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エイシング、ネット接続がなくてもリアルタイムに自立学習できるAIチップ「AiiRチップ」をリリース

ITライフハック / 2019年1月31日 9時0分

エイシング、ネット接続がなくてもリアルタイムに自立学習できるAIチップ「AiiRチップ」をリリース


エイシングは、クラウドを介することなくリアルタイムに自立学習できる独自のAIアルゴリズム「ディープ・バイナリー・ツリー」(以下、DBT)を搭載したAIチップ「AiiR(エアー)チップ」を開発したと発表した。2019年1月23日には都内の会場で発表会も開催され、同社の代表取締役である出澤純一氏がAiiRチップについて紹介した。

■エッジコンピューティングで求められる自律制御
エッジコンピューティングとは、ユーザーやユーザーの端末の近くにサーバを分散配置することで、通信遅延を抑制する技術のこと。近年ではFA機器やスマートフォン、コンピューターが内蔵された自動車など、利用者の身近にある機器において、AIを活用する「エッジAI」のニーズが高まっている。これまで、AIの情報処理はクラウド上で実行されるのが一般的であったが、エッジAIではこれをエッジ側で行うことになる。

今なぜエッジAIが求められているかというと、モビリティにおける自動運転や、生産性向上を目的とした工場の自動化においては、リアルタイムに機器を制御するニーズが拡大しているため。同社ではAiiRチップにより、これまで困難だったエッジ側でのリアルタイムな自立学習を可能にした、としている。


エイシング代表取締役 出澤純一氏
■動的な環境変化にAI学習が追いつけていない
出澤氏は同社について、機械制御とAIの技術を持っているのが優位点であると語る。出澤氏と、おなく創業メンバーである金天海氏は早稲田大学理工学部の出身。機械工学を学んだほか、AIについても技術を蓄積し、オムロンやデンソーといった大手企業を顧客として事業を展開してきた。その中で開発されたのが「AiiRチップ」というわけだ。

現在はAIと言うと、ディープラーニングについての話題がよく上がる。しかしこれをスマートフォンや自動車に実装するときに課題となるのが専門家によるチューニングが必要であるということ。「これらを自動化するツールもあるが、動的な環境変化に追いつけていない」と出澤氏。「例えばタイヤの減り具合やロボットアームの経年劣化については対応ができていない」(出澤氏)。同じようにNVIDIAがGPUを利用したディープラーニングについて展開しているが、並列計算なのがネックだ。「現在はクラウドと通信して学習結果を反映させている。その結果をダウンロードさせて実行しているので、学習と予測が分離している」と出澤氏。



■ネットワークなしでスタンドアロン動作もできるAiiRチップ
またこのような手法を採ると、「どうしても通信コストがかかる上、レイテンシーの遅れが出てしまい、何ミリ秒かの遅れが発生して安全性が確保できないことは1年前から騒がれている」(出澤氏)。この欠点を払しょくして、ネットワークにつながらない状態で学習と予測を終わらせることができるのが、同社のAiiRチップだ。

AiiRチップでは、AIのチューニングが不要なので、AIエンジニアも必要ない。個体差の補正も可能で、その場で学習できるという。高価なマシンは必要なく、Raspberry Piで動作するデモも紹介された。学習については50~200マイクロ秒、推論は1~5マイクロ秒で応答可能だ。



■現時点でのAiiRチップは画像処理がちょっと苦手
ただしAiiRチップにも弱点はある。それは画像の処理が苦手であるということ。DBTに画像処理をやらせるとモザイク画になってしまうがこれはチャンネル数が100と少ないためだ。ただしFAにおいては100以上の制御は必要ないため、十分に活用できる。「メンテナンスコストもなく、学習速度も速くて説明が可能」と出澤氏は語る。



■機械制御における個体差補正や予測制御に力を発揮するAiiRチップ
出澤氏は今後の戦略について、機械制御系における個体差補正や予測制御、複雑系の計算、職人の勘を機械に置き換える分野などでAiiRチップの実力は発揮できると語る。


■販売ではなくライセンスによる提供を予定
なおAiiRチップについては一般的に販売するのではなく、ライセンス形式での提供になるという。昨年11月にはすでにオムロンへ提供されているとのこと。この形式を取るのは共同開発をしていくことでの展開を想定しているため。「2、3か月検証し、そのあと共同開発をしてライセンス提供していくのが成功パターン」(出澤氏)。現在はオムロンのほか、デンソーやJR東日本と提携して開発しているそうだ。


■クラウドとの連動で社会集合知を実現
「これまでエッジデバイスのことをお伝えしたが、クラウドと連動させることで社会集合知を実現していく。クラウド上で初期学習したものを覚えさせ、そのあとの学習結果をアップロードしてデファクトモジュールを作る。それをフィードバックしてループさせていけばいい」と語る出澤氏。今後は制御系機器一般に導入されることを想定しているとのことだ。

場合によっては99%もの工数を削減したAiiRチップの実力については計り知れないものがある。制御分野に本製品が入ることで、製造工程に変革をもたらすことが期待されるだろう。




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