個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第六十回
ITライフハック / 2015年11月12日 9時0分
■はじめに
本電子書籍連載記事の担当さん(※)からサジェスチョンをいただいたので、今回は電子書籍の失速と印刷本の復権について考えてみたいと思います。
アメリカの状況などもチェックしてみますが、出版関連では電子書籍でも印刷本でも日本と文化や状況がかなり異なるので、直接的な参考にはならない可能性が高いことを予めおことわりしておきます。
※編集部注:編集長
■アメリカの状況
アメリカでは2007年11月に初代のKindleの発売以降、電子書籍市場が急成長しました。2010年にはiPadのリリースと共にiBookストアもサービスが開始され、アメリカにおける電子書籍市場は順調に成長していきました。
2012年あたりまでは比較的順調に拡大していましたが、2013年からは成長が明らかに鈍化し、2015年は縮小に転じる可能性も囁かれています。
成長が鈍化する、というのはある意味当然のことでしょう。電子書籍を閲覧するには専用端末やスマホ、タブレットといったデバイスが必要で、デバイス自体が広まりつつあるときは市場も順調に拡大するでしょう。
コンテンツも同様で、品揃えが充実するに従って売り上げも多くなります。デバイスがある程度普及し、コンテンツが揃い、環境が整ってくると拡大する余地は減ってきます。
しかし「減少」となるとちょっと話が違います。しかもアメリカでの出版事情が興味深いのは、印刷本の販売が好調で多くの書店の業績が良くなっているという点です。
・参考:現代ビジネス「アメリカで電子書籍の売上が大失速!やっぱり本は紙で読む?」
私はアメリカのリアルな状況を知っている訳ではないので単なる想像に過ぎませんが、ここ数年間のアメリカでの電子書籍はある種のブームという側面が強かったのかもしれません。
つまり、周囲で急速に電子書籍を利用する人が増え、それに乗って自分も端末を購入して電子書籍を利用し始めた、という人が少し落ち着いたとかそういう要因もあるのではないかと想像します。
周りに流される形で利用し始めた方は、ブームが覚めると購入のペースが落ちたり、端末の買い替え(Kindle→スマホなど)を機に、興味が低下したりといったことがありそうです。
その他でいうと、米Amazonと出版社の契約で自社の電子書籍の価格を出版社が決められるようになったことから、電子書籍の価格が数年前に比べて高くなっていることも大きな要因かもしれません。
このような状況から、電子書籍の利用が落ち着き、印刷本が再評価されるようになったのではないでしょうか。先日、米Amazonがシアトル市内にリアル書店「Amazon Books」をオープンしたのも、このような状況と無関係ではなさそうです。
■日本の状況と今後
日本では少なくとも今のところ、アメリカとは状況が異なっているように見受けられます。日本ではKindle、スマホ、タブレットといった新しいデバイスによる電子書籍市場は2010年の暮れからスタートしました。
ですが、コンテンツの少なさや使い勝手などの理由から、すぐに広く普及するということはありませんでした。その後も大小様々な電子書店が登場しましたが、日本の電子書籍市場が本格的にスタートするのは2012年の夏以降、楽天KoboとAmazonがサービスを開始してからです。
日本での市場の拡大速度はアメリカほど速くありませんでした。日本はアメリカに比べてリアル書店が多く印刷本を入手しやすいということや、電子書籍が印刷本に比べて期待したほど安くない、といった事情があったり、当初はコンテンツが少なく、電子書店やアプリの使い勝手がよくなかったといった事情も大きいように思われます。
少なくとも日本では電子書籍は消費者レベルではブームには至らなかったので、どちらかというとジワジワと広がっていった印象です。そういったことから、個人的には日本の電子書籍市場は今後も一定の成長を遂げていくと考えますが、同じことを続けていくだけでは消費者に飽きられてくるのではないかとも考えます。
シンプルに期間限定のセールなどは訴求力があると思います。
その他、最近目についた試みとしては以前本ブログでも紹介したKADOKAWAとはてなの「新・小説投稿サイト」や、トーハンの「スマホを使った書店店頭でのコミック試し読み」実証実験などが挙げられます。
トーハンの実証実験は、リアル書店のコミック売り場でコミックのPOPに二次元バーコードを掲示し、スマホで読み取るとそのコミックの試し読みができるようにする、というものです。これは印刷本の販売促進策ですが、LINEマンガと提携したものです。
LINEマンガは2016年1月から出版事業に参入し、印刷本の販売も行う予定です。ということを考えると、この実証実験は思ったより深く電子書籍と関係しているようにも思われます。
さて、前述の通りアメリカでは電子書籍が停滞・縮小傾向にあり、印刷本が盛り返しています。日本では数年後どうなっているのかちょっと興味深いものがありますね。
■おわりに
前回は急遽お休みをいただきました。先月から思いの他忙しくなってしまい、泣きを入れたのが真相です。年明けの1月いっぱい、色々忙しくなりそうなのでもしかしたら不定期にお休みをいただいてしまうかもしれません。
予めお詫び申し上げておきます。
以下告知です。
トレーニングスクール ロクナナワークショップにて、電子書籍関連のハンズオン講座を行います。ロクナナの講座は少人数制でしっかり深く理解できます。
■「Amazon:Kindleストア用電子出版講座」
日時:2015年12月10日(木)11:00~18:00
料金:29,800円(税込み)
会場:東京原宿(ロクナナワークショップ)
■「Amazon:Kindleストア用写真集講座」
日時:2015年11月21日(土)11:00~18:00
料金:29,800円(税込み)
会場:東京原宿(ロクナナワークショップ)
講座内容のご確認などはロクナナワークショップお問い合わせフォームよりお送りください。
■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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