【写真や動画の作例あり】 AIパワーで進化した折り畳みスマートフォン!Google Pixel 9 Pro Fold レビュー
ITライフハック / 2024年10月30日 11時0分
「Google Pixel 9 Pro Fold」
2024年8月13日、Googleのイベント「Made by Google 2024」が実施された。同イベントでは、Google Pixelシリーズの新機種にあたる「Google Pixel 9」「Google Pixel 9 Pro」「Google Pixel 9 Pro XL」「Google Pixel 9 Pro Fold」の4機種が発表された。今回取り上げる「Pixel 9 Pro Fold」は最上位モデルにあたる、折り畳みスマートフォンだ。直販価格は、257,500円(税込)~。この4機種の一番の「売り」はAI機能だろう。ただ、現時点ですべての搭載予定機能が利用できるわけではない。購入後に徐々に使える機能もあるので、現時点で利用できる機能を中心に、レビューする。
■外観とディスプレイ
外観から見ていこう。外形は折りたたんだ状態で155.2 x 77.1 x 10.5 mm、広げた状態で155.2 x 150.2 x 5.1 mm、重さ 257gである。他社の折りたたみスマホと比べると、特に画面の角が丸いデザインと、メインカメラ周囲のデザインが印象的である。カラーバリエーションは2色、Obsidian(濃いめのグレー系)、Porcelain(白系)である。今回はObsidianをお借りしている。
カバーディスプレイは6.3インチ、1,080 x 2,424ドットの有機ELである。たたんだ内側には8インチ、2,076 x 2,152ドットのフレキシブルな有機ELディスプレイが実装されている。2枚のディスプレイともに解像度、色再現性が優れていて、大変きれいである。しかも最高輝度は2,700nitとかなり明るく、直射日光の下でもある程度の視認性を確保している。
従来機種のPixel Foldとは各ディスプレイの縦横比が変更されていて、外形イメージもかなり変更になっている。
特に折りたたんだ状態では折り畳みではない普通のスマホとほとんど変わらない印象になった。折りたたんでも厚みが10.5mmなので、同じシリーズの下位機種 Pixel 9の8.5mmと厚みの差はわずか2mmである。
気になるディスプレイの折り目であるが、技術の進歩によりほとんど目立たなくなってきた。筆者が実際に使ってみて、特に表示をしているときに折り目が気になったり邪魔になったりしたことは皆無である。また、ヒンジもしっかり閉じられる。初期の折りたたみスマホは、このようにピッタリと閉じられなかったことも記憶に新しい。
開いたところ(ケースを装着済み)
閉じたところ
背面
製品パッケージと主な内容
右側面
上面
底面。SIMスロットとUSBポート。
開いて画面を90度回転すると、Youtubeをみるときに便利。
SIM用トレイを取り出したところ
■基本性能と通信機能
本機はGoogle Tensor G4プロセッサ、16GB RAM、256/512GB ストレージを搭載し、後述のAI処理が可能な処理能力を持つ。防水性能はIPX8である。本機は5G対応で、nanoSIMスロットに加え、eSIMにも対応している。
無線LANは最新の規格「Wi-Fi 7」対応で、最近普及が本格化している6GHz帯も使える。Bluetooth 5.3、NFC(おサイフケータイ)にも対応している。衛星測位システムについては、GPS、GLONASS、Galileo、Beidou、QZSS、NavICと、主なシステムに対応している。
通信機能に関してはほぼ満点と言って良いだろう。
■バッテリーライフと充電機能
本機は4,650mAhの大容量バッテリーを搭載している。さっそくYoutubeの連続動画再生を行ってみたところ、約17時間再生が可能だった。なかなかの実力である。
バッテリーテストの結果。約17時間Youtubeで連続動画再生できた。
本機はUSB Type-Cポートから、もしくはQi規格のワイヤレス充電器で充電できる。USBからの充電時間を実際に計測した。
充電時間を計測した結果。0-90% 約70分だった。
約70分で空の状態から90%まで充電できた。実測で10~20Wの急速充電だった。
以上、充電には手持ちのPD対応のUSB ACアダプタを使い、バッテリー残量のグラフ化にはアプリ「シンプルバッテリーグラフ」を使用した。
■カメラ性能
本機のメインカメラは3眼で、48メガピクセル広角、10.5メガピクセル超広角、10.8メガピクセル光学5倍ズーム(デジタル最大20倍)の各ユニットから構成されている。フロントカメラは10メガピクセルである。
実際に撮影した写真とビデオをご覧頂こう。
広角
標準
ズーム2倍
ズーム5倍
【動画】
