2014年アドテクは運用フェーズに! ジーニーの工藤社長が語る“アドテクの使命”とアドテクの業界予測~前編~
ITライフハック / 2014年8月8日 17時0分
アドテク、アドテクとお題目のように言われる昨今であるが、デジタルマーケティングにアドテクは切っても切れない技術だと言える。注目されるアドテクサービスを出した会社は一気に注目を浴び、業績を急激に伸ばし企業価値を高めてきている。
それを証明するかのようにフリークアウトが本年5月19日に上場したことを皮切りに、企業価値を高めたアドテク各社の上場が相次いでいる。7月2日にはVOYAGE GROUPがIPO。さらにデジタル広告のカウリも来年春の上場を検討しているという。
このように「アドテク」はキーワードとしての目新しさに加え、デジタルマーケティングにおける従来の広告体系に革新を与える技術として注目されているのだ。
ただし、昨年までアドテクが持つ可能性については、その概念だけが先行し、ITに詳しくデジタルマーケティングをメインに広告展開を行っている企業の関心を集め、実際にアドテクを導入するのは、そのうちの数社といった実績でしかなかった。
アドテク導入の敷居の高さは、それがどういったものなのか、どんなメリットがあるのかといったことを実感できない広告担当者にとって「なんだかスゴイもの」といった認識にとどまっていたわけだ。
ところが2014年はアドテク各社の実績が功を奏し、「なんだかスゴイもの」から「導入すべき新たな技術」へと変化、いよいよ具体的な運用フェーズへ入るとされている。アドテク各社の上場の動きが、まさにその裏付けとなっているということが言えると思う。
アドテクの登場によって「何ができるのか?」を日本最大のエリアアドネットワークの構築を手掛けた経験を持つ株式会社ジーニー代表取締役社長工藤智昭氏に話を聞いた。なお、今回は前編ということで工藤社長が、どのようにアドテクに関わって行くようになったのかについて紹介しよう。
■工藤社長とアドテクとの出会い、そしてジーニー創業まで
工藤氏が社長を務める株式会社ジーニーは「最先端の広告テクノロジー(アドテク)で顧客の収益を最大化すること」をコンセプトにビジネスを展開するベンチャー企業だ。2010年4月に設立後、翌2011年9月にはベンチャーキャピタルの出資を受けて基盤を強化、現在も急速に成長中の要注目企業である。
まずは「工藤社長がどうしてアドテクに関わるようになったのか?」「アドテクとは、どんなものなのか?」について聞いた。
編集部:ジーニー設立の経緯(リクルート時代から、ジーニー設立までの背景)について、教えていただけますか?
自分が育った環境の影響もあり、子供の頃から起業をしたいと思っていました。大学受験の際、自分の手でプログラムを作れたらいいなと思ってコンピューターサイエンスの学科に入りました。
大学院では人工知能系を研究する傍らで学生時代に起業しました。その頃はSEO等の事業をしていました。その時点で経営者には向いているかもしれないと思うことが多かったのですが、肝心のやっている事業内容に全くワクワクしませんでした。研究室の中でじっとしているのは自分の性に合ってないものの、教授とする技術や未来の話はとても楽しかったです。
リクルートに入った理由ですが、じげんの平尾さんやkaizenの須藤さんを始めとして、当事は非常に魅力的な先輩がいたのが大きいです。それで人生勉強のためにと、リクルートに入りました。
リクルートでは本流の求人系への配属や異動は断り、自分が思考する技術を使った新規事業を担当させて頂きました。当時リクルートのメディアの影響力はだんだん下がっていたものの、インターネット広告が延びていたため、リクルートの優秀な営業マンがネット広告を売るスキームを考えていました。
そうしてリクルートでSSP(Supply-Side Platform)の前身となるようなアドネットワークの事業を始めたのです。私が日本でアドネットワーク事業を推進していた頃に北米でリーマンショックが起こり、金融エンジニアを中心にシリコンバレー等で金融のテクノロジーを使い広告業界にイノベーションが起こりました。
「リアルタイムビッディング」といって行動履歴を使いユーザーごとに証券取引市場のようにリアルタイムで入札をして広告配信をできるようにしたのです。この技術は必ず日本でも広がっていくだろうと思いました。
当時は自社で開発をせず外注という選択をしていましたが、私の予想では広告業界は「Googleレベルの技術水準で自社のプロダクトを作れる企業」か「他社が作った最新のテクノロジーが詰まったプロダクトをうまく使いこなせる起業」のどちらかのタイプしか良い組織にならず中間は厳しいと思っていました。年齢的にも30歳になる前に一回チャレンジしてみたいと思い起業しました。
ごくごく初期のアドテクとの出会いによって、それが将来的に必要になる技術であると瞬時に見抜き、しっかりとアドテクの基本を身に付けてからジーニーを創業したというわけだ。基本的な知識がしっかり身に付いていているからこそ自社サービスに対して具体的に指示が出せるわけで現場を知っていて自分でコードが書ける頼れる社長が工藤社長というわけだ。
編集部:ジーニーの事業内容、そして強みとは?
SSPの事業をやっています。インターネットのメディア企業やアプリ企業などの媒体社に対して、広告枠をリアルタイムビッディングに対応するためのシステムを提供しています。
ジーニーのSSPの強みとして、まずジーニーSSPのオークションへの参加事業者が国内で一番多い事がひとつ。これは開発力や海外事業、独立した資本でやっているからできていることです。オークションの参加事業者数が多いと、当然、媒体の収益がより増えます。
ふたつ目は技術力の高さからくる独自機能の豊富さです。たとえばスマートフォンにとって動画の入札事業者に本格対応しているのは国内ではジーニーのみです。他にも「GAURL」と言ってWebのページごとの内容を自動で解析し、ページ品質に合致する広告を出し分ける機能などメディアが広告で収益を上げるのをサポートする機能を豊富に持っています。
そして最後は豊富なアドテクノロジーの機能をどう活用して媒体社が収益をあげていくかを弊社のコンサルタントがサポートをしていることです。約90名と国内のSSP事業者としては多い人員体制によりこれらを実現しています。
これらを具体的な例に落とし込むとこうなる。例えばITライフハックのトップページにジーニー製の優れたSSPを導入することで広告の売り上げが増える(オークション参加者が国内最大規模)、さらにPCだけじゃなくスマートフォン向けのページでも動画広告を出せる(国内ではジーニーのみ)、そして広告売り上げが芳しくないケースでは、的確なアドバイスがもらえる(コンサルタントによるサポート)といったことになる。
このように多くの広告担当者にとって「なんだかわからないアドテク」を具体的な収益にダイレクトに直結してくれるのがジーニーの果たす役割というわけだ。これまでの話でアドテクがいかに重要な技術であるかがわかってもらえたことと思う。
後編では、アドテク全般についてと今後のアドテクの進むべき方向に迫る。
■株式会社ジーニー
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