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敏捷性をもってユーザーマネジメント力を強化する/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2017年3月29日 9時42分

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野町 直弘 / 株式会社クニエ

前回はバイヤーの「情報」かかる3つの課題ということで「収集」「分析」「発信」の3つが欠けているという課題について述べました。またその育成のための手法として「研修」「業務」「KPI」の3つをうまく活用することで意識や行動を促すようなやり方を確立し人材育成を図っていく必要があると申し上げたのです。

今回はその先にあるバイヤーの課題について考察をしていきましょう。

私が最近発表したもので「間接材購買は何故うまくいかないのか」「調達購買改革を巡る誤解」という2つのレポートがあります。この2つのレポートではこれからの調達購買部門がどこに向かうべきか、またどのような役割・機能を果たすべきかについて述べました。

このレポートでは「管理可能支出比率をいかに増加していくか。」と「考えられる組織づくり」が必要だと書いています。ここで共通することは「コスト削減至上主義からの脱却」ということでしょう。

これは私だけが言っていることではありません。米国のArdent Partnersは毎年洞察力があるレポートを発行している調達購買サプライチェーンのコンサルティング会社ですが、今年の初めに「2017 Road Ahead」というレポートを発行しています。購買コンサルタントの寺島さんが和訳したものをFacebookにのせています。

そこでArdent Partnersはこう述べているのです。
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・コスト削減の要求の強さは年々減少傾向
・一方で社内への価値・業績伝達や社内部門との協働というテーマの重要性が向上している
・それに伴い業績評価指標の重視度でも「社内への貢献成果フィードバック」の重みが増している


そこで2017年への提言は、以下の通り
-購買部門の目標を、企業の最優先目標と整合させる
-購買スタッフのスキルを企業の最優先目標を支援できるように育成する
-人材とテクノロジーに重点投資
-購買部門の能力の強み/弱みを定期的に測定する
-2017年を通して、集中し続け、注意を怠らない
-購買部門に敏捷性を植える
-ソーシング活動の拡大と自動化
-購買が管理する支出を増やし、それを維持する
-スキルとスタッフの相互交流促進

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欧米のグローバル企業ではまだまだコスト削減要求が強いように感じますが、日本企業同様に「社内への価値・業績伝達」や「社内部門との協業」を重要視していることが理解できます。

これは前回の情報発信にもつながることです。社内部門のステイクホルダーの欲している情報発信を行い価値を生み出す、社内部門との協業を進める。これは正に関連部門への貢献そのものです。

先に上げた提言の「購買部門の目標を、企業の最優先目標と整合させる」「購買スタッフのスキルを企業の最優先目標を支援できるように育成する」そして「購買部門に敏捷性を植える」の3点は特に今後重要視しなければならないことでしょう。

この3点はまとめて言うと「敏捷性をもったユーザーマネジメント力を強化する」ということです。つまり外部リソースの活用を競争優位につなげるお手伝いをしたり、新しい技術や仕様選定、無駄な支出の排除を行うことで収益貢献を高めたり、それを敏捷性をもって実現する、そのための能力を高めるというユーザーマネジメント力の強化と言えるでしょう。

それではこのような力はどのようにすれば育成できるでしょう。前回のメルマガで「情報にかかる3つの課題」を解決するためには「研修」だけでなく「業務」や「KPI」が人材育成には欠かせないという指摘をしました。しかし「敏捷性をもったユーザーマネジメント力の強化」は「業務」や「KPI」ではカバーできません。ここではコミュニケーション力ややりきる力、自発的に行動する力などのより属人的な能力が求められます。

それをカバーするために、ある企業では開発出身の開発購買部隊を設置し、ある企業では技術職のわかる人に購買をやらせています。またある企業では技術職と事務職でチームを組ませ開発上流段階から調達購買が関与できるようにしています。

しかしここで重要なのは個々の力であり気概です。
「私がこういうサプライヤのこういう技術を見つけてきた」「私が見つけてきたサプライヤのおかげで自社製品が大ヒットした」「強固な調達基盤を私が作り上げたからリードタイムが半減した」こういう気概がなければ体制やシステム、業務を作り上げたとしても上手く回らないでしょう。

このようなユーザーマネジメントの活動は「開発購買」というキーワードで語られますが、開発購買は多くの企業で上手く機能していません。私はこの原因の一つがバイヤー個人の資質であるように感じます。

「開発購買」や「ユーザーマネジメント」で重要なのは個人の気概です。「(事業部門の)この人の役に立ちたい」「(開発部門の)この人に認められたい」とところからスタートしましょう。そうすれば自然と社内で必要な人材になっていきます。また何らかの機会に企業の最優先目標の達成に大きな貢献
ができる人材になれるでしょう。部門全体ではそういう人材の集団となっていくことで社内での地位向上につながっていくのです。

従来からLCB(ローコストバイヤー)、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)最近ではロボティックス、AIというような技術を活用することでバイヤーの仕事は無くなる、ということも言われてますが「敏捷性をもったユーザーマネジメント力」などは最も自動化、標準化、機械化し難い、最後まで残る
役割・機能・価値となるでしょう。

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