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パワハラ・セクハラ勃発!に際してのリーダーのあり方/増沢 隆太

INSIGHT NOW! / 2018年3月16日 7時30分


        パワハラ・セクハラ勃発!に際してのリーダーのあり方/増沢 隆太

増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

1.やらかすのは協会理事長や学長・・・
ハラスメントを受けた被害者が何より傷付いているからこそ深刻な問題ではありますが、実際にこうした事象が起こるのは密室です。衆人環視に置かれない場所での出来事ゆえ、事実かどうかも問われます。このことが被害者を二次的三次的にも追い込み深い傷を負わせることにもなります。

一方で痴漢冤罪や痴漢冤罪を悪用した恐喝事件が後を絶たないように、真実が明らかでないことは、非常に取り扱いを難しくしているものでもあります。被害者が声を上げること自体非常に難しく、でっち上げや大げさ、自己責任批判といった返り血を浴びる可能性が常にあります。そんな時に重要なのは関係当事者だけでなく、組織の長。会社なら社長。協会なら理事長。大学なら学長です。

こうした組織のトップの認識が、大きく変化しつつあるハラスメント問題の潮流に着いて行けていないことで、発生した事件がさらに悪化するリスクとなっています。伊調さんの件ではパワハラ容疑が起きている日本レスリング協会強化本部長・栄和人氏が教授を務める、至学館大学の谷岡学長がやらかしました。


2.トップが絶対にやってはならないこと
谷岡学長は怒りをにじませつつ、内閣府への告発や週刊文春の報道を批判しました。もちろんパワハラなどあり得ないという主張からです。これがハラスメント問題において決定的な「やらかし」なのです。

自校の有力な教授を守りたい思いはわかりますが、組織リーダーはそれだけでは務まりません。組織を守る方が高い優先順位なのです。有力スタッフを守る以上に組織全体のリスク管理ができなければ、残念ながらトップとしての責任は果たせないでしょう。

ではどうすれば良かったか?現時点で栄氏を擁護したい気持ちはわかるにしても、それを告発というトラブル発生時に意見表明するのは論外です。どれだけ栄氏を擁護しようとそれを組織リーダーがやれば、まずもって事態は不利にしか働きません。組織リーダーが果たすべきことは事態の究明と適切な対処しかないのです。少なくともハラスメントを否定できる絶対的証拠を持っていない限り、それを表明したいという個人的心情は捨てなければなりません。



3.市長も理事長も
東京都狛江市の高橋市長は、「口を付けたグラスのお酒を飲まされた」「お尻をさわられた」というセクハラ告発を受け、議会で問題になりました。これについて市長は「異性への関心のもとにやったことではなく、一種の一家意識、狛江一家みたいな、家父長的な立場としてやったことなんだが、(女性職員に不愉快に感じられたとしたら)もしそういうふうに受け止められたとしたら、ごめんねと言うべきだと思う」と答えたそうです。ダメすぎます。

もちろん事実だとすれば完璧にアウトですし、その言い訳も全く正当化などできない無茶苦茶なものです。かつて塩村文夏東京都議に対し、自民党の鈴木都議が「お前が結婚しろ!」「産めないのか?」などヤジを飛ばした事件でも、鈴木氏は「誹謗するためではなく、少子化、晩婚化の中で、早く結婚をしていただきたいという思い」で発したと言い訳しました。市長の言い訳はこれと同レベルのあまりに稚拙すぎるものといえるでしょう。

大相撲を揺るがす暴行事件でも、責任を取って引退届を出した元横綱日馬富士関について、相撲協会の八角理事長は「(これまでの努力を評価しつつも)暴力は肯定できない。断腸の思いで引退届を受理した」と発言して批判されました。当然です。ここで挙げた組織のトップは、組織の危機と自分の思い入れの区別がつかないといえます。それではリーダーとして失格というべきでしょう。


4.トップリーダーの態度
トップがトップであるゆえんは組織の長としてのリーダーシップにかかっています。それは真の組織防衛ができるかどうかです。軍隊に代表される組織で上意下達が徹底されるのは、上官が常に部下の責任を負うからです。「部下が勝手にやりました」という無様な言い訳が通るような甘い軍隊はありません。

ハラスメント事件が起こった時は、自分の思い入れを表明するのではなく、少なくとも被害を訴えた人がいる以上、組織の長は「公正であること」を担保するのが何より大切です。自己の思いは引っ込め、適正に対処する組織であることこそ、リーダーが発しなければならない最重要メッセージなのです。

日本レスリング協会が第三者機関による調査を行うことは非常に大切なのですが、その前に栄氏擁護の発言をしてしまったことで、せっかくの第三者調査への信頼が揺らいでしまいました。「ハラスメントがあった・無かった」は絶対に軽々に発言してはならないのです。こうした事態を重大に受け止める組織であることを表明し、そのためには公正を期すために内閣府にお願いして、第三者調査委員会を立ち上げる等適正な手段を主導できることが、あるべき姿だったと思います。

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