「事業計画は“人”で決める」グラシアス・松本崇氏に聞く 創業期の乗り越え方/LEADERS online
INSIGHT NOW! / 2018年4月16日 15時0分
LEADERS online / 南青山リーダーズ株式会社
部下からの誘いで独立を即決
(仙石)本日はありがとうございます。まずはグラシアスの現在の事業内容について、お聞かせいただけますでしょうか。
(松本)グラシアスでは法人携帯や複合機の販売やLED照明、新電力の導入サポートをはじめ、さまざまな分野で企業様のコスト削減のお手伝いをしております。今期からは福利厚生事業も展開しており、全部で17商材を取り扱っています。
コスト削減の方法としては、大口のお客様を対象にすることでボリュームディスカウントを適用しています。法人用携帯ならショップで契約した場合の4分の1、複合機ならカウンター料金(1枚を印刷するための料金)を6分の1まで下げてご提案しております。同業他社でも、ここまで料金を下げられる会社は少ないのではないかと思います。
(仙石)それはお客様としてはうれしいですね。現在17もの商材を展開されているとのことですが、この商材は創業当初からあったのでしょうか。
(松本)会社員時代は法人携帯の販売をしておりましたので、当初はその事業だけでした。その他の事業は、お客様のニーズから広がっていった感じです。
たとえば防犯カメラの販売事業は、運送会社のお客様からの「トラックが盗まれるので、防犯カメラをつけてほしい」というご要望からはじまりました。エアコンの販売も、法人携帯を契約してくださったお客様がエアコンの故障でお困りだと聞いて、卸先を探したことがはじまりです。
ほかにも、お客様の会社で扱っておられる商材を「うちでも販売させてください」とご提案したことから、取り扱いがはじまった例もあります。先にお伝えした福利厚生のサービスなんかは、そうでしたね。
業務外であっても、お客様が困っていることなら解決したい。こういう姿勢で営業に取り組んできたことが、今の事業形態につながったのかもしれません。
(仙石)そうだったのですね。グラシアス設立前は法人携帯の販売をされていたとのことですが、その頃のことを詳しくお聞かせいただけますでしょうか。
(松本)グラシアス設立前には、東京にある法人向けの携帯電話販売の会社に勤務しておりました。その後名古屋に転勤して2年、大阪で仕事をしたこともありました。
1人で仕事を回せるようになってきたなと実感したのは、名古屋勤務時代からです。大阪勤務時代には組織論や経営についても、考えられるようになっていました。この頃には最大で120人の部下を抱えたこともあり、数字的にも結果を残せるようになっていましたね。
独立の一番大きなきっかけは、当時の部下の誘いでしたね。私は「やろう」と即答しました。彼は今グラシアスの専務なのですが、異動などのタイミングがぴったり合ったということもあり、自然と「一緒に事業をやりましょう」という話になったんです。そこにあと1人のメンバーも加わり、3人で会社を立ち上げました。
事業計画は頭で考えるより“人”で決める
(仙石)会社設立の誘いに即答されたということは、ある程度「独立しても大丈夫だ」という自信がおありだったのでしょうか。
(松本)いえいえ、自信はまったくありませんでした。でも、彼のことを信頼していましたし、誘ってくれたこと自体がうれしくて、YES以外の回答は思い浮かびませんでしたね。
その証拠にというか、順風満帆な船出では決してありませんでした。まず、誘ってくれた彼が「僕がいくらかお金を貯めているので大丈夫です」と言うので「いくらあるんだ」と聞くと、なんと30万円で(笑)。私の高校の同級生からお金を借りて、なんとか会社を作ることができました。
その後も資金繰りが厳しくなって、月末に口座残高がたったの5,000円になったこともありました。そのときはさすがに、もう会社がつぶれるかもしれないと思いましたね。キャッシュフローをしっかりと考えることの大切さを身に染みて感じました。
(仙石)それは大変でしたね。どのように切り抜けられたのでしょうか。
(松本)そのとき私がしたのが、社員の給料を増やすことでした。これでより仕事に打ち込んでもらえば売上が上がり、キャッシュフローも改善すると思ったんです。結果的にこの読みは当たり、すんでのところで倒産をまぬかれました。
業績が悪くなったら社員を切り捨てる会社もあると聞きますが、そんなのは論外です。むしろ業績が悪いときこそ人に投資しなければならないと思っています。こういう気持ちが伝わっているのか、グラシアスは離職率がとても低いんですよ。
しかも、若くして結婚したとか子どもが生まれたとか、幸せな報告をしてくれる部下が多い。これはうれしいことですよね。社員同士の仲もよく、プライベートでも交流があるほどです。
(仙石)それはすばらしいですね。一方で、業績が悪いときに人件費を増やすというのは、なかなか勇気のいることですよね。なぜそのようなお気持ちになられたのでしょうか。
