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個性[2]~人はそれぞれに違っているからおもしろい /村山 昇

INSIGHT NOW! / 2017年8月20日 8時0分


        個性[2]~人はそれぞれに違っているからおもしろい /村山 昇

村山 昇 / キャリア・ポートレート コンサルティング


〈じっと考えてみよう〉

8人乗りの船に、8人が乗り込もうとしている。
左のA・B・Cのうち、もっとも安全な人の配置はどれか?




わたしたちは一人一人、性格もちがうし、容姿もちがう。才能もちがう。そして考え方もちがう。つまり、みなそれぞれに個性を持っています。

ところがわたしたちは、学校や社会で生きていくなかで、人とちがっていることを恥ずかしく思ったり、不安に感じたりします。

たとえば、「まわりと比べて、自分は落ち着きがない」「みんなより背が低い」「ほかの人が持っている物を自分は持っていない(買ってもらえない)」「クラスの会議で自分一人だけ別の意見を言ってしまった」……など。

また同時に、わたしたちはなにか人とちがったことをする人間に対して、「目立ちたがりだ」とか「自分本位だ」「調和をみだすやつだ」とか言って、遠ざけたり、批難したりします。おおぜいで「出る杭(くい)を打ってしまおう」とするわけです。

いろいろな種類のものが広がっていることを「多様性がある」といいます。そしてそれを受け入れる度合いを「多様性への許容度」といいます。

日本は多様性への許容度が低い国で、ほかとちがっていることを避けたがる傾向が強いといわれます。その理由の一つは、日本は古来、単一民族の農耕社会であり、群れのなかで周囲と同じように生きていくことがよいとされてきたからです。ところが一方、アメリカ合衆国のような他民族的で移住型の社会はまったく逆です。多様性への許容度が高く、人とちがうことはおいにけっこう、個性を強く押し出すことでまわりの人から認めてもらおうといった傾向が強くなります。

みなが、人と同じようにふるまい、人と同じように考える。人とちがっていることをこわがったり攻撃したりする。そうなると個性の多様性が失われます。多様性が失われるとは、種類が減って、どこかに偏(かたよ)ることです。こうした偏りが出ることは、じつは個人にとっても社会にとってもよくない面があります。


そのよくない面とはどんなことでしょう?

たとえば、血液型を考えてみましょう。人間の血液型にA、B、O、ABと4種類あることはよく知られています。これはABO式と呼ばれる分類法によるものです。血液はほかにもRh式やMNSS式などさまざまな分類法で型に分けられます。その掛け合わせで考えると、この世の中でまったく同じ血液型を持つ人は、一卵性双生児以外に存在しないと言われるほどです。

生物としての人間は進化してくる過程で、それほど血液型の多様化を進めてきたのです。もし人間に血液型が1種類しかなかったらどうでしょう。その1種類しかない血液型を死なせてしまう強力なウィルスが現れた場合、人類全部が一気に死んでしまう危険性が高まります。しかし、血液型が何種類にも分かれていたら、仮に1種類がやられても他の血液型は生き残ることができます。そうして人類滅亡が防げるわけです。多様に種類をもつことで自分たちを守っているといってもいいでしょう。

さて、冒頭の船の乗り方についての設問をみてみましょう。

正解は「C」です。乗る人が全体的に広がっているほうが船はバランスを保てるからです。「A」や「B」は人が偏っていてバランスが悪い。その船はバランスをくずしやすいので沈む危険性が高い。人が生活する集団もこれと同じことがいえます。学校という船も、社会という船も、地球という船も、個性が多様に広がっているほうが安全や安定が保ちやすいのです。

世の中に多様な考え方があるから、わたしたちはそれに刺激を受けて学んだり、さらによい考え方を創造したりすることができる。人それぞれがいろいろな強みや興味をもっているから、いろいろな仕事を分担して世の中を発展させていける。

料理だってそうでしょう。街にはハンバーガー店もあればお寿司屋もある。牛丼店もある。中華もあればイタリアンもある。そういった多様な店があるから楽しいんです。同時に、料理する人たちにとっても、そうしたいろいろな料理があることで、そこから学べ、新しい料理を生みだすことができるのです。

いろんな顔の人がいて、いろんな体格の人がいる。そしていろんな意見を出し合う。それは世の中に多様性があることでよいことなのです。わたしたちは多様性をおおらかに受け入れるために、次のように心を構えていきたいものです───

 ○自分が人とちがっていることを気にかけない
 ○自分が人とちがっているところをおおいに伸ばす
 ○他の人が自分とちがっていることを見守ってあげる
 ○他の人が自分とちがっているところから学ぶ


[文:村山 昇/イラスト:サカイシヤスシ]




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