事業経営をプロジェクトとして捉えてみる/泉本 行志
INSIGHT NOW! / 2017年7月11日 10時18分
泉本 行志 / 株式会社アウトブレイン
◆ 企業におけるプロジェクトとは
プロジェクトマネジメントの知識体系や方法論をまとめた文献などには、
「プロジェクトと定常業務の違いは?」という定義が書かれています。
日本で一番ポピュラーなPMBOK(Project Management Body of Knowledge)という
国際的に標準とされるプロジェクトの知識体系の中では、
プロジェクトの特徴は、「有期性」「独自性」・・
などと書かれています。
「独自の製品・サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」
つまり、明確な始まりと終わりがあるものがプロジェクトの特徴ということです。
その反対が「定常業務」であり、継続する業務で一般には既に決められている手続きに従って反復的なプロセスを行う業務を指します。
プロジェクトと定常業務を比較すると、当然プロジェクトの方が「不確実性」を伴い、より綿密な計画が必要とされます。
これまでの一般的な流れとしては、
・プロジェクトで新規事業を立ち上げ、それを定常業務化していく
・新しい仕組み(サービス、組織、ITシステムなど)を創造し、それを定常業務に引き渡していく
しかし、この流れも徐々に変わってくるのではないでしょうか。
◆ プロジェクトとして事業を成長・発展させる新たな流れ
その流れとしては、例えばまず新規事業をプロジェクトとして立ち上げます。
コンセプト的な企画から始まり、F/S (フィージビリティースタディー)などの調査・検討、事業モデルの設計等を含めたビジネスプランが練られ、プロジェクトが始動します。そしてプロジェクトのプランニングが行われ、実行フェーズに進み、必要な人員、業務、ITシステムが準備・開発されて新規事業がリリースされます。
ここまでは一般的な流れですが、その後が違ってきます。
通常は、ここで定常業務への引き継がれて、日々のオペレーションとして事業が継続的に運営されます。
しかし、今後はそのプロジェクトで立ち上がった新規事業あるいは新サービスなどが、
「プロジェクト」のまま運営されていくケースが増えるのではないかと思います。
新規事業の立ち上げがフェーズ1とするなら、運営・改良がフェーズ2、そして常に有期的なフェーズを設け、それぞれのフェーズごとに次のフェーズのプラニング・判断を行う。
このプランニング・判断というのは、プロジェクトを継続する・終了するも含まれます。
つまり、「永続する」ことを前提とせず、場合によっては、そのプロジェクトをM&Aの対象として売却して終了することも議論されることになります。
◆ なぜ、プロジェクトとしての存続を選択するのか?
必ずしも「永続」を前提としない、そういった事業体には緊張感があります。 より明確な目標とプランニングが必要になります。現状維持で、惰性で運営する組織に陥る可能性も低くなるでしょう。
単にオペレーションを回すことを目的にしていれば、やがてその事業組織は縮小均衡で失速します。そこで、日常業務を回すのではなくて、あくまでプロジェクトとして、前フェーズで設計・構築したオペレーションを試しながら改善していくプロジェクト活動であると捉えることで、事業価値を高め「事業継続の判断を勝ち取得る」あるいは「売却益を高める」という意味で仕事への目的意識も随分変わります。
さらには、今後このような「プロジェクト」を1社のみでやるのではなく、
複数企業間でのコラボレーションプロジェクトが増えるでしょう。
「オープンイノベーション」という考え方も進んでおり、
アイデアや技術を持った企業と、実行力を持つ企業など補完関係になる企業体が
共同でプロジェクトを立ち上げ、事業を担うケースもどんどん出てきています。
そうなると、もっとシビアになってくるでしょう。
1社内のみであれば、社内の政治的側面や個人的な関係性で、必ずしも採算・将来性が芳しくなくても運営を続ける判断も確かにあります。しかし、複数の企業の投資として立ち上がった事業としてのプロジェクトであれば、パフォーマンスが期待値に満たない場合は、売却、解消あるいは他のプロジェクトへの吸収などという判断もドライに行われる環境になっていきます。
このような環境において、プロジェクトの参加者(プレイヤー)として、
どんな付加価値を提供しているかがシビアに問われることになり、
事業としての存続価値も常にシビアに問われます。
また、プロジェクトとしてよりスピーディーに事業を立ち上げ、まずやってみて市場の反応をクイックに評価し、事業をどう方向づけしていくか、事業として存続させるべきかなど経営判断するというサイクルがものすごいスピードで回されるようになるでしょう。
そのビジネスのやり方に対応できない企業は、共同で事業を拡張していく企業連合の仲間に入ることができず、大きく遅れをとることになるかもしれません。そうならないために、事業組織はどう有るべきでしょうか。
プロジェクト単位を機軸とした事業展開、事業の継続性を前提とせず
「有期的」なプロジェクトとして、事業経営を行っていく。
どのようなプロジェクトを企画・遂行するかが企業の戦略的な意思であり、
選出した複数のプロジェクトを同時並行的に推進し、企業全体として目指すべき姿を狙っていく。
この変化に対応するには、組織構造、制度・プロセス・ワークスタイル、マネジメント・ガバナンスの仕組み、ITインフラ、パートナー企業との関係性など大きな変革に迫られることになるでしょう。 従来の枠組みに囚われることなく、その変化に適合できる新しいマネジメントシステムをどのように設計すべきか。 今後、関心を持つ企業の皆さんと協力して、トライ&エラーを繰り返しながら最適な解を見出していきたいと考えています。
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