AIパワーで進化した折り畳みスマートフォン!Google Pixel 9 Pro Fold レビュー
https://youtu.be/mULwCP04cD8
YouTube:https://youtu.be/mULwCP04cD8
ご覧頂いたとおり、十分にきれいな写真やビデオを撮影できた。解像感、色再現性など普段使いには十分と言えそうだ。
■AIを活用した先進機能
本機を含むPixel 9シリーズが発表されたイベント「Made by Google」では、生成AIのGeminiに関する発表が相次いだ。まだこのとき発表になったAI機能のすべてが使えるわけではないが、本機ではその一部が他社に先駆けて使えるのが魅力である。
それぞれの機能を簡単に紹介しておこう
〇かこって検索
画面上に表示されているものを指でかこってGoogle検索ができる機能である。他社の一部のスマホでも搭載が始まっている。当然本機でも使えて便利である。
ブラウザで見つけたこの製品、気になるので検索しようとしているところ。まず画面の下、ホームボタンを長押しし、画面全体がやや白く変わったところで対象物を指で囲むか印をつける。
すると、Googleの画像検索画面が立ち上がり、インターネット上から検索した結果が表示される。
〇編集マジック
CMでおなじみのAI機能である。Googleフォトの機能で、写真の一部を選択して消したり、移動したり、大きさを変えたりできる。他社の一部のスマホでも搭載が始まっている。
編集前:建物のひさしが映り込んでいるので消してしまいたい。
編集マジックで消したいものを指でなぞって選択したところ
編集マジックで消したいものを指でなぞって選択したところ
編集マジックで消した結果。とても自然に消えている。
〇イマジネーション
同じくGoogleフォトの機能で、写真にAIを使って画像の一部を編集し、新しい画像を追加もしくは修正できる。
編集前:手前の海の部分を消して芝生の公園にしたい。
操作中の画面。消したい部分を選択して、プロンプトとして「Green field」と入力した。
操作中の画面。消したい部分を選択して、プロンプトとして「Green field」と入力した。
修正した結果。生成された4つの候補の中からこれが一番気に入ったので採用。
プロンプトは現在英語しか使えないようである。また、現状は人物を生成するのは難しく、この例のような風景なら良いようだ。
〇一緒に写る
カメラアプリの機能で、集合写真の撮影時に、写っていないはずの撮影者をあとからAIを使って合成できる。フィルムカメラでいうと2重露光の機能で、AIを使って実現している。
〇動画ブースト
カメラの動画撮影の際にAIを使って手ブレ補正、色調整、ノイズ軽減などを行い、映像品質を高める機能だ。Googleフォトのクラウドサービスと連携して実現している。撮影ファイルはクラウドに送られ処理が終わると通知が返ってくる。
「Made by Google」で発表されたAI機能には他に「Pixel Studio」、「Call Notes」、「Pixel Screenshots」などがあるが、現時点では利用できない。搭載時期は未定であるが、簡単に紹介しておこう。
〇Pixel Studio
テキストで所望する画像のイメージを入力するとAIが画像生成するアプリ。
〇Call Notes
電話の内容をテキストで記録。要約もできる機能
〇Pixel Screenshots
保存したスクリーンショットをさまざまに簡単に呼び出せる。記憶の補助として便利なツール。
これらの新しいAIツールはスマホ内部に存在する小さなAI「Gemini Nano」を使った仕組みとのこと。これにより、プライベートな情報や秘密の情報をクラウドに送る必要がなく、スマホ内部で処理を完結させるため、プライバシーやセキュリティに配慮されたものになるようだ。提供時期が明らかでなく、情報も少ないが、Pixel 9シリーズではシステムやアプリのアップデートにより使えるようになるはずなので、楽しみである。
〇Gemini LiveほかGeminiアプリの新機能
本機でももちろん、AIチャットアプリのGeminiが利用可能である。人間に近いとても自然な会話能力を持つ話題の最新機能「Gemini Live」も言語を英語に切り換えることで既に利用できるようになっていることが確認できた。
Gemini Live(英語)の画面
本稿執筆時点では残念ながらGemini Liveは日本語では利用できなかったが、近いうちにGeminiアプリがアップデートされ、Gemini Liveの日本語対応に加え、個人アカウントでGmailやGoogle Drive、Googleカレンダーなどと連携できるようになると思われる。楽しみである。