(松本)人って、まずは愛されないと動かないと思うんです。条件のよさや仕事のやりがいは、その次。それに社員が満足していなければ、お客様に満足していただけるようなサービスも提供できませんよね。
だから私は、ついてきてくれた人を自分から愛し、社員とその家族までは必ず幸せにするという気概で経営に取り組んでいます。
事業計画も頭で考えるというよりは、“人”で決めています。グラシアスは大阪で立ち上げ、次に福岡に事業所をつくったのですが、それは立ち上げメンバーだった部下が結婚して福岡に行くことになったから。その次に東京に拠点をつくったのも、会社員時代の上司から紹介してもらったスタッフが東京に住んでいたからなんです。人とのつながりを大切にしていたら、いつの間にか拠点が増えていったという感じですね。
毎日の朝礼で神棚を拝む理由
(仙石)本当に人とのつながりを大切にしながら、ここまで来られたんですね。御社の社訓や経営理念のようなものは、おありでしょうか。
(松本)グラシアスの社訓は「感謝」です。営業会社では、契約獲得のためにオーバーなトークをしたり、契約の内容を正確に伝えなかったりということが横行しています。これはお客様との信頼関係を考えると、絶対にしてはいけないことです。
なぜそのようなことをしてしまうのかというと、やはり「契約を取りたい」という自分本位な考えがあるからだと思います。グラシアスではこのような自分本位な考え方を、本来あるべきお客様本位の考え方に戻せるよう、毎朝神棚を拝んで、社員全員で社訓を唱えています。
既存のお客様との信頼関係が築けていれば、新しい商材が出たときに追加でご契約いただけるという場面も増えてくると思うんです。グラシアスはそういう意味でも、アフターフォローを大切にしています。
訪問や電話でのご連絡はもちろん、携帯電話が故障したと聞けば、新しいものをプレゼントしたりもしています。ちょっとやりすぎかも、と感じることもありますが、お客様への感謝の気持ちをあらわすには、それくらいしてもいいと思っています。
(仙石)アフターフォローまでしっかりしてもらえると、お客様も安心できそうですね。
(松本)はい、お客様の満足度を少しでも高められるようがんばっています。もうひとつ大切にしているのが「継続」で、これは当社の行動方針にもなっています。どんなに優れたアイデアでも、続けなければ意味がない。とはいえ人間、怠け心が出てくることもあるものです。だから行動方針についても社員全員で唱えてから、朝礼をするようにしています。
グラシアスはまだ5期目の会社で、完全に軌道に乗っているとは言い切れない状態です。ここから事業を軌道に乗せるには、感謝の気持ちを忘れず、がんばり続けることしかないと思っています。社員を信じて、必ず成功するという強い思いを持つことが、何より大切なのではないでしょうか。
(仙石)今後の事業展開について、お考えのことはありますか。
(松本)ほんの5年前まではうちと同じように法人携帯の販売を手がけている会社も多かったのですが、最近ではずいぶん少なくなってきました。その意味では、非常に変化が早い業界だという実感はあります。グラシアスも商材を増やすなどして、時代の変化についていけるように心がけています。
商材の中でも、RPA(ロボットによる業務自動化)には将来性があるなと感じています。事務などの単純作業をロボットに任せることで、人間は考える仕事に集中できます。海外ではすでに、ロボットに社員番号を割り振っている会社もあるくらい浸透しています。5年後、10年後を考えれば、RPAの販売は力を入れていきたい事業ですね。
(仙石)ありがとうございます。最後に、読者の方へのメッセージをお願いいたします。
(松本)これから先は、一時的な売上増よりも、会社を長く続けていきたいと思っています。最近は雇用を増やして、幸せにできる人数を増やしていきたいという思いがさらに強くなりました。具体的には社員数100人以上、売上100億という数字を目指していきたいですね。
どんな会社も、お客様や従業員、取引先という存在なくしては続けていけないと思います。私もまだまだこれからです。少しでもたくさんの人たちを幸せにするために、共にがんばっていきましょう。
<PROFILE>
株式会社グラシアス 代表取締役
松本 崇(まつもと・たかし)
株式会社グラシアス代表取締役。一般企業にて法人携帯販売業を経験後、同社を設立。現在は複合機やの販売やLED電球や新電力を活用したコスト削減サポートも手がけ、大阪・福岡・東京他8拠点を持つ。企業理念は「お客様」「お取引様」「従業員」の満足を追及し
【転載元】
リーダーズオンライン(専門家による経営者のための情報サイト)
https://leaders-online.jp/
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