結婚するなら料理美人:生活力の象徴/純丘曜彰 教授博士
INSIGHT NOW! / 2017年8月2日 5時9分
純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学
ただの遊び友だちとしての彼女ならともかく、結婚するなら、料理美人。つきあって数ヶ月にもなって、一度も手料理を出さないとなると、かなり怪しい。きっと本人だって馬脚を出してしまうのがわかっているから、出さないのだろう。見かけがどうであれ、そんな女、生活力が無い。とっとと見切った方がいい。
そう、料理は、生活力の象徴だ。人生のマネジメントのすべてが集約されている。豪華な食材を新規に買い込まないと作れない、などと言うのなら、先々、きみにはとうてい養えない。ありあわせのもので、おいしく作れてこそ、料理の腕、やりくり上手というもの。
なんにも作れない、などと臆面も無く言うのなら、おサトが知れる。いまどき小学校でも男も女も無くクッキングを教えるのに、二十年以上も生きてきて、自分の食べるものの料理もできないとなると、家でよほど甘やかされっぱなしで、本人も、親も、親子離れができていないのだろう。そんなガキと関わり合ったら、きみが親代わりにされ、一生、スネをかじられ続けるだけ。
いや、料理以前に、ちょっと冷蔵庫の中を覗き見るだけでもわかる。ロクなものが入っていないなら、将来に備えた貯金も無いだろう。そもそも、独り立ちする、いっしょにやっていく心構えも無い。困ったらコンビニがあるから、なんて言うのなら、そういうやつは、かんたんにサラ金に手を出す。止めておけ。
逆に、冷蔵庫がぎっしり、というのも、考えもの。いらないものまで、なんでも買い込むタイプ。無駄遣い、衝動買いの化け物。そして、買ったら忘れて、干からびても、ほったらかし。ほったらかしにされるのは、まさに、きみ。なにがあるのか、どれを先に使わないといけないのか。それは、在庫管理、資産運用と同じ。それができないやつを嫁にするのは、腐った生ゴミをしょいこむようなもの。
味付けがバカなのは、微妙。場数を踏んでいない、でも努力と見栄はあるのかもしれない。しばらく我慢さえすれば、まともになるかも。しかし、根っからの味バカもいる。ものごとの加減を知らない。なんでもやりすぎる。総量から素材を逆算することができず、作っていくうちに、あれこれ足していくから、どんとん総量が増えていく。結果も収拾がつかない。そして、その後始末をするのは、きみ。同じ料理、それもバカ味のものを、数週間にわたって食べさせられる。料理にかぎらない。うんざりするような毎日が待っているぞ。
オリジナリティを追求したがるのは、かなり厄介。まともなレシピもこなせないくせに、それを意に介さず、独創料理だ、とか言って、コーヒーだの、コーラだの、わけのわからないものをデタラメに混ぜ込み、自慢げにひとに食わせる。そして、それは、ぜったい絶望的に、まずい。こういうオレ様は、人間や文化の歴史に対する敬意が無い。過去の多くの人々がいろいろ試して、鶏肉にネギ、豚肉にショウガ、というところで落ち着いてきたのだ。こういう決まりを平然と無視して勝手なことに自信を持つやつは、実家でも揉める。近所ともトラブルを起こす。そして、その板挟みになるのは、これまた、きみ。
料理にやたら時間がかかるのも、いらつくだけ。ようするに、段取りが悪い。というより、全体の構成が見えていない。ふつうは、お湯を沸かしている間に、下ごしらえ。煮ている間に、酢の物、香の物、その他。そして、暖かいものは暖かく、冷たいものは冷たく、最後が同時になるように出す。ところが、ダメなやつは、単線でしか作業ができない。あいだで、ぼーっと湯の沸くのを待っていたりする。温め直し、焼き直しの繰り返しで、肉も魚もボロボロ。そして、なにしろ、結局、永遠に、なにも出来上がらない。
後始末も見どころ。どんな派手で立派な料理も、惨憺たる犠牲を残したままでは、台無し。式だ、新居だ、出産だ、と、やたら準備に口うるさいくせに、その後、なにもかも放り出しっぱなしで遊び歩くような予兆は、食事の後の片付けでわかる。自分で始末できないほど手を広げたがるバカのツケを払うのは、やはり、きみ。
こんなヨタ記事を読んで、そうそう、うんうん、言っている男も考えもの。本人が時代錯誤の亭主関白、というだけなら、ヘタに台所に手を出されるよりマシ、と思うかも知れない。だが、義実家で苦労するぞ。そんなバカ男を容認してきたのは、先方の両親。そこに嫁が来れば、ぜんぶ嫁がやるのが当然、とばかりに、料理はもちろん洗濯、掃除、はては介護まで、なにもかも押しつけてくるぞ。
生きることは、食うことだ。ひとに食わしてもらわなければ生きていけない、というのでは、家畜も同然。自分で料理してこそ、一人前の人間。とはいえ、予算は限られている。買い物も、運良くなんでもうまく希望通りに手に入れられるわけじゃない。そうでなくても、食材には季節がある。どうにか集められたもので、与えられた時間内に、どんな料理を考えるか。それは、自分たちで努力工夫して、幸せな人生を作るのと同じ。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近書に『アマテラスの黄金』などがある。)
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