なお、その際には有料の「Gemini Advanced」の契約が必要になる場合もある。ただ、現在、本機購入者には特典として「Google One AI プレミアム」が6ヶ月無料になるのでこの特典の中でGemini Advancedが使えるが、これによりGemini Liveの日本語対応など新機能がいち早く使える可能性が高い。興味ある方はGoogleの発表など最新情報に注目しているようお薦めする。
■ ハイレゾ・ワイヤレスイヤホンの対応を調査
筆者は最近ハイレゾ対応のワイヤレスイヤホンに凝っており、好きな音楽を良い音で楽しんでいる。
ハイレゾとはCDを超える高音質のデジタルオーディオのことをいう。本機でハイレゾが楽しめるか気になっていたのでさっそく試してみた。
ワイヤレスイヤホンはBluetoothで接続するが、そのときに音声データを圧縮して送る技術がコーデック(もしくはBluetoothコーデック)だ。
コーデックの中で高音質対応のものはハイレゾコーデックと呼ばれており、「LDAC」と「aptX Adaptive」が代表的である。
「Bluetooth Codec Changer」というアプリで調べたところ、本機は、Opus、LDAC、aptX HD、aptX、AAC、SBCの6種類のコーデックに対応していると確認できた。ハイレゾコーデックに注目すると、本機は「LDAC」には対応しているが「aptX Adaptive」には残念ながら対応していない。
本機に筆者の手持ちのワイヤレスイヤホン Nuarl Next1(LDAC対応)を接続したら、無事、ハイレゾで音楽を楽しむことができた。音楽の楽器ひとつひとつが解像度高く、高域から低域まで自然な音で広がり感がある。自然な音なので長く聴いていても疲れない。まさしくハイレゾの音だ。
試しに本機にもう1台のワイヤレスイヤホンDenon PerL Proをつないだところ、このイヤホンは本来「aptX Adaptive」対応のところ、ランクを落として本機が対応している「aptX」で接続できた。コーデックのランクは落ちたものの、ヘッドフォン自身の地力もあり、十分良い音で音楽を聴くことができた。aptXも悪くない。
ハイレゾの音楽音源は、たとえばAppleMusicやAmazon Musicで楽しむことができる。
ハイレゾコーデックについて詳しくはこの記事でわかりやすく説明したので参照してほしい。
ハイレゾ対応で音質抜群!スマート充電ケースも魅力の「JBL LIVE BEAM 3」レビュー
URL:https://itlifehack.jp/archives/10780483.html
Apple Musicでハイレゾ音源のChicagoの新譜を聴いているところ
ワイヤレスイヤホン Nuarl Next1(右)、Denon PerL Pro(左)
Bluetooth Codec Changerの画面 ワイヤレスイヤホン Nuarl Next1をつないだとき、LDACコーデックが使われていることや、接続先(イヤホン)とスマホの両方の対応コーデックが確認できる。
さらに詳しい接続条件(コーデックの設定)が確認できる。
ワイヤレスイヤホンDenon PerL Proをつないだとき。本来、このイヤホンはaptX Adaptiveが使えるのだが、スマホ側が対応していないのでaptXで接続されている。
■素晴らしい完成度の「Google Pixel 9 Pro Fold」
折りたたみスマホは完成度を高めている。本機も素晴らしい完成度だ。開くと8インチの大画面、そしてたたむとコンパクトなケータイと、このコンセプトはとても魅力的である。ただ、折りたたんだときの画面サイズも6.3インチと、ごく普通のスマホ並みであり、わざわざ本機のディスプレイを開いて操作しなくても、閉じたままで十分に使えるのも事実である。ユーザによっては、しばらく使っているうちにほとんど閉じたままで開いて使うことがなくなったという声も聞いた。高価な機種なので、必要性をよく考えて自身のスタイルに合ったものを選んでほしい。
ディスプレイの耐久性についても気になるが、もちろん、今回のような短い使用期間では確かめることができていない。しかし、ヒンジがぴっちり閉じられるようになったり、技術の進歩をしっかりと感じられた。また、本機の目玉機能であるAIだが、残念ながらまだまだ本来の実力の半分以下しか利用できていない。今後のリリースに期待をする形である。
AI関連では各社がしのぎを削って開発を進めており、新機能の発表を急ぐためか、実際に使えるようになるまでに何ヶ月もかかることが当たり前のようになってきた。ライバルより少しでも早く印象づけたいという競争になっているせいだろうか。また、この待ち時間を長く感じる理由のひとつに、最初の段階では英語圏でしか使えない機能がとても多いことがある。
逆に言えば本機は購入してからも機能が大幅に進化する、そんな楽しみもある。ユーザとしてはこうした点も考慮しつつ賢い買い物をしたいものである。
テクニカルライター 鈴木 啓一
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