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プロジェクトベース経営で事業成長を加速させる (2/2)/泉本 行志

INSIGHT NOW! / 2017年10月10日 7時58分


        プロジェクトベース経営で事業成長を加速させる (2/2)/泉本 行志

泉本 行志 / 株式会社アウトブレイン

(前回)→ https://www.insightnow.jp/article/obc-07

より革新的な商品・事業モデルなどが求められるこれからの時代には、自らのネットワークを広げ外部の力を取り込む機能を持つ必要があります。では、外部のリソースを最大限活用してプロジェクトを成功に導くために必要不可欠な要素とは何でしょうか?

それには、経営陣レベルにおいて、マインドそしてマネジメントという2つの側面での変革が迫られます。


プロジェクトは共創活動、対等なパートナーというマインドを持つ

外部からの人員は、企業だろうと個人だろうと、ビジネスを共に進める”パートナー”であり、プロフェッショナル同士の対等な立場だという意識を持つことが重要です。

革新的な製品・サービスをコラボして生み出す仲間として、「発注先」「発注元」という立ち位置を超えた関係性を持つことが大事になります。そして、自分たちの会社は「プロジェクト」というプラットフォームのオーナーではあるが、そのプラットフォームに参加し活躍してもらうプレイヤーたちは、自社内からの人もいれば、専門技術を有するパートナー企業から、あるいはフリーで活動するコンサルタントやデザイナーなどが参加することもあります。いずれにしても、参画するプロフェッショナル達はみな“対等なパートナー”として、プロジェクトの目的を共有してその実現に力を結集させることが重要です。

特に最近では、有能な人材は1つの組織に属さず、フリーランス的に活動する人も増え、その傾向は今後ますます加速していくと予想されます。その中でも特に優秀な人たちにプロジェクトに参加してもらうには、金銭的なインセンティブだけでは十分ではありません。 組織に属している人と違って、優秀な人であるほど自ら仕事を選べます。そしてプロとしての意識が高いが自尊心も高い。単なる「業務委託の人」とか「業者さん」扱いされるような会社とは一緒に仕事をしません。そのような態度や意識で接すれば、NG会社の烙印を押され、“彼ら・彼女らの優秀な人たちのネットワーク”で広がってしまいます。

「仕事を出す方が偉い」「使ってあげている」といった意識は、その”発想自体がアウト”です。ところが、一流といわれる企業ほどそのような考え方が根付いている場合が多く、それでは優秀な外部のパートナーを引き寄せ革新的なプロジェクトを生み出すことなどできません。そういう意味において、まずは外部パートナーとの関係性に対する「意識の改革」から始める必要があるでしょう。

事業経営とプロジェクトマネジメントが融合されていく

次にマネジメントに関してですが、大きく2つあります。
「戦略的マネジメント」と「オペレーショナルマネジメント」です。

「戦略的マネジメント」は、
・何をやるか?何を目指すか?
・そのために、どんなプロジェクトを立ち上げるべきか

という経営の意思決定の話です。


つまり、
・その企業が目指すビジョンを実現させるために何を創り上げる必要があるか。
・それを創り上げるためには、どんなプロジェクトをどの順番で立上げ進めていく必要があるか。

に関するマネジメントです。

これは、まず実現させたい姿が描かれていて、その全体像に対してパズルのように個々のプロジェクトを組み合わせて埋めていくような活動です。 ビジョン達成の全体観を持ちながら、必要となるプロジェクト(プログラム)を良いタイミングで貼っていくようなイメージです。

次に、「オペレーショナルマネジメント」です。

「プロジェクト」であるからには、定常業務を回すより、取り組む課題の難易度も高く、不確実性も高い。さらには、雇用関係のない色々なバックグラウンドを持った外部のパートナーとの混合チームをまとめる必要もあります。プロジェクトの中心的なメンバー同士であっても、必ずしも同じ場所で仕事をしているわけではありません。遠隔からメールや電話会議だけでのコミュニケーションのやりとりになる人もいるでしょう。時間の融通が効かず、稼働できる曜日や時間の制約がある外部メンバーともタスクとスケジュールを調整しなければなりません。 こうなるとマネジメントはかなり複雑になります。

もちろん、プロジェクトのマネジメント自体、必ずしも自社のメンバーがやらないといけないということはありません。外部のプロジェクトマネジメントのプロに任せるのでもいいと思います。ただし「オーナーシップ」を放棄するような丸投げではダメです。そして、プロジェクトのマネジメント実務を誰がやろうとも、組織として複雑なプロジェクトをドライブできるための方法論や仕組みを、蓄積・発展させていく必要があります。

そのためにも、各プロジェクト(プログラム)のマネジメントの上位ポジションとして、企業全体のコーポレートPMO的なチームが、企画・実行されるすべてのプロジェクトの品質を向上させる役割を担うことが必要になります。このようなPMO組織を設けている企業は現在でも結構ありますが、単なるレポーティング機能を担うだけで、各プロジェクトの進捗状況を取りまとめて経営陣にレポートすることがメインの仕事になってしまっているケースをよく見ます。 そうではなく、企業としてのプロジェクトのノウハウを蓄積し啓蒙する役割や、企業を跨いだコラボレーションの推進や契約周りの支援もできる存在である必要があります。

また、戦略マネジメントで描いた全体像から個々のプロジェクトを眺めて、各プロジェクトの方向性がズレていかないように監視したり、プロジェクト(プログラム)を跨る課題の調整・コンフリクトの解消などに対して積極的な働きかけができるチームでないと意味がありません。そのような全体を押さえた調整役が不在だと、各プロジェクトが、それぞれ単体のプロジェクト事情に囚われて、部分最適なプロジェクトが乱立するだけの状態に陥ってしまいます。そうならないためにも複数のプロジェクトを横断的にみて意思決定を行う方法やガバナンスの仕組みを経営システムとして確立させ、プロジェクトをベースとする経営に関して経営層や事業部門長レベルでの啓発も必要となるでしょう。

このようにマインドそしてマネジメント面の変革によって、企業の垣根を超えたイノベーティブなプロジェクトに対応できる組織に変わる必要があります。さらには、単に新しい製品やサービスを立ち上げるだけに留まらず、その運用も外部のパートナーとのコラボレーション事業としてプロジェクト型で継続されるケースも増えてくるでしょう。そうなるとプロジェクトで生み出す成果に対してはより一層厳しい管理が求められます。
一度始めたからと惰性で続くような緩い管理ではなく、プロジェクトをフェーズごとに実行していき、その都度、市場環境などからプロジェクトスタート時の前提条件をアップデートし、継続して投資する価値があるかの判断を行う。そして継続となれば、その投資に対するリターンを確保するよう長期的・全体的な視点からマネジメントを行います。

そういう意味では、これからは プロジェクトのマネジメント=事業経営そのもの という捉え方をし、プロジェクトは単なる非定常的な活動ではなく、あたかも1つの会社を経営するような感覚に近づいていくのではないでしょうか。そして、そのプロジェクトを"経営"し発展させることが、その企業全体の成長を加速させるのことになるのでしょう。


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