事業戦略とサプライヤ戦略/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2017年9月27日 17時0分
野町 直弘 / 株式会社クニエ
先日久しぶりに購買ネットワーク会に出席しましたが、そこで「事業戦略とサプライヤ戦略」というテーマで議論をしました。
このテーマは私も最近色々考えているテーマであり、とても興味深いものなので今回はこのテーマについて書きます。
当日はケーススタディを元に事業戦略がドラスチックに変わる企業で事業戦略の変革に基づいてサプライヤ戦略をどのように変えていくか、という内容のものでした。
正にその通りです。もう少し具体的に考えてみましょう。
従来の購買は物を買うという前提で仕事がスタートしました。いわゆるメイクorバイの意思決定は従来の事業や製品の構造に基づき社内で対応できるか否か、という視点で意思決定されました。つまり社内で開発や生産できない、もしくは社内で対応するとコストが高くなるものを外部リソースでカバーするということでした。
つまりメイクorバイの意思決定に購買が関与することはあまりなかったのです。
購買は今までも買っていたから購買し続けていました。これをユーザーの立場で考えると、今までもお金を使っていたから、とか、予算があるから使って(使い続けて)いますということです。
言うまでもなく物は買わないことが最大のコスト削減になります。これは経営資源の配分の方法につながりますから経営そのものです。特に経費や投資は如何に無駄な購買をしないか、また如何にメリハリが効いたお金の使い方をするか、という視点が大切でしょう。
一方で事業環境は益々複雑化しています。IoTやADASなどの技術進化は企業に新たな競争優位をもたらすでしょう。自社で全ての技術を持つことは不可能な時代になりました。一方で自社でキーとなる技術を見極めそれを持たなければ競争優位を保持することはできません。事業環境の変化により事業戦略や製品戦略も変革が必要となり、どの技術をインソースし、どの技術を外から買ってくるのか、という意思決定が極めて重要になってきたのです。
つまり何を買って何を買わないのか。
今まで買っていたから同じ物を買い続けるという時代は既に終わっているのです。このメイクorバイの意思決定は事業戦略や製品戦略、技術戦略にもかかわるので、もちろん購買だけでは決められない意思決定です。しかし近年この意思決定には購買も関わる必要性があります。
世の中の技術を見る目を持ちサプライヤのどんな技術を自社に活用できるか、という視点も必要ですし、場合によっては他社の技術を自社に取り込む必要もあるからです。他社の技術の自社への取込みの方法は様々ですしこれが正にサプライヤ戦略と言えます。
最近ではオープンイノベーションという形で技術シーズを買い取ったり、早期ステージで投資する形態もありです。それ以外にも例えばアライアンス、出資、買収なども考えられます。
先日「GE 巨人の復活」(中田敦著 日経BP社)という本を読みましたが、20年前にGEに勤めていた私にとっては驚かされることが多くありました。リーマンショック以降ジェフ・イメルトCEOは事業の再構築を行いデジタルトランスフォーメーションを実現しています。GEはオープンソースを使いPREDIXというインダストリアルインターネットプラットフォームを自社開発したのです。
そもそもGEはITに関してはアウトソーシング志向が強い会社で、BPO事業を立上げそれをビジネスとして推進する方向でした。
しかしこれを360度転換しアウトソーシングからインソーシング(内製回帰)へと方向を変えました。今ではGEの全社員に対してプログラミングのなんたるかを理解することを求めている、
ほどだそうです。以前のGEでは考えつかない状況です。
GEはこのビジネスをGEデジタルという事業として立上げました。
このように事業環境や経営環境の変化が従来の経営方針を転換することにつながるような時代になっているのです。
またGEのケースで重要なもう一つの視点はオープンソースという点です。日本企業はどうしても使い勝手の良い専用品に依りがちです。しかしGEほどの企業でも自社専用技術ではなくオープンソースを活用している、という点は注目できる点でしょう。
このような視点から、そもそも何を買うべきで何を買わないべきか、又買うべきであればどのような買い方をするのかを考えなければならない時代に既に我々は突入しているのです。
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