そろそろ自己犠牲の“おもてなし”から卒業したい|service scientist's journal/松井 拓己
INSIGHT NOW! / 2018年4月16日 0時5分
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松井 拓己 / 松井サービスコンサルティング
サービス事業の構成要素を、顧客、従業員、事業の3つに分けて捉えてみると、どこかが犠牲になっているサービス事業は上手くいかないことが分かります。言われてみれば当たり前のようですが、サービス事業の実態は、どこかが犠牲になっていることが多いのです。図には、サービス事業の3つの構成要素の周りに、サービス改革に取り組む企業でよく登場するキーワードを並べています。これらのキーワードは、やろうとしていることは間違っていません。しかし、いざ取り組んでみると、どこかが犠牲になってしまって、なかなかうまくいかないものです。
自己犠牲では事業はジリ貧になる
近年「おもてなし」が注目されてきました。おもてなしは本来、裏表なく相手を大切に思い、もてなす心や姿勢のことであり、日本らしいサービスの価値観なのだと思います。おもてなしを通して顧客がサービスに感じる価値を高めることは、サービス事業の成長エンジンになります。
しかしこの“おもてなし”という言葉は最近、建前論や精神論で語られることが多く、間違った拡大解釈をしてしまっていることが多いテーマでもあります。おもてなしというものは、サービス提供側が自己犠牲を払ってでも、顧客のためにいろいろと尽くすことが良しとされる風潮があるのです。これは、CS向上やサービス向上、感動サービスなどのテーマでも同様のことが言えます。
たとえば、顧客の要望にはNOと言わず、何でもかんでも応えようと努力する。時間やお金をかけてでも、顧客が思ってもみなかったような驚きの対応をする。顧客に喜んでもらうために、特典を付けたり、値引きや無償対応をする。などなど。
こういったサービスは、顧客は喜んでくれる可能性はあります。しかしそのために、サービス提供側である事業や従業員が自己犠牲を払って疲弊してしまうのは、サービス事業として健全な姿ではないと思います。
本当の問題は自己犠牲ではない
おもてなしやサービス向上、CS向上の問題は、実は自己犠牲が前提になっていることではありません。その努力の結果得られる成果を曖昧にしていることです。「いつかきっと、いいことがあるはず」という思いで努力しているケースが実に多いのです。もちろん、下心満々ではいけませんが、とはいえビジネスである以上、サービスの価値に見合った真っ当な成果は得るべきです。「いつかきっと」という意識で闇雲に取り組んでも、その「いつか」が来ない可能性があります。
サービス事業の成長を加速するのであれば、サービスの価値を高める努力が、具体的にどのような成果として表れてくるのかを明確にしてみると良いと思います。そうすることで、自分達らしく成果に繋がる“おもてなし”とは、具体的にどんなものなのかが浮かび上がると思います。裏を返せば、どんな努力は報われない努力、もったいない努力だったのかもハッキリすると思います。
いつかいいことがあるはずと闇雲に取り組んで自己犠牲で終わらせるのではなく、サービスの本質を捉えることで、顧客への価値向上と事業成長の加速を両立させたいものです。
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