世界中で注目される日本の食品メーカー 注目銘柄を斬る【ビジネス塾】
ITライフハック / 2014年4月30日 9時0分
「世界の成長センター」と言われるアジア市場は、人口の増加と中間層の拡大を背景に食生活の変化が急激に進んでいる。2015年末には「東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体」が発足する予定で、巨大市場の中国の存在も相まって、市場統合はさらに進むと予想されている。
今回は、こうした事情に対応し、アジアの需要を取り込んで実績を積み上げている食品メーカーを取り上げてみたい。
■キッコーマン
キッコーマンは、2014年3月期経常利益が予想を超える勢い。3月末までは消費増税前の駆け込み需要で調味料が売れたほか、「生しょうゆ」が一時販売中止になるほどの人気している。北米や欧州などでも、しょうゆの「健康効果」が評判となり、販売が好調だ。米国では「しょうゆ市場」自身を新たに創造、シェアは55%に達している。これにより、キッコーマンは、国内外の販売額が逆転する見込みとなっている。
アジア市場では1983年に東南アジア輸出への橋頭保として「キッコーマン・シンガポール」を設立、その後、台湾、中国と進出し、今ではアジア市場は同社にとって北米、欧州と並ぶ重要な市場に育ってきている。
■ヤクルト本社
ヤクルト本社は乳酸菌飲料の販売が伸びており、2013年4〜12月期純利益を過去最高に押し上げた。3月末には、中国広州市で第2工場が稼働、2013年通年販売額は1日平均157万本(前年比114%)と増加しているが、これをさらに確かなものにする。同社はダノンとの事業提携解消にともない、以降の関係が気になるところだが、ダノン側は今のところ。大きな変化は望んでいないようだ。
■味の素
味の素は、東南アジアだけで5000人の自社営業マンを抱えた、きめ細かな販売網が成果に結びついている。タイでは缶コーヒーがシェア首位で、生産力の増強も予定している。インドネシアでは、4月にパーソナルケア製品用途の香粧品素材の生産工場が稼働、新興市場でのスキンケア製品などの事業展開を加速させる。また、2875東洋水産と提携し、ナイジェリアとインドで即席麺の製造販売を行う会社を設立、将来的には5億食の販売をめざしている。
■重要な「ハラル認証」
食品各社がアジア市場で実績を伸ばすカギになると見ているものの一つが、「ハラル認証」問題だ。イスラム法(シャーリア)に合う製品づくりで、インドネシアやマレーシア、パキスタン、バングラディシュ、フィリピンの一部、さらに中東市場を展望したものである。
味の素はインドネシアで「ハラル認証」を取得済みだが、パキスタンにも進出する計画を打ち出している。ここを同社営業が手薄な、南アジアや中東をにらむ「ハラル」食品市場の拠点とするもくろみだ。地元企業との合弁も検討している。かつて、「豚由来の素材を使った」としてインドネシア市場で批判を受けた失敗経験から学んでいる。
このほか、各社は多数の貧困層がいるアフリカやインドを中心に栄養補助食品事業に乗り出している。味の素は、乳幼児の離乳食製品をガーナで販売する計画で、漸次、周辺国にも広げる。キッコーマンも発酵食品をケニアで発売する予定で、調査に入った。昨年春に発売された味の素の製品は、すでに1日6000袋も売れており、生産能力の10倍化を決めている。各社は単に社会貢献というだけでなく、新市場でのブランド定着を図り、将来的な市場開拓につなげる戦略だ。
市場環境としては、アジアの中心国である中国経済の先行きは、短期的には不安が残る。それでも、長期的な成長は疑いなく、近視眼的態度は禁物である。企業のアジア進出には、政府も成長戦略の一環として支援を行う構えだ。グローバル企業の「主戦場はアジアにあり」である。日本企業の奮闘に期待したい。
3社の株価は全体相場が弱含む中、高値圏で推移しており、基調は強い。中期的展開力があり、今後も大いに注目してみたい。
(小沼正則)
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