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これからの調達改革の方向性/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2017年5月25日 17時15分

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野町 直弘 / 株式会社クニエ

前二回の記事では、過去から現在にかけての日本企業の調達購買改革についておさらいをしました。

「日本型調達購買改革への復活」
「当たり前の調達購買改革」

その中で日本企業が脱属人化の流れの中で当初は欧米型の集中購買、競争化、効率化、サプライヤ集約、標準化といった調達改革手法からスタートし、その後サプライヤマネジメント、ユーザーマネジメントと言った従来の日本型調達改革手法とバランスを取る方向に向かっていると、申し上げてきたのです。今回は引き続き今後の調達改革がどういう方向に向かうのかについて述べていきます。

以前私は「調達購買改革を巡る誤解」というレポートの中で今後の調達購買改革のポイントを2つあげました。「キーワード型改革からの脱却」と「考えられる組織作り」です。
この2つの点についてもう少し具体的に考えてみましょう。

最近お客さんから、よく聞かれる質問があります。調達改革の先進事例はいつも自動車や電機などの量産型製造業の事例が多い。量産型でない事業での調達改革や調達戦略はどうあるべきか、と。
確かに先進事例は殆ど自動車、電機などの量産型事業の事例が多いです。これらの産業はボリュームメリットを引き出せる業種ですし、もしくはボリュームメリットを引き出さなければ競争力がない世界
になります。

それに対して半量産や受注生産型事業では量産型と異なった調達改革や調達戦略が必要ではないか、ということがその質問の背景でしょう。今まで私はそういう質問に対して調達改革やその手法は
対象としている品目により多少の方言はあれど基本的には共通していると考え答えていました。

しかし徐々にそうではない世界になりつつあるな、と考えるようになっています。例えばある企業や事業では購入品や調達に求める機能のうちコストよりも納期が最優先である、ということも考えられるでしょう。そうすると必ずしもソーシング業務がパーチェシング業務より重要だという概念は正しくありません。

また同じ量産型事業であっても業種によって購入しているものは異なります。そすすると自ずと求められる調達戦略自体も変わるのです。例えば自動車は殆どの購入品がカスタマイズ品ですが、それに対して電機業界はほぼ全ての購入品はパッケージ品(汎用品)です。当然ながらカスタマイズ品とパッケージ品で求められる機能や要件は異なります。カスタマイズ品はコストもそうですがよりテクノロジがより重視されるでしょう。これは開発能力や要員がいるかどうか、も含めてです。
一方でパッケージ品は品質、納期の安定性や徹底的な低コストが求められます。

これは業種や事業の違いだけではありません。例えば自動車は従来の調達戦略から転換しパッケージ品の購入が増えています。これは量産、半量産の他業界でも同様です。購入品目によってはパッケージ品の調達になるため、カスタマイズ品とは異なった優先度や重要度で購買をしましょうということになります。

以前調達革新大会で話を聞く機会がありましたが、コマツのコンポーネンツ戦略はAコンポ、Bコンポ、Cコンポに分類し、Aコンポは基本内製及び準内製で技術を囲いこむ、Bコンポはパッケージ型調達戦略によりグローバルで最適なサプライヤを囲いこむ、Cコンポはカスタマイズ型の加工品であり、ローカル毎に調達を行うという事例の紹介がありました。これらの調達戦略は個別に策定されているのではなく、事業戦略や製品戦略、技術戦略、生産戦略と調達戦略が連携していることでこのような調達戦略が立てられるのです。

このように事業ごと、製品ごと、もっと細かく見ると製品の構成(購入品)毎に求められる機能・要件が異なります。その機能・要件に合わせた調達戦略と調達の実行が求められるのです。

業種別にはエンジニアリングやプラントなどの受注生産型事業では受注案件毎に異なった調達戦略が必要になってきます。このような受注生産型事業では調達の上流関与が欠かせなません。営業段階や開発などの上流段階でどのようなコンポーネント戦略をとるかを営業部門、技術部門、製造部門と摺り合わせ、調達要件を明確にし、その要件を満たす調達戦略と調達実行が必要になり
ます。

またこのようなコンポーネント戦略に基づく調達戦略、調達実行を実現できる仕組み、プロセス、体制が必要です。つまり今後の調達部門に求められる要件は『多様化』していきます。「集中購買」「サプライヤ集約」「競争化」などのキーワード型調達改革はもう成り立たなくなります。また求められる機能・要件が多様化すればするほど、組織全体として対応するための「考える力」が求められていくのです。

これが「キーワード型改革からの脱却」「考えられる力」が求められるということでしょう。

また前提となるのは、事業戦略、製品戦略、技術戦略、生産戦略と調達戦略のアラインです。このアラインがない独立した調達戦略で言われたことだけやっている調達改革は全く意味を持たなくなります。決まられたものをQCDのバランスを取り、勘と気合で買ってくる時代はもう終わったのです。

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