開発購買は何故上手くいかないのか?/野町 直弘
INSIGHT NOW! / 2018年1月11日 8時0分

野町 直弘 / 株式会社クニエ
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
またちょっと間が空いてしまいましたが、今年はできるだけ2週間に1回のペースを守りたいと考えておりますのでこれからもご愛読よろしくお願い申し上げます。
今年1回目のテーマですが「開発購買」についてシリーズで書きます。
昨今「開発購買」を含むユーザーマネジメントの重要性は益々高まっているようです。製造業で「開発購買」という言葉が使われるようになったのは2002年頃かと記憶しております。一部の業界(例えば)自動車業界では原価企画がかなり昔から推進していますが、このような業界以外で広くこのテーマが広がったのが約15年前ということが理解でき、あまり歴史が古いものではありません。
最近はいわゆる間接材購買の領域でも「上流関与」というキーワードで「開発購買」「ユーザーマネジメント」の活動の重要性が唱えられており、そういう意味からも「開発購買」の活動やその重要性が益々高まっていると言えるでしょう。
それでは開発購買の定義とはどのようなものなのでしょう。
簡単に言ってしまうと「開発段階」での「購買(的)活動」ということです。要するに開発の上流段階で購買を先行して進めることでQCD(+α)の作り込みをしましょう、ということ。しかし、この言葉に欠けているのは主語です。「誰が」が抜けています。当然ながら開発・設計の活動はよりよい製品を市場に投入することです。よりよい製品というのは差別化や技術力、品質だけでなく納期や低コストも含まれます。そう考えると開発が主語になることは当然のことです。
一方で開発購買という言葉が唱えられ始めて15年程度経っていますが、この活動がとても上手くいっているという事例はあまり多く聞かれません。以前アジルアソシエイツで調査したときも開発購買は毎年課題として認識されているもののその対策についてはいつも手つかず、とか効果が見られない、という回答が多かったこともその論拠として上げられます。
また私は多くの調達購買部門の方とコミュニケーションをしていますが、開発購買はどう進めれば効果的なのか、という質問をよくされます。
このように開発購買という活動はユーザーマネジメントや上流関与という名前に置き換わり対象とする品目範囲も広がっているもののそれが上手くいっていないというのが現状です。
何故上手くいかないのでしょうか。
私は大きく2つの要因があると考えています。
一つ目は意識のギャップです。
先ほど開発部門の機能はよりよい製品を市場に投入することと述べましたが、開発部門にとって「よい製品」の定義で一番考えやすいのは技術的に差別化された製品でしょう。一方で原価部門や製造部門、購買部門にとっての「よい製品」の定義は少しづつ異なります。特に購買部門にとっては自社収益につながる製品であり、その構成比である購入品にも低コストを求めるでしょう。
これは本質的な意識のギャップです。
また原価・購買部門は開発上流段階で仕様や設計が固まる前でなければ大幅なコスト削減はできないことを実感しています。一方で開発部門にとっては開発上流段階での購買(的)活動でどのようなメリットがあるのか実感できないというのが本音でしょう。このような点でもギャップが生じています。
二つ目は仕組みのギャップです。
この15年で開発購買の取組みについては様々な仕組みが試行錯誤されてきました。部品データベースの活用、わいがや方式、クロスファンクションチーム、開発購買チームなどです。しかしどれも決定的な仕組みにはなっていません。仕組みのギャップの本質的な問題はコミュニケーションと情報共有の欠如です。開発購買の取組み自体は開発段階で購買的視点を持ち購買を行うことです。
つまりどういうサプライヤがどんな技術を持ち、またどんなパーツを使って開発をすればQCDの作り込みができるのか、このような情報を購買や原価部門が提供し、それを開発部門が活用することが必要です。このコミュニケーションや情報共有が欠如しているということは提供する(できる)情報と欲しい情報にギャップが生じていることに他ありません。また情報の鮮度管理の問題もあります。常に最新の鮮度の高い情報をメンテナンスして情報の共有をすることは、たいへん難しいことです。
開発購買を推進する課題として多くの企業で取り組まれているのは、開発購買チームを設置する方式です。
多くの企業で開発購買チームは開発出身者が購買部門内に集められチームを結成します。このチームは開発部門と密にコミュニケーションをとり情報を提供し、開発上流段階での購買活動を支援するというのが狙いです。
しかしこの開発購買チーム方式も必ずしもうまく機能していません。同様にこの15年間に様々な仕組みが試行錯誤されてきました。しかしいずれの仕組みも先ほどの意識のギャップを解消できていないのです。つまり主語がない活動だからなのです。主語が開発部門でない仕組みには限界があります。開発・設計をしているのは開発部門だからです。
これが開発購買が上手くいかない理由の一つであることは間違いないでしょう。
しかし一方で開発購買を上手く機能させている企業もあります。次回はその企業の事例について述べていきます。
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