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失敗の原因を取り除けばあるのは成功のみ!うまく行くベトナム・オフショア開発

ITライフハック / 2014年5月2日 17時0分

失敗の原因を取り除けばあるのは成功のみ!うまく行くベトナム・オフショア開発

最近「オフショア開発」という言葉の意味を事前に説明せずに口に出しても、大半の人が理解してくれるように、ようやくなってきた。さらに「うちもオフショアやっている」「この間、プロジェクトの見積もりを出してもらった」「オフショア開発にしたら年間で数億円にのぼるコストを削減できた」という話も、あちこちから聞こえるようになってきた。

そうした成功の声とは逆に「オフショア開発を頼んだら納期が大幅に遅れてしまった」「完成したのはいいが品質が悪かった」「修正を繰り返し過ぎて追加予算が必要になり、結局国内ベンダーに頼んだのと変わらないコストがかかってしまった」という、失敗談も聞こえてくる。

同じスタートラインに立って「ようい、ドン!」と開始したオフショア開発であっても成功するオフショア開発と失敗するオフショア開発がある。この成功するパターンと失敗するパターン、それぞれに何がしかの共通点があるではないだろうか。そのポイントさえつかめれば、高確率でプロジェクトを成功に導くことができるようになる。

そこで早くからオフショア開発サービスを日本向けに提供している、セタ・インターナショナル株式会社の廣瀬倫理社長に直撃取材し、「ベトナムのオフショア開発で成功するためのポイントは何か?」をうかがった。

■ベトナム・オフショア開発の変遷を知る
セタ・インターナショナル株式会社(以下、セタ)はベトナム・ハノイに日系企業として最大級のオフショア開発センターを保有している。もちろん日本向けのオフショア開発サービス提供会社としてベトナム最大手であり、オフショア開発プロジェクトの成功のノウハウを蓄積している。

ベトナムにおけるオフショア開発が現在のようになるまでは、様々な試行錯誤を経てベストな形に変化してきたと廣瀬氏は言う。

「4~5年前のベトナムでのオフショア開発は、受託開発(請負開発)や開発用の自社子会社設立などが主流だった。しかし、もうこの形は陳腐化してしまい、ベストではなくなってしまった」と廣瀬氏。それには以下の理由があると廣瀬氏は言う。

・受託開発の問題点
1)仕様の認識に誤解があったまま進んでしまうと軌道修正に相当の手間がかかる
2)仕様を微調整しながら進めることが困難、アジャイル開発も基本的に難しい
3)技術者が成長しても次の開発プロジェクトも同じ技術者が対応するとは限らない

・独自にオフショア開発子会社を設立した場合の問題点
1)会社設立までの時間やコストがかかる
2)現地での知名度や実績がなく、優秀な技術者の採用が困難で離職率も高い
3)小規模な人員ではオフショア開発のメリットがあまり出ない
4)モチベーション、品質、日本語能力などの維持や育成のノウハウがない

「注意してほしいのは受託開発や子会社設立自体がNG行為ではないということ」と廣瀬氏。「例えば受託開発にはクライアント社員の負担がある程度は低減されるというメリットもある」、なるほどデメリット以外のメリットも少しはあるわけだ。ただ、現在のベトナム・オフショア開発でもっとも成功率が高く、そして受託開発や会社設立以上に大きなメリットを持つ方式が「ラボ型開発」なのだという。

「ラボ型開発は、自社独自で開発子会社を設立するより手間がかからず、成功する確率も高い。そして受託開発と比べるとコスト削減効果が高い。これは、当社のこれまでのオフショア開発経験によって導き出されました。」(廣瀬氏)。
株式会社セタ・インターナショナル代表取締役廣瀬倫理氏

株式会社セタ・インターナショナル代表取締役廣瀬倫理氏

■これからのベトナム・オフショア開発は「ラボ型開発」がメインに
「受託開発では要求仕様、もしくは設計書などが予め細かく作成されている必要があります。しかし、多くの企業ではオフショア開発の経験が少なく、どこまで詳しく仕様書を作成すればよいのか分からないため、後から機能や仕様を変更する場合がとても多い。これではうまくいくわけがない」(廣瀬氏)。

「仕様書が中途半端だと、それを詳細に完成させるための費用が発生し予算を圧迫してしまうのです。コスト増は他の機能を犠牲にすることになってしまい。別の機能を削るなど、結果的に当初予定していた仕様とは変わってきてしまう。」

基本機能は変更できないが、コスト増を避けるにはどこかを削ることで相殺するしかない。そこで、ちょっとした機能を削る必要が出てくる。これがラボ型開発なら開発を進めながら仕様を固めていくので、仕様の変更や機能追加なども柔軟に対応できるわけだ。

「費用も月額固定なのでコストのぶれが少なく、開発予算を抑えることができる」と廣瀬氏。

■品質にもいても他を凌駕するラボ型開発
それでは、ラボ型開発なの品質についてはどうだろうか。廣瀬氏によると「(ラボ型開発は)自社のサービスや事業内容といったノウハウを蓄積しやすい開発体制を構築できるため、品質の向上が見込める。」という。トラブルが少なくハイクオリティなら言うことなしだ。「特にブリッジエンジニアとのコミュニケーションを密接に行うことができ、機密性の高い案件も依頼しやすくなる」(廣瀬氏)。

このラボ型開発が急速に主流となったきっかけは何だったのか、廣瀬氏に聞いてみた。
「恐らくIT技術者不足がピークになると言われる“2015年問題”がきっかけだと思う」と廣瀬氏。さらに「現在どの企業でも優秀な人材を確保するのが困難な状況。そのためラボ型開発を通じて優秀な人材の確保を狙う企業がここ数年で急速に増えたようだ」と廣瀬氏は続けた。

