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クルマは100年に一度の大転換期に!?──世界で加速するEVシフト《Part.2》/LEADERS online

INSIGHT NOW! / 2018年1月11日 10時0分


        クルマは100年に一度の大転換期に!?──世界で加速するEVシフト《Part.2》/LEADERS online

LEADERS online / 南青山リーダーズ株式会社

EVシフトの追い風を受けて市場をリードする日産自動車

欧米や中国で広まるEVシフトの流れを受け、日本の自動車メーカーも徐々に動き始めています。

その先陣を切って、国内でEV強化を進めているのが日産自動車です。ハイブリッド車(以下・HV)でトヨタ自動車に出遅れた日産は、次世代車の主力をEVに据え、2010年にEVのフラッグシップモデル「リーフ」を発売。以来、販売台数は累計約28万台と、世界で最も売れたEVとなりました。しかし、1回のフル充電で走れる距離が200km以下と短いうえ、価格の大半を占める車載バッテリーの費用削減が進まず、同クラスのガソリン車やHVと比べると割高(約400万円~)なのがネックとなっていました。

そこで日産は、ユーザーからの声をもとにリーフを全面改良し、2017年10月に「新型リーフ」として国内販売をスタート。1回のフル充電で走れる距離は初代モデルの約2倍、部分的な自動運転機能を盛り込みつつ、販売価格は300万円台に抑えられています。
新型リーフの発表にあたって同社のカルロス・ゴーン会長は、2022年までに日産系グループ(日産三菱・ルノー連合)で12車種のEVを投入する計画を発表。世界で加速するEVシフトを追い風に、グループが一体となって生産効率を高め、業界優位のポジションを保つ戦略を打ち出しています。

日本のお家芸・ハイブリッド車に勝機はない……!?

対するトヨタ自動車は、これまでHVの展開に注力していましたが、2017年に資本提携したマツダとEVの共同開発を進めることを明らかにしました。さらに、ダイハツ工業・スバル・スズキともEV生産における業務提携の範囲を広げるほか、車載用バッテリー最大手のパナソニックとも連携を強化。2020年までにEVの量産・国内投入を実現し、2030年をめどに販売台数の50%以上を電動化する方針を示しています。
また、EVに対して消極的だったホンダも2016年にEV開発室を設立し、EV生産体制の確立に向けて本格的に始動。2018年に2車種の新型EVをリリースするほか、2030年までに販売台数の2/3を電動化する目標を掲げています。

ここに来て日産以外のメーカーがEVに本腰を入れ始めたのは、「今後、HVでは世界と勝負できない」という構図が見えてきたからでしょう。日本メーカーが得意としてきたHVは、中国で拡大するNEV市場や米国のZEV規制の対象外となっており(詳細はPart.1参照)、十数年後の2030年にはEVの販売台数がHVを上まわるとも予測されているからです。

これまで日本では、当面はガソリン車が主力になるものの、将来的にはHVが主力となって市場シェアを伸ばし、EVの時代はまだまだ先になると見られていました。しかし、欧米・中国がEVシフトを掲げたことでHVを一気に飛び越え、EVへの移行が急激に進むのではないか……という見方が強まってきたのです。

日本の自動車産業を大きく揺るがす「EVショック」

こうして国内の大手メーカーがEVシフトへと動き出す中、下請けの部品メーカーを中心とする関連企業には「EVショック」なる危機感が広がっています。構造が複雑なエンジン車には1台あたり2~3万点の部品が使われていますが、エンジンのないEVは部品数が4割近く減るため、エンジン関連の部品を扱う下請けメーカーは受注が激減して仕事を失いかねないのです。

約540万人の雇用を抱える日本の自動車産業は、大手メーカーを頂点として、部品メーカーなどの関連企業が密接につながる系列構造を強みとしています。なかでも世界最大級といわれるトヨタ系列の関連企業は、産業のすそ野も広く、多くの雇用とニーズを生み出し、長年にわたって日本の経済やものづくり産業を支えてきました。それがEVシフトによって解体されれば、関連企業や雇用へのダメージだけでなく、日本の産業構造自体も大きく変わってくる可能性があるのです。

とはいっても、遅かれ早かれ押し寄せるEV化の時代。その世界的な潮流を変えることは、もはや不可能でしょう。そうした状況を見据えて、エンジン生産からEVモーターの開発に転換するメーカー、HV用の部品をEV用に改良するメーカー、中国のEV市場に販路を開拓するメーカー……など、多くの関連企業が生き残りをかけて動き出しています。

世界的なEVシフトがチャンスとなる業界・メーカーも

一方で、自動車業界と関わりのなかったIT企業や電気・素材メーカーは、世界的なEVシフトが新たな商機につながっているようです。

たとえば、IT大手のDeNAは日産自動車と連携し、EVと相性のいい自動運転車の分野に進出しています。エンジンのないEVは構造がシンプルなため、複雑な内燃機関の専門技術がないIT・ベンチャー企業でも、AIなどの得意分野を武器に自動車産業へ参入しやすくなったのです。
また、EVの製造原価の半分を占める車載バッテリーでは、米テスラに独占供給するパナソニックが世界トップのシェアを占めており、その市場も2025年には6~7倍に拡大すると見られています。
さらに、航続距離を伸ばすために軽量化が求められるEVでは、鉄よりも軽い炭素繊維やアルミ樹脂の活用も見込まれることから、三菱ケミカルや帝人、東レなどの素材メーカーが自動車メーカーと連携して、車体軽量化の素材開発に乗り出しています。

── まさに100年に一度の大変革が迫られる自動車業界。そして、世界的なEVシフトを好機に自動車産業への新規参入を狙う他業界。急速に拡大するEV市場に日本の産業界はいかに対応し、新たなビジネスチャンスを獲得していくのか……。ものづくり日本の真なる底力が、いま試されようとしています。

※参考/NHKクローズアップ現代、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。

【記事元】
日本クラウド証券株式会社 https://crowdbank.jp
日本クラウド証券メディア マネセツ https://manesetsu.jp

【転載元】
リーダーズオンライン(専門家による経営者のための情報サイト)
https://leaders-online.jp/

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