結果ではなく原因にコミットしよう/純丘曜彰 教授博士
INSIGHT NOW! / 2017年4月20日 20時31分
純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学
世界は複雑だ。人生はややこしい。一人暮らしなんかすれば、仕事や学校だけでも手一杯でクタクタなのに、食事、洗濯、掃除、そのための買い物、ゴミ出し等々、とにかくやらなければいけないことだらけ。そのうえ、宅配便だの、ご近所のなんだかんだだの、なんだかわからない売り込みの勧誘だの、いろいろひっきりなしにやってくる。おまけに、夜中まで、ねぇ、ちょっと相談に乗ってよ、とか、変な友だちから、切るに切れない長電話。
痩せたい、きれいになりたい、彼氏彼女がほしい、外国に行きたい、金持になりたい、等々、いろいろ希望はある。けれども、こんな毎日では、どうにもならない。それで、とにかく手っ取り早く、サプリで、整形で、出会い系で、英語教材で、ギャンブルで、ぱっと夢をかなえようと、すぐにあれやこれやに手を出す。それで、ただでさえ手一杯なのに、いよいよ毎日、手に負えなくなる。それどころか、サプリの濫用で体調を崩し、整形に失敗して変な顔、変な体になり、出会い系のせいで修羅場に巻き込まれ、英語教材のローンで留学のカネも無くなり、最後の一発逆転を狙ったギャンブルで、すべての希望まで失う。
きみは、あれこれバラバラの物事を、あれもこれもあちこち追い廻しているから、どれひとつも捕まえることができない。いくら追っても、逃げ水のように、いつまでも、なにひとつ追いつけない。だが、それぞれはバラバラでも、世界そのものは、じつはバラバラじゃない。みんな因果関係で繋がっている。だったら、バラバラになる前の原因の方こそを抑えるべきじゃないのか。
英語の常套句に、don't open a can of worms というのがある。直訳すれば、ミミズの缶は開けるな、ということ。缶から這い出てきて、部屋中を歩き廻り、逃げ回るミミズたちを探して集めて中に戻そうとしても、もうムリ。またすぐ逃げ出す。でも、最初から開けなければ、そんなことにはならない。
帰省などで、しばらく家を空けるとき、ちょっと出てから、電気やガスの始末が気になる。ホットカーペットは切っただろうか、給湯器はどうだっただろうか、などなど、気になってくる。けれども、こういうとき、ブレーカーを落とし、元栓を締めておけば、あれこれ細々したことを心配する必要はない。同様に、カゼをひいてから、熱をおして薬を買いに出て、それでよけい症状を悪化させ、のたうち回るくらいなら、最初からカゼをひかないようにした方が簡単だ。
太るのも、彼氏/彼女ができないのも、カネが無いのも、たいていは、むしろ目先の欲得に振り回された不摂生こそが原因。やらんでいいことまで、その場の思いつきであれこれやるから、すべてが支離滅裂になる。余計なことをなにもしなければ、つまり、ヤケ食い・ヤケ飲み・間食もせず、目を血走らせて男/女を追っかけたりせず、どうでもいいことにカネを使わなければ、ほっておいたって、貯金もでき、生活も落ち着き、女として/男としての魅力も出てきて、なんとなく、あの人すてき、と言われるようになって、ちょっと同僚に良い人がいるんだけど紹介してあげようか、と周りの方から話が動き出す。
なにもしないことほど、ほんとうは簡単なことは無いはず。なのに、きみは、年がら年中、スマホをいじったり、あちこちの店をウロウロしたり。それ、どれもこれも、ほんとうはきみに関係ないし、向こうがカネ儲けしようとしているだけで、関わっても、きみ自身にとっては、なにも良いことなんか無いよ。
ようは、きみ自身こそが、世界の大元。その元栓をきちんと抑えてしまえば、そこから派生する余計な面倒も、すべて抑え込める。余計な面倒を無くせば、きみは、きみがほんとうにすべきだったことに専念でき、きみの本来の夢を叶えることもできる。結果を望むなら、原因、つまり、きみ自身をきちんとしよう。それだけで、きみのすべての夢は、まとめて全部、叶うのだから。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近書に『アマテラスの黄金』などがある。)
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