実践コンセプチュアルスキル[3]~エッセンス〈本質〉とフォーム〈形態〉/村山 昇
INSIGHT NOW! / 2018年3月11日 21時0分
![実践コンセプチュアルスキル[3]~エッセンス〈本質〉とフォーム〈形態〉/村山 昇](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/insightnow/insightnow_9930_0-small.jpg)
村山 昇 / キャリア・ポートレート コンサルティング
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
―――金子みすず『星とたんぽぽ』
かんじんなことは、目に見えないんだよ。
―――サン・テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳、岩波書店)
◆本質は形をまとい、形は本質を強める
さて、2つの円を描きます───
内側の円は「エッセンス」(essence:本質)、
外側の円は「フォーム」(form:形態)を表わします。
この世界において、「本質は形をまとい、形は本質を強める」という相互作用がはたらいています。
例えば、「精神(こころ)」と「身体(からだ)」。精神はエッセンスであり、身体はフォームです。精神はそのあり様を身体を通じて外に表わし出そうとします。身体もまた、そのあり様によって精神に影響を与えます。
芸術は内面にひそむ本質を外側に造形する戦いと言えますが、彫刻家オーギュスト・ロダンは次のように語っています。
「良い彫刻家が人間の胴体を作る時、彼の再現するのは筋肉ばかりではありません。其は筋肉を活動させる生命です」。
「われわれが輪郭線を写し出す時は、内に包まれている精神的内容で其を豊富にするのです」。
「美は性格の中にあるのです。情熱の中にあるのです。美は性格があるからこそ、若しくは情熱が裏から見えて来るからこそ存在するのです。肉体は情熱が姿を宿す型(ムーラージ)です」。
───高村光太郎『ロダンの言葉』より
ロダンは若い彫刻家たちに、表面だけを見てそれを造形するな。内側にまなざしを向けて、そこから起こる力をとらえよ。そして内から外へ凹凸をつくり出せ、と教えました。
◆ケーススタディも形態と本質の往復作業
「学ぶ」は「真似(まね)る」から来ていると言われるとおり、まずは世の中にある手本を外側から見て真似ることから始まります。そうして形を真似ているうちに、本質的な原理がわかってきて――つまり外から内へ(アウトサイド・イン)の流れ――、やがてその原理をもとに技術の習得が進む――内から外へ(インサイド・アウト)の流れ――ことになります。
MBA(経営学修士課程)では、よくケーススタディ学習法が用いられます。このケーススタディも、この〈エッセンス〉と〈フォーム〉の往復、すなわち、アウトサイド・イン、インサイド・アウトの流れでとらえることができます。
ケーススタディにおいてまずやることは、他社の成功(あるいは失敗)事例を見つめて分析することです。これは〈フォーム〉次元です。そこから、何がその本質かという抽象をします。抽象の抽の字は「引き抜く」という意味です。そして〈エッセンス〉次元で概念化をします。
成功したり失敗したりする本質・原理は何だったのか。それをつかんだ後は、再度、〈フォーム〉次元に下りていき、具体的な行動・方策・教訓に変換します。
この一連の[1]抽象化→[2]概念化→[3]具体化の流れを私は、「π(パイ)の字思考プロセス」と呼んでいます。コンセプチュアル思考の基本となる思考フローの形です。
◆型の奥にひそむ本質をつかめ
「守・破・離」という成長段階の概念もまた、〈フォーム〉と〈エッセンス〉の往復です。「守・破・離」が用いられる日本の伝統芸能や武術の世界では、「型」の修得が重要な鍵になります。弟子はまず師の所作を外側からながめ、真似ることから始めます。すなわち型という〈フォーム〉次元から入るわけです。
やがて弟子の中で、型の奥にある〈エッセンス〉をつかむ者は「守」の段階に入り、師の型を修得することができます。そしてさらに、高次の抽象を行い、高次の原理をつかむ者は、教わった型を打ち破り自分の型を生み出すことができます。それが「破」のフェーズです。さらにまた高次に至ると、ついには型から自由になる境地を会得します。これが「離」のフェーズです。
その一方、型を表面的になぞるだけで〈フォーム〉次元に留まる者は、「型っぽい」ものを行うだけです。
私たちの仕事やキャリアにも、この形態と本質の2つの次元は存在します。〈フォーム〉の次元だけで形態に目を奪われ右往左往するのでもなく、〈エッセンス〉の次元に閉じこもって観念論に終始するのでもない。2つの次元を大きく往復することで、大きな答えが生み出され、大きな道が拓かれることになります。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
君は僕より売れてないよね…超難関「東京藝大」の卒業生が直面する「芸術でメシを食う」という困難
プレジデントオンライン / 2024年7月12日 10時15分
-
7月がスタート!青のグループ×○の牡牛座・本質と運命は?自らを磨き育てていく時期。成長のための断捨離を進めて軽やかに!【2024年下半期占い】
fudge.jp / 2024年7月7日 0時2分
-
佐藤優氏と伊藤賀一氏による西洋哲学の本格ガイドブック!世界のエリートと競うのに必要かつ十分な知識が詰まった『いっきに学び直す 教養としての西洋哲学・思想』発売
PR TIMES / 2024年7月2日 16時40分
-
【ルック】ディオールが2024-25年秋冬 オートクチュール コレクションをパリのロダン美術館で発表
FASHION HEADLINE / 2024年7月2日 11時0分
-
青のグループ×○の牡牛座・本質と運命は?自らを磨き育てていく時期。成長のための断捨離を進めて軽やかに!【2024年下半期占い】
fudge.jp / 2024年6月28日 0時2分
ランキング
-
1今回のシステム障害、補償はどうなる?…「保険上の大惨事」「経済的損害は数百億ドル」
読売新聞 / 2024年7月20日 21時24分
-
2「みんなの意見は正しい」はウソである…ダメな会社がやめられない「残念な会議」のシンプルな共通点
プレジデントオンライン / 2024年7月20日 16時15分
-
3AI利用で6割が「脅威感じる」 規則・体制整備に遅れも
共同通信 / 2024年7月20日 16時50分
-
4苦境の書店、無人店舗が救う? 店内で感じた新たな可能性
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月20日 7時35分
-
5松屋×松のや「ワンコイン朝食」でいいとこ取りな朝 値上げ後でも工夫次第でお安く美味しく楽しめる
東洋経済オンライン / 2024年7月20日 7時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)