日本人(の一部)の外出離れ:カネと時間と体力をむしり取られに行くようなもの/純丘曜彰 教授博士
INSIGHT NOW! / 2018年4月28日 21時21分
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純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学
ゴールデンウィークだそうだ。だがしかし、外出する気になれない。とにかく、なにをしても、どこへ行っても、人だらけで、ものすごいカネを取られる。一日働いたって一万になるかどうかという時代に、家族で外に出たら何万がかんたんに吹っ飛ぶ。
まず交通費。電車代もバカにならない。車で行ったら、いよいよひどいことに。ちょっと高速に乗って、線を変えただけで、ETCでガンガン課金。江戸時代の山賊かよ、というくらい、つぎつぎ襲いかかる。着いたところで、車が止められない。へんな民間の、田んぼに砂利を突っ込んだだけの脱税農地に誘導され、いきなり、おっさんに、一日2000円ね、とか言われる。
そこから延々と歩いて行くと、恐るべき年金ジジババの長蛇の列。なにもあんたら平日だってヒマだろうに、なぜ今日来る? おまけにやつらは、変な老人カードでトンデモ割引。こっちは子供まで課金、課金、課金。中に入ったところで、これまた長蛇の列。並んでばかりでヘトヘト。肝心の目当ての順番が来るころには、とっとと早く外に出て座りたい、と思うばかり。
ところが、座る場所も無い。店の外までイスが並んで、さらにその先にまた長蛇の列。一時間待ち、二時間待ちとか書いてある。座りたくて店に入りたいのに、それにはまた立って並び続けないといけない。これでこの値段と驚くような肉無し炭水化物の「豪華」定食メニューだけを渡され、食事が終わってなお中でのんびり話し込んでいる中のジジババを外から恨めしく眺めていても、なんの感慨も無い。ほかの店へ行っても、どうせ同じ、と、いらつく気力さえ失う。
午後も遅く、やっと中に入って座れたところで、注文なんか取りに来ない。やっとオーダーしても、延々と待たされる。昨今の人手不足。待遇を良くしないとバイトさえ集まらないのだろう。もちろん従業員だって食事はゆっくり取りたいのはわかる。ひたすら我慢して待つほかはあるまい。
外へ出れば、あいかわらずの人、人、人。もういいか、帰ろうか、なんていうことになって、なにかお土産でも見よう、などと思っても、これまたひどい状況。狭い通路、山積みの商品。どこで作ったかもわからないようなありきたりの中身に、包装紙だけが地名をうたう。あれこれ選ぶ間にも、満員電車なみに人に押され、流され、ぐいぐいぐい。どうでもよくなって、とりあえずこれ、などといっても、レジ前がまた長蛇の列。会計を終えて、外に戻るころには、山のねぐらに帰るカラスが鳴いている。
じゃ、私たちもそろそろ、と車に乗り込むが、駐車場から出れやしない。外の道が渋滞して、駐車場の中さえも車が動かない。どうせ一日料金だから慌てることもあるまいとは思うものの、あれだけのカネを取っておきながら、来たときの駐車場のおっさんも、もうおらず、出口の誘導も無いから、前の方も外の道の渋滞に割り込めず、ただ日が暮れていくのを嘆つつ、一家で溜息をつくばかり。
これでどこかに泊まったら、さらに悲劇的。十万単位でカネが消えていく。レストランも大浴場も、人、人、人。これまた「豪華」バイキングなんて行ったって、ふつうの家庭以下のやっつけ料理の奪い合い。トレイが厨房から出て来たら、すぐにごっそり持っていこうという連中が、ワニのように近くのテーブルで待ち構えている。大浴場も同じようなもの。カランの前に座って体を洗おうにも、順番待ち。露天とやらも、縁は人だらけなものだから、真ん中あたりで、ぷーかぷか。
バカじゃなければ、学習する。一度で懲りる。サービスの質、満足の度合いが、金額に合わない。それでもかまわない、という連中の殺到に、根負けしてしまう。いっそ海外なら、公園はもちろん、街中にもベンチがあって、肉屋や屋台で食べ物を買い、そこらのキヨスクで飲み物を手に入れて、呑気に楽しく過ごせるのに、日本は、どこでも、人、人、人、なんでも、カネ、カネ、カネ。心も体も休まらない。かといって、海外に脱出しようにも、空港や飛行機の中が、まさに日本の観光地そのもの。
我々日本の祭日には、なにか悪しき呪いでもかけられているのではないだろうか。それならいっそ、家の中で静かに過ごし、映画を見る、本を読む、家族や友人とトランプでもする方が、はるかにまし。これはこれでゴールデンウィークの負け組なのだろうが、べつにもう勝ちたいとさえも思わない。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。最近の活動に 純丘先生の1分哲学vol.1 などがある。)
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