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当たり前の調達購買改革/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2017年4月26日 18時30分


        当たり前の調達購買改革/野町 直弘

野町 直弘 / 株式会社クニエ

私は20年近く調達購買改革支援の仕事をしていますが、当初は戸惑うことが多くありました。
私自身は自動車会社での調達部門と外資系のGEという会社での現場経験がありましたが、2つの会社で経験したことと、コンサルティングの経験で大きな隔たりを感じていたのです。

それは調達購買部門の方たちがとても保守的だ、という印象でした。

自動車会社の調達購買部門は会社の中でも発言権が高く関連部門からはとても信頼されながら仕事を進めています。また何か新しい取組をするにも大きな抵抗はありませんでした。GEという会社で私は間接材調達の立ち上げを担当していてこれは全く新しい世界でしたが、効果も大きく社内でもとても高い評価をしてもらったという思いがあります。
一方でコンサルティングの経験では、多くの企業の調達購買部門がとても保守的で改革に積極的に取り組む姿勢が欠けているように感じらたのです。


例えば約十数年前にある企業に間接材調達改革の提案をしたときの話。
そもそも私も会社を立ち上げたばかりで、自社で大企業とのリードがある訳ではありません。そのため大手SIさんに依頼され同行営業する、といった形態が多かったことを記憶しています。その時も、とあるERP会社さんの営業の方と同行営業した時のことでした。私が人材派遣とか印刷費とかGEではこういう取り組みをしていてこんなに成果を出した、と紹介した時に対面の調達部長がこうおっしゃったのです。
「人材派遣、、そんなものどうでもいいよ。我々が調達しているものは
もっと重要で専門性の高いものだから」と。それも吐き捨てるように。


確かにその頃は日本企業で間接材、サービス商材の集中購買に取り組んでいる企業はごく僅かでした。しかし一部の企業ではこの取り組みで大きな成果を上げていることが次第に伝わってきていました。しかしそれにも関わらず、全く聞く耳を持たない方が多かったのです。


同じ会社さんの役員にやはり提案する場があったのですが、そのERP会社さんの提案内容にちょっと間違いがあったのですが、その役員が烈火のごとく怒りはじめたのです。確かに間違いはあったものの大したミスではなかったので、私はその役員に一言返そうとしましたが、その直前にこのERP会社の営業担当役員の方が平謝りされました。頭を下げて土下座に近いくらい正に陳謝されたのです。
私にはその調達担当の役員が怒っている様子があまりにも理不尽で上から見下ろす態度だったので、この人は継続的な取引がある自分たちサプライヤに対しても「下請け企業」に対する態度をとっていると感じました。


こういう役員や部長ですからそもそも調達購買改革が進むわけがありません。私はこの時本当にショックを受けました。しかしこれはこの特定の企業に限った話ではなく、多くの企業で同じような状況だったと類推されます。調達購買部門は他部門で使い物にならなかった人材が定年までの居場所
としての位置づけでしかなかったというのは言い過ぎではないでしょう。


もう一社のメーカーさんの事例です。この会社さんは間接材調達で集中購買やコスト削減を進めたいという相談が経営企画部門から出てきて、それではまずは分析をやりましょう、ということで進めていった時のことです。


コスト削減機会を捉えるための分析はある程度終わったので、次はユーザーにヒアリングさせて欲しいということを話したとき、現場からこう言われました。


「またやるんですか。」


詳しく聞くと同様の取り組みを数年前にコンサルを入れてやろうとしたがユーザー部門の反対があまりにも強く途中で取りやめたとのこと。結局この時もこの企業では分析だけやって終わりました。この当時はこのような企業さんのケースは少なくありません。特に対象の企業さんは元々創業
経営者で事業部や現場がとても強い企業文化だったことを記憶しています。
このような企業で本社主導の集中購買など進む筈もありません。ところが、この企業はあるタイミングで創業経営者が引退しとある外資系日本法人企業のトップを勤めていた方を跡継ぎとして次期経営を任せたのです。


その新しいトップがまず最初にやった改革の一つが集中購買です。それによって(当たり前ですが)大きな成果を上げたことがその後の新聞記事や雑誌などでも取上げられていました。


そう欧米企業にとってみると集中購買とか調達改革なんて「当たり前」なんです。彼らにとってみるとコスト削減を実現しキャッシュを生むために調達購買改革は極めて常識。これは製造業だけでなく他業界でも同じです。例えば航空業界のJ社さんの調達購買改革の事例は極めて有名ですが、彼らも新しい経営者のもと、以前からのしがらみを断ち切って集中購買を真っ先に取り組み大きな効果を出しました。これも欧米や製造業では当たり前、儲ける仕組みのためには当たり前、なんです。


つまり「当たり前の調達購買改革」。これは十数年前から現在に至る多くの日本企業でも全く同じことが言えます。従来であれば改革反対勢力が主流でしたが、今は改革するのが当たり前になってきたのです。


正に「当たり前の調達購買改革」です。


しかし最近この流れに対してやや違った調達購買改革の流れが出てきていることが特徴的です。この新しい流れについては次回のメルマガで述べていきます。

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