個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第二十七回
ITライフハック / 2014年6月12日 9時0分
■はじめに
前回休載させていただいたので、約1か月ぶりの記事になります。この間に、ちょっとしたニュースがありました。
このブログでも何度か触れたことのあるAppleの無料電子書籍制作アプリiBooks Authorに関するものです。
以前はiBooks Authorで制作した日本語の電子書籍をiBooks Storeで配布・販売することはできなかったのですが、5月中旬からできるようになりました。
iBooks Authorは2012年1月にリリースされ、アメリカでは間もなく配布・販売が可能になりましたが、日本語の書籍の配布・販売はアプリのリリースから実に2年4か月もの期間を要したことになります。
■iBooks Authorの特徴
以前の記事の内容と重複する部分があるかもしれませんが、改めてiBooks Authorについて少し説明します。
iBooks AuthorはAppleがリリースする電子書籍制作アプリで、無料で配布されています。
ただし、現在のところMac版のみでMac AppStoreから入手できます。
Keynoteなどの他のApple製品と同様にテンプレートが用意されているので、普段Apple製のアプリを使っている方には比較的習得しやすいでしょう。
電子書籍としての形式は、基本的に固定レイアウト形式です。まずテンプレートで縦向きか横向きかを選択します。
横向きのテンプレートを選択すると、横向きの固定レイアウトの電子書籍になります。また、デフォルトで、縦向き時にリフロー方式に切り替わるという特徴があります。
横向きテンプレートの電子書籍では縦向き時にリフローへの切り替えを無効にする(=横向き固定レイアウトのみ)こともできます。
縦向きテンプレートを選択した場合には向きによる切り替えは無く、縦向き固定レイアウトのみとなります。
まとめると、iBooks Authorで制作できる電子書籍の形式は以下の3種類になります。
・横向き固定レイアウト+縦向きリフロー
・横向き固定レイアウト
・縦向き固定レイアウト
また、リッチコンテンツを簡単に作れる、というのも特徴です。
ビデオファイルや音声ファイルはiBooks Authorのドキュメントにドラッグ&ドロップするだけで、iBooks Storeでの配布・販売に適したデータに変換してくれます。
また「ウィジェット」と呼ばれる各種インタラクティブオブジェクトも使用できます。EPUB形式でインタラクティブな仕組みを組み込むにはJavaScriptを使用する必要があり、開発・動作チェックなどに多大な工数が必要になります。
また、ウィジェットの1つであるHTMLウィジェットは、形式を守れば自分で開発することができます。
簡単なのはAdobeの「Edge Animate」やTumultの「Hype」のようなウィジェット形式の書き出しをサポートしているアプリでの制作です。
また、HTMLウィジェットはオンラインコンテンツを使用できます。例えば、YoutubeのビデオやGoogle Mapなどを埋め込むことができ、iBooksの中でシームレスに利用できます。
EPUBではオンラインコンテンツをEPUB内に埋め込むことはできず、リンクを張るだけでした。リンク部をタップすると別アプリが起動し、読者は電子書籍から一旦離れることになってしまいます。
このように様々な独自ウィジェットを利用することで、表現の範囲を一層広げることができます。
■EPUB形式との違い
ここまでiBooks Authorのいい点を強調してきましたが、EPUBの電子書籍と比べてマイナス面も存在します。
例えば、iBooks Authorで制作した電子書籍はAppleの独自形式なので他の電子書店で配布・販売できません。
また、閲覧環境も限られます。現状では、iPad用またはMacOS用のiBooksでしかiBooks Author形式の電子書籍を閲覧できません。つまり、iPhoneやiPod Touch用のiBooksでは閲覧できないのです。
また、現状EPUBでは可能な、縦書き・右開き・ルビなどの日本語書籍で利用される機能がiBooks Authorでは使えません。
また、EPUB3の仕様にあるテキストとの同期読み上げ(Media Overlays)機能に相当するものもiBooks Authorには用意されていません。
このように、EPUB形式とiBooks Author形式で思いの外大きな違いがあるので、両者の違いや特徴をよく理解しておくことが重要です。
■最後に
縦書きや右開きの書籍は作れないものの、全体としてiBooks Authorは非常にできのよい電子書籍制作アプリです。最初から用意されているテンプレートを利用するだけでも、かなり見栄えのよいものを作れます。
今後、iBooks Authorを利用した様々な電子書籍がリリースされると思われますが、案外見落としがちなのはiBooks Storeでの販売アカウントの制作の敷居の高さです。
iBooks Store用の販売アカウント取得には、アメリカの納税者番号が必要になります。これはFAXで申請・取得できますが、何も情報が無いとどうしてよいのか分からないというのが実際のところでしょう。
手前味噌で恐縮ですが、拙著「iBooks Authorレッスンノート」にはiBooks Authorの解説だけでなく、米納税者番号の取得を含む、iBooks Store用の販売アカウント作成についても触れてあります。
ご興味のある方は是非ご一読いただけると幸いです。
■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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