バイヤーの『情報』にかかる3つの課題/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2017年3月23日 10時0分
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野町 直弘 / 株式会社クニエ
私はこれまで実務で10年程度、コンサルタントとして20年程調達購買部門とのつながりをもってきました。そして多くの日本企業を中心とした調達購買部門やそこで働く人たちと接してきました。
そういう接点の中から気がついた多くのバイヤー共通する課題について今回次回は述べていきます。
まず調達購買部門で働く人たちいわゆるバイヤーは基本的には忙しいです。開発部門や要求元が仕様を決めてくれない、図面を出してくれない、出てきたとしてもそのままでは物が作れない、図面や仕様の見直しをした上で数社に対して見積依頼を行うものの期限通りには見積が出てこない、見積がでてきてやっと比較検討を行い、サプライヤと価格を決める、そして発注をかけるわけですが、その間にも生産管理部から納期遅れのフォローをしてくれとの依頼、また品質管理からは海外からの調達品の不良をどうにかしてくれ、とフォローされる。
こういう毎日がバイヤーの日常です。しかし、振り返ってみると自分から何か「自発的に動いていること」が殆どないことに気がつきます。結果的にバイヤーは自発的に動くのが苦手な人たちになっているのかもしれません。
また自発的に動かないので必要な情報収集ができなくなります。研修講師をやっていて最近の調達購買の動向についていくつかトピックを上げて「この件知ってますか。」と聞いても手が上がる人は少数です。このような情報収集能力の欠如は多くのバイヤーに共通する一つ目の課題と言えます。
次に気がつくのは、収集した情報を分析する力が不足していることです。自分が担当している品目群の支出分析やコスト分析、供給市場分析、品目の市況分析やマクロ経済分析、為替動向の分析などなど、バイヤーは様々な分析をやらなければならない職種です。しかし研修などをやっていて気がつくのは意外と分析能力が欠けている、これが2つ目の課題と言えるでしょう。
そして情報収集、分析とくれば次は情報発信です。自ら進んで情報発信できる材は世の中全般的にそれほど多くはないですが、バイヤーは特に情報発信できる方が少ないように感じます。以前は調達購買部門は様々な守秘義務があり、なかなか情報が出し難いように言われていましたが、一例を上げますとファーストリテイリング社が最近、中国東南アジアでの主要サプライヤリストを公開したことなど、社外に対しても適切な情報公開がなければ社会的な責任を果たせないような時代になりつつあるのです。マネジメントや要求元などのステイクホルダーに対しても社外とのハブとして情報発信をしていかなければならないでしょう。3つ目の課題は情報発信の欠如です。
このように考えると「情報収集」「情報分析」「情報発信」という3つのつながる機能の欠如と言えます。これらの3つのプロセスは単なる一通りの流れではなくサイクルです。よい「情報発信者」にはよい「情報」がますます集まってきます。そうするとまた次の「情報発信」につなげることができます。バイヤーには、このような「情報」サイクルを回せる人材育成が望まれるのです。
このような人材を育成するためには、どうしたら良いでしょうか。分析能力は研修やOJTである程度習得することは可能です。しかしそれだけでは自発的に応用する力は備わりません。
実際の業務に中で使える「情報」があり、それを「分析」するツールがあり「発信」する機会を持たせる、これを業務の中でやらせることが効果的です。業務のやり方を変えることで人材育成を図っていくことが効果的なのです。
そしてもう一つ重要なのはKPI(主要な成果指標)になります。調達購買部門のKPIは多くの企業で「コスト削減」に関わるものが殆どです。「コスト削減」は大変重要と言えます。しかし調達購買部門はコスト削減だけしていればよい時代は終わったのです。
マネジメントや要求元の期待の一つが意味のある「情報提供」でしょう。具体的には新しいサプライヤや技術の「情報提供」だったり、市況や各国の経済状況の情報提供であったりするわけです。これらの「情報提供」ができているかどうかによって要求元の満足度は変わってきます。KPIに「顧客満足度」にかかる指標を入れても良いでしょう。
このようにバイヤーの情報にかかる3つの課題を解決するためには、「研修」「業務」「KPI」の3つをうまく活用することで意識や行動を促すようなやり方を確立し人材育成を図っていく必要があります。
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