著作権無視のフリーライドはなくなるか? ニコ動の動画変換&ダウンロードサイト運営者を逮捕!
ITライフハック / 2014年5月9日 10時0分
北海道警察本部サイバー犯罪対策課および北海道手稲警察署は、5月8日、株式会社ドワンゴ・ユーザーエンタテイメント(以下、due)およびJASRACが著作権を管理する楽曲の音楽ファイルを不特定多数の者にダウンロードさせていたサイト「にこ☆さうんど♯」(現在では閉鎖済み)の運営者(男性、29歳)を「公衆送信権および送信可能化権侵害」の著作権法違反の疑いで逮捕したことを発表した。
「にこ☆さうんど♯」では、ニコニコ動画に公開されている動画をMP3ファイルに変換してダウンロードやストリーム配信を行っていた。専用のアプリケーション等をインストールすることなく、ニコニコ動画の動画掲載ページURLを入力するだけで容易に変換・ダウンロード可能となっており、ニコニコ動画で人気のあるボーカロイド楽曲が数多く配信されていた。その数は1日あたり約1500件のファイル変換が行われるなど、大規模な違法配信が行われていたという。
また、サイト運営者は、ユーザーに無料で本件サイトを利用させていたが、サイト上に掲載していた大手広告配信サービスを通じ、これまでに実に約1億3千万円という莫大な収益を得ていたことが警察の捜査によって確認されている。
■無許可で他コンテンツからデータを利用するタダ乗りサイト
なお、本件サイトのようないわゆるフリーライドの寄生型サイトにおける違法音楽配信に関して、サイト運営者が著作権法違反の疑いで逮捕されるのは今回が初めてのこととなる。
1億3千万円もの広告売上があったのであれば、著作権管理団体と包括契約を結ぶことはできただろう。著作権が別にある自前のコンテンツではないものをデータ変換し、自由にダウンロードできる状態にしていた段階で真っ黒だ。しかも広告まで取っていたのだから、これは言い逃れできるものではない。
おそらくJASRACやdue等からサイト運営者に警告の連絡が何度かなされているはずで、運営者はそれをことごとく無視した結果、実力行使に出られたものと思われる。なおデーターを勝手に利用されたニコニコ動画だが、2008年にJASRACや別の管理団体と著作権利用料の徴収等の包括契約を結んでおり、このサイトとは異なりニコニコ動画内での音楽データーの利用等は、管理契約の範囲内に収まる利用であれば合法となっている。
■フリーライドサイトののメリット・デメリット
他人が作った人気コンテンツを無償で転載・利用するいわゆるフリーライド(タダ乗り)型サイトは、音楽関係だけでなく、2ちゃんねるの「まとめサイト」なども問題となっている。
例えばITライフハックの場合、原則として一次情報を扱っており、記者が自ら発表会や取材に出向いて実際に見聞きした出来事を記事化し、読者に配信している。ニュースリリースにしても、当事者から公式に発表されるリリースを元にし、原稿作成を行っており、伝聞やうわさレベルでの記事は、ほぼ存在していない(実際にあることを”うわさ”と表現して濁すことはある)。
2ちゃんねるなどは、そうした一次情報のサイトから、記事だけを抜き出して、トピックスとして提供、そこでのやり取りの多い記事によってPVを集めて広告収益を出している。記事転載の作業以外発生しないため非常に低コストで多くの人を集めることが可能だ。売れ筋商品だけを無料で集めて商売できるのだから、こんなおいしい話はないだろう。
■2ちゃんねるに掲載されることを黙認するケース
ただ、2ちゃんねるのような大手掲示板は、転載された記事の勢いをチェックすることで、記事が読まれているかどうかの指標としても利用できる。そのため転載禁止を明確に表に出しているニュース系メディアでも、2ちゃんねるへの転載だけは黙認しているケースがあるようだ。
黙認の範囲は2ちゃんねる本体であって、その下にフリーライドでぶら下がっているまとめ系サイトへの転載に関しては、認めていないところが多く、発見され次第削除要請がなされるといった状況になっている。
■元々は敵だったニコニコ動画と著作権管理団体
2008年頃、大手の音楽出版社やレコード会社などがニコニコ動画の運営であるドワンゴおよびニワンゴを著作権違反で提訴する寸前まで行ったことがあった。元々は、ニコニコ動画も著作権に関しての扱いがグレー(というか真っ黒)だった部分があり、それを包括契約するという形で解決した。
今回逮捕された「にこ☆さうんど♯」管理者も、同様に著作権管理団体と交渉するなりして、運営を継続できるようにすれば、実入りは少なくなるが、サイトの運営自体は継続できたのではないかと思う。
今回の件から、今後は広告収益を目的としてニコ動からデータを変換してダウンロード可能にするサービスを提供しているようなサイトは、確実にターゲットにされるということが明確になった。「じゃあ広告収入を得なければばいいのか?」というと「NO」だ。
なおdueとJASRACが「今回の事件が違法配信に対する大きな警鐘となり、適正な音楽配信ビジネスの発展につながることを期待しています。」とコメントを寄せているように、著作権管理が行き届き、適切に使用料が支払われるのであれば特に問題とはならないようだ。
■違法ダウンロードデータの正規化ツールと呼ばれる「iTunes Match」は?
つい先日、日本でもサービスが開始された「iTunes Match」。このサービスだが、CDからリッピングした音楽データーや違法ダウンロードされた音楽データも正規の音楽ファイル(256kbps、AAC)へと置き換わり合法ファイルに化けてしまう「ミュージック・ロンダリング」が可能なことが指摘されている。この辺も日本では著作権的に微妙な部分だ。今後国内の音楽管理団体から、どういった声が上がるのかに関しても注目したいところだ。
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