理想の自分を追いすぎると、こころが疲れます/内藤 由貴子
INSIGHT NOW! / 2018年4月18日 21時10分
内藤 由貴子 /
◇新年度が始まってそろそろ気になる「こころの疲れ」
新年度になって、早半月以上たちました。
新入社員なら、緊張感とともにスタートした社会人生活に少し慣れてきた頃でしょうか。
いえ、まだまだという人も多いかもしれません。
新入社員ならずとも、この時期は、自分自身にではなく外側で起こることに意識が向きがちです。
家庭でもお子さんの進級や新入学などで、年度始めの行事が多い時期です。
職場や家族の要求をこなすだけで、いっぱいいっぱいになりやすいのもこの時期です。
そんな時、どんどんこなせている場合は、まだ身体の疲れだけですむかもしれません。
でも、気になるのは、「こころの疲れ」です。
思ったように仕事が進まない、結果を出せない場合、自分にダメ出しを何度もすることになりやすいです。
職場なら、周りの期待に応えようとしてできない自分が迷惑をかけているような気持になり、ついつい自分を責めてしまいがち。
「自分はこの仕事に向いてない…」「こんなはずじゃなかった」なんて思う人も出てくるかもしれません。
そうでしたら「こころの疲れ」の黄色信号が灯り始めていますよ。
◇ 自分の理想像と現実のギャップ
さて、自分はダメなどと、なぜ、思うのでしょうか。
周りの人から直接そんな風に言われることも、あるのかもしれません。
しかし、多くは「自分」が「自分」に「ダメ出し」をしていることが少なくありません。
「デキル自分」という「理想像」いえ、本人は理想というより「こんな風にできて当たり前」位に思っているかもしれません。
だからこそ「こんなこともできない自分」を責めてしまう。
その人にとって「できて当たり前」なイメージだとしても、それが今のあなたの「理想像」です。
できない自分を責めるのは、その理想と現実のギャップを受け容れにくいからです。
しかし、その理想が必ずしも、周りから求められているものと同じとは限りません。
実は、周りはそこまでの仕事を期待していないかもしれませんから。
だから「できなかったことがことで恥ずかしい」と感じたとしても、あなたの価値ではありません。
評価される立場だったとしても、客観的な基準は、案外違うところにありがちです。
「こうしたら評価されるだろう」というのは、自分の思い込みであることも多いですから。
◇ 仏教哲学からヒントをもらう
仏教哲学の話を少し書きましょう。
「般若心経」というお経があります。これには「色即是空、空即是色」と言う言葉があります。
これは、私たちがこの世界で見ているもの(色)は、実体などない(空)のだ、と言う意味です。
また実体がない(空)が、私たちは何らかの現象(色)として見ています。
言い換えれば、見る視点によってその現象の捉え方は変化します。
自分と他との関係性で意味は変わってきます。
ですから、実体などないのに「何か実体があるかのように錯覚しているのだ」と意識が変われば
自分がとらわれていた「理想像などの、実体はない」と思えてきます。
「こうあるべきだ」「こうでなくてはならない」と思うと、理想の形を求めすぎて辛くなります。
自分ができていないものに「執着」し、苦しくなります。
本来、実体が無いものを求めるのですから、手に入りません。
よく思考は現実化する、起こっていることは自分が望んだことと言いますが、それは相対的に導いてしまったからです。
無いものにフォーカスしているから、現実化しません。しかし、自分がダメダメな面は、どんどん現実かのように現れてきます。
では、理想を求めて努力しないほうがいいのか、と誤解を生むのですが、そういうことではありません。
後で書きますが、努力のベクトルが違うのです。
◇ 「こころの疲れ」を招くのは…
さて、何が「執着」を生むのでしょうか。
理由は人によって様々ですが、自分の中の虚ろな部分を、何かで満たそうとしている場合。
多くは、無意識に行っています、
虚ろさは、孤独感であったり、自信のなさであったり、不安や恐れへ形を変えていることがあります。
なぜ虚ろなのと言うと、そのカギは「愛」にあります。
それは誰かに愛されるという事以前に「自分が自分に愛を与えているか」が大きなポイントです。
自分にダメ出しをするほど、自分が自分に愛を与えられない状況になります。
数年前に「ありのままで」の歌詞の歌がありましたが、共感した人も多かったでしょう。
あれは周りの人の期待に応えること、期待された理想像を演じることをやめて、自由に生きることを選んだ歌でした。
その選択ができることは、自分を愛することにほかなりません。
「他者から自分がどうみられるか」や「しがらみ」を軸にして動いていると、本当に疲れます。
過剰に外側の人たちが自分を「承認」してくれるか、評価してくれているかに軸を置くと「こころが疲れる」からです。承認や評価は、自分に足りない愛の代用なのですが。
自分の方が、周囲をどう関わるかにベクトルの向きを変える選択をすると、違ったものが見えてきます。
先に努力のベクトルが違うと書いたのは、このことです。
◇ 本来の自分に戻ることを忘れないで
新入社員なら、希望の配属先に入れなくて「やっぱり私には向いてない」とか「自分の力を伸ばせるのはここじゃない」とか
早々に落ち込んだり、転職を考える人がいるかもしれません。
その是非はともかくとして、まずは、希望だった配属先も実体のない理想なのかどうか、自分を主体に考える必要がありそうです。
自分に戻るためにはどうすればいいのかと言うと、
セラピストの立場で言えば、「他者の方を見て行動させてしまうこころの作用」を分析し、
その促進役になっている「感情」を見つけて解消するのが速く戻れて望ましいです。自分に愛を与える方法の一つですから。
その対応がすぐに無理なら、瞑想のように目を閉じて深呼吸し、一度周りを見えないようにして自分の気持ちを感じるのも良いでしょう。
「私は、今、何をしたいの?」「それをしていて、こころが喜んでいる?」などの質問を自分にしてもいいでしょう。
そして、逆のようですが、他者と関わってコミュニケーションするのは悪くないアイディアです。
ちょっと勇気を出して、直接、自分はどんな風に思われているのか、人に聞いてみるのもアリです。
さらに、拙文で以前書いた コミュニケーションと 「君たちはどう生きるか」に学ぶ深いコミュニケーションのこころの記事にそのヒントがあります。
コミュニケーションによって、人が自分と違うと気づけば、自然に自分が見えてきます。違うのは思考、理想、ねばならないと思っていたこと、世界観、といろいろあります
まもなくやってくるGWは、いったん自分に戻れる機会かもしれません。
付き合いで誰かのプランに流されてしまわないよう、自分のために良い時間をすごしてくださいね。
*今回の黄色いモッコウバラの写真は「私がそのまま個として輝く意志」をイメージしています。
これから咲こうとする中央のつぼみのように、周りに影響されず、堂々と自分の花を開けるように生きていただけますように。
(撮影は、私なので、本来のフラワーフォトセラピーで使っている写真ではありません)
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