「帝王判断」でヒットコンテンツを量産!レベルファイブ日野晃博氏TOKYO GAME SHOW 2015基調講演
ITライフハック / 2015年9月18日 9時0分
2015年9月17日~9月20日の期間で開催されている「東京ゲームショウ2015」。初日に行われる基調講演として、「イナズマイレブン」や「妖怪ウォッチ」でおなじみのレベルファイブ代表取締役社長/CEOである日野晃博氏が基調講演を行ったのでその内容を紹介しよう。
■強い信頼関係におけるトップダウン
初の自社パブリッシュタイトルとして「レイトン教授」シリーズを世に送り出したあと、「イナズマイレブン」、「ダンボール戦機」、「二ノ国」、「妖怪ウォッチ」とヒット作を次々と生み出してきたレベルファイブ。日野氏によるとこうした結果が出せたのも、自信が経営者であり、かつクリエイターであるというポジションにいるからだという。「普通は経営者としての判断とクリエイターの立場がぶつかることが多い。両者の信頼関係を築くのは容易なことではない」(日野氏)。
しかしレベルファイブでは、経営陣とクリエイティブ陣の視点がまったく同じであるとのこと。ほとんどすべてのクリエイティブプロセスに日野氏は関わっているそうだ。その結果、強引なワンマン判断が可能な会社になっているのが特徴であるとも。この判断を日野氏は「帝王判断」と呼ぶ。「一人の人間がすべてを決めるのは必ずしもよいことではないが、このことによって必勝パターンに繋がるいくつかの実例があったと思っている。この判断で起こった必勝へ繋がる道筋をご紹介したい」(日野氏)。
レイトン教授における帝王判断は、脳トレブームの次にヒットするものとして、それに一つだけあたらしいエッセンスを加えたものでいいという、あまりクリエイター的に乗り気になれないプロジェクトを発足させたこと。そして低コストで宣伝費もあまりかけないものとしたことにも帝王判断があるという。
そしてニンテンドーDSという、ユーザーが音を聞かずにプレイしている可能性が大きいプラットフォームで、タレントを声優に起用するという判断だ。「音量をゼロにされるかもしれない携帯ゲーム機で声優を使うなんてあるの?と言われた。しかしその方が話題性もあってユーザー視点で面白いと考えた」(日野氏)。加えて「頭の体操」を打ち出そうとしたところ、この言葉が権利関係の問題で使えなかったことで、「レイトン教授」というキャラクターを前面に打ち出すことに即決で路線変更したことなどが挙げられる。
イナズマイレブンの最大ポイントはアニメ業界との連携であった、と日野氏。「ゲームの都合でこのキャラクターを出したり、削ったりということをしたが、この時代はまだ理解が得られなくて苦労した」(日野氏)。しかし出資者であり原作者であることを使って、アニメや他メディアのクリエイティブにどんどん介入していったとのこと。またそうすることにより他社との多方面な連携が始まり、クリエイター同士だけでなく、経営者同士でも繋がることができたそうだ。「ここから今日の成功に繋がるものができた」と日野氏。
■最終的には黒字になった「二ノ国」
二ノ国については、スタジオジブリという、ゲーム業界ではアンタッチャブルとも思えるビッグネームとの交渉に際しては“ダメ元空気”だったそうだ。しかしいく通りもの回答を用意して持ち帰りを一切せず、会議の最中に方針を変更したりと臨機応変に対応したそうだ。そして予算がいくらかかるか分からない不完全なプロジェクトでありながらも、そのまま進めることができたのは日野氏が経営者であり、クリエイターだったからこそ。最終的には黒字になったとのことだが、途中までは利益につながるか読み切れなかったそうだ。
■そして妖怪ウォッチへ
そして妖怪ウォッチ。これはクロスメディア戦略を採り、会社を越えた総合プロデューサーとして、コンセプトの見張り番を務めたとのこと。「契約上書かれているわけではないが、担当の皆さんが僕らの意見をしっかりと聞いてくださり、強い連携が可能となった。コンセプトがまったくぶれることなく、アニメでもゲームでも進めていくことができた」(日野氏)。
そして本タイトルについては、アニメフォーマットへ介入したとのこと。ストーリーだけでなく、番組構造への提案を行ったそうだ。スタッフについてもすべてレベルファイブ主導で選定。そのため音楽はレベルファイブのサウンドコンポーザーが担当したり、「僕の考えるベストメンバーでアニメを作りたい」(日野氏)との考えの元、スタッフにも口出しをした。そして子供たちと、それを取り巻く家族に作品をヒットさせるために、物語を紡いでいく方式では限界があるので、バラエティ番組を手本とした内容作りを心がけたとのこと。またエンディングには子供が踊れるようなCGダンスを取り入れた。
結論として帝王判断とは、経営とクリエイティブの両案件に対して、全責任を持って行える判断である、と日野氏。経営者とクリエイターが深く理解し合い、総合的な視野において判断できることが成功に繋がるとも。そして経営者には「クリエイターを過保護にするな」、クリエイターには「理解してもらう努力を怠るな」をメッセージとして訴え、「経営者もクリエイターも、仲良くしなさい!」と語って基調講演を終えた。
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