日米首脳会談 TPPで合意できなかったことの意味【ビジネス塾】
ITライフハック / 2014年5月2日 9時0分
オバマ大統領が来日し、日米首脳会談が行われた。米大統領が国賓として来日するのは1996年のクリントン大統領以来、18年ぶりのことである。
会談後、共同声明が発表されたが、これは2012年の野田政権以来のものである。その前は2006年の小泉政権まで遡らないといけない。日米は同盟国ではあるが、意外なことに共同声明はそう頻繁ではない。日本の政権が短命なことが背景だ。
さて、会談に関するニュースは尖閣諸島に関する話題が多いようだが、会談内容はそれだけではない。
内容と日本経済への影響を概括してみよう。
■ポイントは5点か
共同声明のポイントについて、「ウォールストリート・ジャーナル」は以下の5点をあげている。
まず、米大統領としては初めて、尖閣諸島が「日米安保条約の範囲内」と明言したことである。日本は米国のアジアリバランス戦略を支持し、中国に対して建設的な役割を促すとした。2つ目に、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉継続で合意した。
3つ目に、北朝鮮の核問題をあげ、日本と韓国との関係改善をうたったこと。4つ目に、ウクライナ問題でのロシアの態度を非難したこと。5つ目は、日米の学生交流を推進するとしたことである。
強調するポイントは、媒体によって異なる。日本のマスコミは、学生交流についてはほとんど取り上げていない。沖縄県内のメディアは普天間基地の名護市への移設を改めて明記したことを強調しているし、原子力発電所の存続を含む「新エネルギー基本計画」を米国が「歓迎」したことを力説するメディアもある。中国に対応するため、東南アジア諸国連合(ASEAN)への日米の共同対処が重要だとしている意見もある。
■TPPで合意できずは「想定内」?
共通しているのは、尖閣諸島に関することとTPPである。ここでは、合意できなかったTPPについてふれておきたい。
オバマ大統領は、TPPでの合意を強く願っていた。米国では秋に中間選挙が行われるが、民主党は旗色が悪い。大統領としてはここで点数を稼ぎたかった。具体的には、自動車業界と食肉業界の求めに応じ、これらの日本への輸出拡大を狙っていた。
だが、日本の基準に適合していない自動車でも輸入することを求めるなど、かなり無茶があった。豚肉や牛肉にしても、日本はすでに、同じく輸出国であるオーストラリアとの間で合意していたので、それと大きく異なる関税レベルで合意することはできなかった。もちろん、2015年の統一地方選挙を前に、日本国内の畜産農家への配慮もある。こうしたことで、互いに歩み寄りはしたものの、最終合意とはならなかった。
そもそも、米国では通商条約は議会の承認なしに結べない。このような場合、大統領は議会に事前報告する代わりに、通商合意内容の修正を求めずに一括承認を求める権限(貿易促進権限=TPA)を得るのが常なのだが、オバマ大統領はこれを得ていない。麻生副総理が「オバマ大統領は国内をまとめきれない」と述べたのは、真実である。
こう考えれば、TPPで合意できなかったのも不思議ではない。互いに相手の立場を思いやりすぎれば選挙で損をするからだ。
■成長戦略の目玉が必要
だが、安倍政権の経済政策を考えると、TPPで合意できなかったことの影響は残る。
日本経済は現在のところ、金融緩和と財政出動で回復基調だが、これを持続させるには成長戦略が欠かせない。外国人投資家もそれを見ている。だが、法人税減税やTPPが進まないこともあり、投資家は不安になっている。年初来、日本市場で株価が下落傾向なのは、そのためだ。
安倍政権としては、TPPに代わる目玉政策を打ち出すことに迫られたといえる。6月に策定するとされる成長戦略の中身に注目したい。秋口までの株価の動向は、それに大きく影響されるだろう。
(編集部)
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