受け身型サービスから脱却する(3) 【連載サービスサイエンス:第37回】/松井 拓己
INSIGHT NOW! / 2017年7月4日 0時0分
松井 拓己 / 松井サービスコンサルティング
受け身型も提案型も苦戦する時代になり、「問題探索型」への変革の必要性に触れてきました。問題探索型の最初のポイントとして、「身内になる」ことの重要性も明らかになりました。そこで今回は、問題探索型を実現するために、さらに2つのポイントも見てみたいと思います。
問題探索のしかた
お客様の身内になれたら、次に「問題を探し出すスキル」が必要になります。目に見えないサービスにおいては、この「問題」を掴むことが極めて重要です。問題解決は、問題を正しく定義できたら7割成功だとも言われています。それくらい重要であり、難しいことなのです。例えば法人のお客様の場合、そのお客様の問題は、様々な組織の問題が複雑に絡み合っていることが多く、問題の原因を「なぜ?」を繰り返すことで深堀りするだけでは、本当の問題を明らかにできないケースが多いようです。そこで効果的なのが、「問題の全体像」を明らかにすることです。問題の全体像を明らかにせずに、目の前の重要そうな問題の原因に対策をしようとしても、納得感に欠けたり、別の問題が発生したりと、うまく問題解決が進められません。問題の全体像が明らかになれば、その全体像を見ながら、どの問題からどういう順番に解決することが効果的かを、納得感を持って決めることができます。これから必要になる「問題を探し出すスキル」とは、問題の全体像を明らかにするためのスキルと言えます。
*問題の全体像を明らかにするための具体的な方法については、別の機会にご紹介したいと思います。
組織全体で「サービスのプロ」になる
問題探索型ビジネススタイルを実現するために3つ目に必要なのが、お客様の問題を探し出してそれを解決したり、お客様の期待に応えるために、「サービスのプロ」になることです。
最近では、全ての産業でサービス化が進んでいて、サービスが競争優位そのものになっています。そこでサービスサイエンスでは、全ての産業はサービス業であると定義しています。「すべての産業はサービス業」だと理解すると、2つのポイントが見えてきます。
1つは、自社のビジネスをサービス業として捉えてサービスを磨き、お客様にサービスで喜んでいただかなければならないということです。最近注目される企業改革の中で、「わが社はサービス業である」と意識改革から熱心に取り組んでいるものが増えています。根っからのサービス業でも、製造業でも同じです。サービスで競争優位を築き、サービスで差別化するためには、組織全体でサービスを磨き上げ、お客様にサービスで価値を感じて頂かなければならないのです。
2つ目は、お客様が法人の場合、お客様のビジネスもサービス業だという意識で、お客様の問題やビジョンを理解しなければ、正しくお客様を理解することができないかもしれません。お客様と一緒になって問題を探し出すためにも、我々はサービスのプロになるべきなのです。
会社や組織として「サービスのプロになる」のは難しいものです。サービスは目に見えなくて雲を掴むようで、いったいどうしたら良いか分からない。ついつい精神論やテクニック論で考えてしまう。組織的に取り組もうとしても経験や勘に頼ってしまい、現場任せ・個人任せな活動しかできていないなど。
組織的にサービスのレベルアップをしようとしたときにぶつかるこれらの壁を越えるために、サービス向上の本質を少しロジカルにひも解いた当連載が少しでもお役に立てれば幸いです。
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