個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第二十四回
ITライフハック / 2014年4月17日 9時0分
■はじめに
今回からEPUB3の内部構成について見てみようと思います。EPUB3のファイルは、電子書籍を構成する様々なファイルを内部に含んだアーカイブで、zip形式でパッケージ化されています。
ということで、EPUB3ファイルの拡張子は「.epub」ですが、「.zip」に変更することで一般的なzipツールで解凍できます。
ただし、解凍したデータを再度EPUB化する場合、一般的なzipツールでzip化した後に拡張子を「.epub」に変更しても適正なEPUBファイルにはなりません。これはEPUB3のzip圧縮が、少しローカルルールを含んだものであるためです。
今回は解凍して中身を確認できればよいので、再EPUB化の処理については割愛します。
サンプルとして以前でんでんエディター&でんでんコンバーターの紹介時に作成した「おおかみと七ひきのこどもやぎ」のEPUBを使います。
以下のサンプルデータをダウンロードし、解凍すると「おおかみと七ひきのこどもやぎ.epub」が入っています。
・[サンプルデータダウンロード]
■EPUBファイルの中身をチェック
おおかみと七ひきのこどもやぎ.epubの拡張子を「.zip」に変更して解凍すると、内部の第1階層には「mimetype」というファイルと「META-INF」フォルダ、「OEBPS」フォルダという2つのフォルダがあります。
2つのフォルダの中身は次の図のようになっています。
「META-INF」フォルダとその中にある「container.xml」はどちらも名称がEPUB仕様で決められていて、異なる名称にしてはいけません。
「META-INF」フォルダ内のデータはシステム上で利用される、裏方的なものです。「OEBPS」フォルダとその中にあるファイルは、基本的に制作者が任意の名称をつけることができます。
「OEBPS」フォルダ内のデータは、電子書籍のコンテンツ本編を構成するものや、書誌情報的なものとなっています。
今回はこの中の「content.opf」に注目したいと思います。
■パッケージドキュメントについて
この「.opf」という拡張子がついたファイルは、パッケージドキュメントと呼ばれ、EPUBを書籍たらしめているファイルです。
EPUBはコンテンツデータをXHTMLファイルで作成します。EPUB内のXHTMLファイルは、多くの場合1つのXHTMLファイルにまとめられるのではなく、章ごとなど区切りのよいところで適宜分割され、複数のXHTMLファイルで構成されます。
これらコンテンツ用のXHTMLファイル(と画像やCSSなどの関連ファイル)をパッケージ化するだけでは、電子書籍としては不十分です。そこには書籍としての情報が無いからです。
パッケージドキュメントには、様々な「書籍としての情報」を定義できます。主要なものとしては以下が挙げられます。
・書籍ID
・書籍タイトル
・著者名
・使用言語
・発行日
・改定日
・著作権情報
・書籍概要
・出版社名
これらの情報は、EPUB仕様で定められたXMLタグで定義します。
コンテンツ用のXHTMLファイルは、Web制作で使用されるHTMLタグを使うので、情報も豊富で比較的スムーズに制作できますが、パッケージドキュメントはEPUB仕様を理解して独自のXMLタグを使わなければならず、一筋縄ではいきません。
また、書誌情報的な内容だけでなく、固定レイアウト型のEPUBを作る場合に固定レイアウトに関する情報もパッケージドキュメントに定義します。
ということで、このパッケージドキュメント、重要な割にとっつきにくくジレンマを感じるファイルです。
基本的には、EPUB制作アプリやツールが適切なものを制作してくれますが、たまに直接編集するケースも出てきます。内部構成を少し知っておくと役立つことがあるかもしれません。
次回は、パッケージドキュメントの中身も少し覗いてみようと思います。
■最後に
少し告知をさせていただきます。私が制作に関わったイプシロン・ロケットの電子書籍「もうひとつの”イプシロン・ザ・ロケット”」がiBooks Storeでリリースされたことを以前告知させていただきました。
この電子写真集「もうひとつの“イプシロン・ザ・ロケット”」の制作秘話(というほどのことがあるかは分かりませんが)を披露させていただくセミナーが開催されることになりました。
電子書籍「もうひとつの“イプシロン・ザ・ロケット”」企画・制作・リリースまでの一部始終
・~ソニー・ミュージックコミュニケーションズ初の電子出版の軌跡~
日時は2014年5月30日(金)15:00~17:30。登壇者はディレクター兼デザイナーの中島さんと、オーサリング担当の私です。
この書籍タイトル「もうひとつの“イプシロン・ザ・ロケット”」の「もうひとつ」というフレーズは、印刷版の写真集「イプシロン・ザ・ロケット ―新型固体燃料ロケット、誕生の瞬間」を意識したものです。
「もうひとつの~」は印刷版を単に電子化したものではなく、最初からベツモノとして企画されたものです。それぞれがどのようなプランに基づいて制作されたのか、どのような問題や苦労があったのか、などできるだけお話したいと思っています。よろしければぜひお越しください。
■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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