某大手銀行のWebサイト再構築、国民皆番号制度システムの構築、生命保険の料金シミュレーションや電力会社のスマートグリッドシステム構築など、複数の大規模プロジェクトが重なり、プログラマーは引く手あまただ。優秀な人材の採用や確保が非常に困難になってきている。

また、オムニチャネル、ビッグデータ、スマートデバイス、クラウドなど、新しい技術への対応も必要になってきているのも、ラボ型開発が主流になってきている理由と言えそうだ。「SEベンダーや開発会社にとどまらず、ITを活用する多くの企業にとって人材不足を打開するため、新たな開発形態であるラボ型開発へシフトした」(廣瀬氏)。なるほど、ラボ型開発への変更は必然であったというわけだ。

■専任チーム内でトレーニングを行いスキルアップ
優秀な技術者を確保しにくくなっている現状ではスキルアップで対応するしかない。チーム全体のスキルアップは内部リソースを拡大できることと同じと見ることができる。

日本のエンジニアの多くは、ルーチンワークに忙殺される毎日を送っており人に作業を依頼し管理する経験を積めないまま、年齢を重ねてしまった結果、指示を出して人を動かす能力に欠けてしまうことがあるという。

そうしたルーチンワークをオフショアで依頼し、国内スタッフのリソースを設計や企画業務にシフトすることで、日本人技術者が新サービスの企画や、技術向上に従事する環境を提供することができるそうだ。

年功序列で上下関係が決まってしまう日本企業では、30代後半以降になってようやく自分がしたいことができる環境を手に入れられる。小さな会社だと、それすら難しいのが、これまでの日本のエンジニアのキャリアパスであった。

しかし、日本人の部下を持たせてもらう(雇う)のはコスト面で難しくても、オフショア開発なら、自分がやらなくてはいけない作業をエンジニアに依頼することが低コストで可能だ。

このようにラボ型開発モデルは、内部リソースの拡大手段だけでなく、国内の技術者を育てることに繋がるからこそ広がりつつあるのだと納得した。
チーム内トレーニングでスキルアップとノウハウの共有が可能になる。

チーム内トレーニングでスキルアップとノウハウの共有が可能になる。

■同じエンジニアで倍違うコスト金額
低コストとは言っても、ふたを開けてみたら、実はそれほど変わっていなかったというのでは困る。だいたいどれくらいのコスト差があるのか廣瀬氏に聞いてみた。

「国内のベンダーを使った場合、一人当たりのコストは平均65万円/月。これに比べ、ベトナムのオフショア開発ベンダーを使った場合は、一人当たり平均 30万円/月程度。つまり、国内に比べて1か月間での一人当たりのコストを 半分以下に抑えることができる。」と廣瀬氏。

例えばざっくりとだが10人規模のプロジェクトでは350万、20人規模のプロジェクトであれば700万円が削減できる。「セタでの約50人規模のプロジェクトを1例にすると、1年間で実に約2億 円以上のコスト削減になる」(廣瀬氏)。2億円もコストが浮くとなれば、飛び付く企業が増えるのも理解できる。

■オフショア開発をスタートする前に知ってほしいこと
ラボ型開発モデル、品質、コストとどれを取っても魅力的なサービスであることが理解してもらえたことと思う。

最後に、廣瀬氏にラボ型開発の導入を検討している方へのアドバイスを聞いてみた。

「結論から言うと、長期的なスパン、ウォーターフォール方式だけでなく、アジャイル方式での開発もラボ型開発は適用可能。例えば定期的な運用保守、システムの改善・改修をベトナム・オフショア開発に移管し、日本の技術者を新しい業務に対応させたい場合はラボ型開発がおススメ。」ということだ。

さらに「将来を担うグローバルエンジニアを育成するため、将来有望な社員(技術者)にチームを担当させて経験を積ませたい場合もラボ型開発が利用できる。」

「しかし、ベトナムに限らず海外での開発は、日本での開発と違い、開発、テストがそれぞれ担当者毎に分けられているため、プロジェクトを立ち上げる際には最適な開発体制を作ることに留意しなければならない」と廣瀬氏。

セタでは、一般的なプロジェクトの開発体制として、日本とベトナムの間の掛け渡し役として動くPM・BSE、開発者(プログラマー)、そして品質管理をする QAエンジニア、テスターを含めるそうだ。 PM・BSEは案件の仕様を理解してチームメンバーに説明しながら開発者をマネジメントする。そのため、セタでは開発チームにオフショア開発に精通した日本人 PM・ BSEをプロジェクトの立ち上げ当初体制に組み込むことを推奨している。彼らがいれば仕様がチームメンバーに正しく伝わり、日本人と同じ感覚でプロジェクトを進められるのだ。

「オフショア開発に限ったことではないが、開発プロジェクトを進めるにはコツがある。もちろん、オフショア開発を成功させるにもコツがある。しかし、今までのオフショア開発経験を通して我々が築いてきたコツをこの場ではすべて言いきれるものではない。「セタは5月 14から 16日に東京ビックサイトで開催されるJapan IT Weekでの“ソフトウェア開発環境展”に出展するそうだ。出展ブースにてオフショア開発を導入されたユーザー企業、日本人ブリッジエンジニア、ベトナム現地オフショア開発センターの運営者、という三つの視点からオフショア開発、特にラボ型開発を成功に導くための講演を行うという。興味がある方は是非いらしてください。」とのことである。

■株式会社セタ・インターナショナル

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