ゆえにお客様は、期待と不安の入り混じった中でサービスを選ぶことになります。「サービスを受けたい」と思っていただくためには、この期待や不安に寄り添わなければなりません。

しかし、サービス提供者の努力がお客様の期待や不安にマッチしていないことはよくあります。例えば外食店や小売店などの店舗型のサービスでは、お客様が居心地を期待しているのに、ホームページに店内の様子の写真が掲載されていない。お客様がガラス越しに店内を覗こうと思ったら、スタッフがすかさず「いらっしゃいませ!」と声をかけるので、気が引けてお客様が去っていってしまう。店内で店員さんがベッタリついてくるので、プレッシャーでゆっくり選べない。といった具合です。

目に見えない「サービス」を受けたいと思っていただくためには、お客様のどんな期待や不安を意識しなければならないのかを定義しておく必要があります。そして、お客様の期待や不安の観点で、自社のサービス営業の取り組みを見つめ直してみてください。「お客様に失礼がないように」、「チャンスロスにならないように」という思いで努力していることが、実はサービス提供者の都合や思い込みを押し付けていて、やればやるほどお客様が去ってしまっている。ということも少なくありません。

それでは続いて、③サービスを再度受けたいと思っていただくこと、④サービスを誰かに勧めたいと思っていただくことについて、次回の記事で順に触れていきたいと思います。

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