高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)とはなに?/労働問題の解決に役立つ法律メディア 労働問題弁護士ナビ編集部
INSIGHT NOW! / 2018年5月2日 11時30分
労働問題の解決に役立つ法律メディア 労働問題弁護士ナビ編集部 / 株式会社アシロ
高度プロフェッショナル制度とは、『特定高度専門業務・成果型労働』のことで、働き方改革関連法案として国会で議論になっています。
この制度は、収入が一定額(現時点では年収1,075万円を想定)以上の専門職について、労働賃金を働いた時間ではなく成果で評価する制度です。そのため、『残業代ゼロ法案』と呼ばれることも。ただ、同時に進められていた『裁量労働制の拡大』を検討した法案が労働時間データの不備によって見送りになったことから、疑問の声が高まっています。
この記事では、働き方改革の関連法案でもある高度プロフェッショナル制度について徹底解説します。
高度プロフェッショナル制度とは?
この項目では、高度プロフェッショナル制度についてご紹介します。
労働賃金を時間ではなく成果で評価する制度
高度プロフェッショナル制度では、対象の労働者を労働時間の規定から除外します。今までの労働制度では働いた時間の分だけ賃金が支払われていましたが、高度プロフェッショナル制度では働いた時間は賃金に反映されません。
労働時間に関係なく成果をあげた人が高い労働賃金を得ることができます。
年収1075万円以上の一部の業種が対象
高度プロフェッショナル制度は『特定高度専門業務・成果型労働』ですので、対象となるのは特定の業種や年収の労働者に限定されます。対象となる業種は以下の通りです。
- 研究開発
- アナリスト
- コンサルタント
- 金融商品のディーラー
- 金融業品の開発
また、現段階ではこれらの業種につく労働者のなかでも、年収1,075万円以上の方が対象とされています。
高度プロフェッショナル制度のメリット
高度プロフェッショナル制度は、多様な働き方や長時間労働の改善を目的につくられた法案です。この法案は『ホワイトカラーエグゼンプション』とも呼ばれ、アメリカやイギリスなどの諸外国では先行して導入されています。
労働時間に関係なく仕事ができる
高度プロフェッショナル制度では、労働時間は賃金に反映されないため、成果さえ出せば好きな時間に働くことができます。つまり、子育てなどで朝や夕方は家族の用事をしなければならない場合に、昼間や子供が寝た後の時間を利用して集中的に働くことができるということです。
働いた人より結果に答えた人に多く支払われる
今までの労働制度では、残業代などの時間外労働手当に収入の重きが置かれていることから、収入確保のために必要以上の残業を行うこともありました。
高度プロフェッショナル制度では、時間よりも成果が重要視され、時間外手当の概念もなくなるため、短時間で成果を出すことが求められます。このことから、労働効率の向上が期待されています。
高度プロフェッショナル制度のデメリット
高度プロフェッショナル制度は、残業などの時間外労働の概念がなくなることから『残業代ゼロ法案』とも呼ばれています。この項目では、残業代ゼロ法案と批判される要因となった制度のデメリットについてご紹介します。
残業代の概念が無くなる
高度プロフェッショナル制度では、労働時間の規定がなくなるため、残業や時間外労働という概念自体がなくなります。裏を返すと、どんなに時間をかけて取り組んでも成果がでなければ賃金が上がらないので、事実上『残業代ゼロ法案』になるのです。
評価基準が難しくなる
高度プロフェッショナル制度で対象となるアナリストや研究職などの業種は、成果を出すのに時間がかかることもあります。また、成果の評価は業種や企業ことに異なるため、賃金格差が生まれる可能性があります。
あわせて確認しておきたい労働問題
この項目では、高度プロフェッショナル制度と合わせて確認しておきたい労働問題についてご紹介します。
労働制度の悪用
管理職(管理監督者)や、みなし労働制などは会社側も誤った認識をして制度を悪用している場合もあります。労働制度の悪用による賃金不払いは違法になる可能性が高く、会社に賃金の支払い請求をするとも可能です。
サービス残業
労働時間よりも効率を重視するあまり、サービス残業となってしまうこともあるでしょう。賃金を支払わないサービス残業は場合によっては拒否することもできます。
ハラスメント
職場の同僚や上司、部下などに嫌がらせを行ったり休業制度などの利用を妨害したりするハラスメントは違法と判断される恐れがあります。ハラスメントにあった場合は、会社のコンプライアンス窓口などを通して解決を図りましょう。
高度プロフェッショナル制度の展望
残業代ゼロ法案とも呼ばれる高度プロフェッショナル制度は、現状として2019年4月からの導入を目指しています。
一方、裁量労働制などの、働き方改革の関連法案は一部が本国会での決議が見送りになったものもあり、高度プロフェッショナル制度も再検討すべきという意見もあります。
今後も動向に注目する必要がありそうですね。この記事で、高度プロフェッショナル制度に関する疑問が解消されれば幸いです。
【出展元一覧】
- 厚生労働省|「働き方改革」の実現に向けて
- 厚生労働省|労働時間に関する見直し
- NHKニュース|高度プロフェッショナル制度 来年4月施行方針 厚労省
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