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サービス向上の事業成長モデル (2) 【連載サービスサイエンス:第32回】/松井 拓己

INSIGHT NOW! / 2017年5月30日 0時0分


        サービス向上の事業成長モデル (2) 【連載サービスサイエンス:第32回】/松井 拓己

松井 拓己 / 松井サービスコンサルティング

前回から、CS向上を経営貢献に繋げるための4つのポイントについて紹介してきました。今回は4つのポイントの中の3つ目「サービスを再度受けたいと思っていただくこと」について触れてみたいと思います。

「リピート」と聞くと、「わが社は一生に一度しか利用しないお客様が多いから関係ないのでは?」「お客様のリピートはだいぶ先なのでピンとこない。」と仰る方もいます。一生に一度しか利用しないサービス、リピートは何十年も先になるサービスはたくさんあります。これらのサービスにおいて、リピートは本当に関係のないものなのでしょうか。実は「リピート」とひとことで言っても、様々なタイプがあります。「リピートはうちには関係ない」と切り捨てる前に、価値あるリピートのタイプを掴んでおくことが大切です。

リピートには種類がある

リピートの中で最もポピュラーなのが、何度も同じサービスや製品を利用していただくというものです。例えば、「いつも同じお店を利用する」「いつも同じものを注文する」といった具合に、リピーターや常連さんは、このタイプのリピートをしてくださるお客様が多いと言えます。「うちは一生に一度しか利用しないお客様ばかりだから、リピートは関係ない」というのは、このタイプのリピートについて仰っているのだと思います。

しかしリピートには、他にもこんなものがあります。

例えばウエディングサービスの場合、初回打ち合わせを終えたお客様が、2回目の打ち合わせにも来てくれるかどうかは、サービス利用を決めて頂くうえで極めて重要なポイントです。つまり、初回打ち合わせの満足度が高くなければ、他社に決められてしまうかもしれないということです。このように、一生に一度のサービスであっても、いくつかのサービスプロセスで成り立っています。特に、プロセスの切れ目でお客様を失ってしまったり、満足度が下がってしまう恐れのあるサービスにおいては、「次のプロセスも我々を選んでいただく」という意味で、プロセスリピートが極めて重要です。サービスの利用を決めていただいたり、一生に一度の機会に選ばれ続けるサービスを実現するために、プロセスリピートを実現したいものです。

また、もう少し大きな視点でのリピートもあります。それは、「別のサービスを利用する時も是非このブランドで決めたい」と思っていただくブランドリピートです。例えば一生に一度のお買い物の場合、販売サービスへのリピートは何十年も先か、もしかしたら二度とないかもしれません。しかし、購入した後には、メンテナンスや保管、もしかすると買い替えや貸し出しも考えられるかもしれません。その際に、販売サービスの満足度が極めて高ければ、別のサービスも同じブランドで決めてくれる可能性が高まります。また、メンテナンスサービスの満足度が高ければ、そこからお付き合いが始まったお客様が買い替えを考えるときに販売サービスの窓口に相談を持ち掛けてくれるかもしれません。このように、販売事業やメンテナンス事業といった事業単体で見ていては見過ごされてしまいがちなのがブランドリピートです。

最近ではあらゆる業界でサービス化が進み、例えば今まで製造と販売の事業を行ってきた企業が、メンテナンスや管理といったサービス事業を展開するケースが増えてきています。しかし、お客様へのサービスシナリオが事業ごとに分断されてしまっていて、リピートを逃してしまっていることが少なくありません。サービスシナリオを事業の観点ではなく、お客様の視点で描き直すことで、お客様と長く良好なお付き合いを続けるためのポイントが見えてくるのではと思います。

少し余談になりますがこの考え方は、地域ブランドや地方創生にも当てはまります。地域ブランドを象徴する事業の満足度が極めて高く、この地域への関心や愛着が高まることで、地域へのリピートやクチコミが拡大し、地域の産業全体への波及効果を生み出すことができます。

このように、リピートとひとことで言っても様々です。自社にとって価値あるリピート、狙いたいリピートとはどんなものなのかを明確にしておくことが大切です。

さて、リピートについて少し理解ができました。では、リピートしたいと思っていただくためにはどうしたら良いのでしょうか。

リピートしていただくために

顧客満足向上とリピートの相関関係については、当連載で度々触れていますので、ご存知の方も多いと思います。お客様にリピートしていただくためには、少しでも満足度が高まれば良いというわけではありません。ある調査では、「やや満足」と答えた方の実に97%が「リピートしない可能性がある」ということが明らかになりました。つまり、お客様に「リピートしたい」と思っていただくためには、「大満足あるのみ」ということです。この価値観で、CS向上活動や顧客満足度調査を実施できているか、見つめ直してみる必要があります。

例えば、顧客満足度を平均値で分析していないでしょうか。顧客満足の平均値が高まっても、大満足したお客様が増えなければ、リピートは増えません。目指すべきは、「平均値」をいかに高めるかではなく、「やや満足」のお客様にどうしたら大満足していただけるかなのです。

また例えば、顧客満足度調査は「結果」だけを聞いていないでしょうか。「満足しましたか?」「正確で迅速なサービスでしたか?」「スタッフの印象は良かったですか?」など。もちろん、サービスの結果の評価はとても大切です。結果の評価が分かれば満足度の現在地が分かります。しかし、現在地が分かっても、次にどっちに向かって踏み出せば良いか分からなければ、顧客満足度調査は「調査しておしまい」になってしまいます。そこで大切なのが、そもそもどういう事前期待を持ったお客様なのかを掴むことです。例えば「やや満足」のお客様の事前期待が掴めれば、大満足していただくために具体的にどんな努力をしたら効果的なのかピンときます。

このように、CSとリピートの関係性を少し科学してみるだけで、より効果的な取り組み方が見えてくるものです。

さて次回は、④サービスを誰かに勧めたいと思っていただくことについてと、CS向上を経営貢献に繋げるための方法論について触れてみたいと思います。

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