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違法アップロードすら取り込み動画サイトを上手に活用する海外のミュージシャンやアーティストたち【デジ通】

ITライフハック / 2014年8月12日 13時0分

違法アップロードすら取り込み動画サイトを上手に活用する海外のミュージシャンやアーティストたち【デジ通】

インターネットの普及以前までは、音楽プロモーション用に作られるミュージックビデオは、MTVのような音楽専門チャンネルやテレビの音楽番組での視聴が主だった。最近では音楽CDに付録としてPV動画の特典DVDがついたり、オンラインで音楽データを購入すると特典の動画がダウンロードできるといった販売方法も提供されている。

ニコニコ動画やYouTubeのような動画サイトが登場し、普及してくる間にユーザーが著作権者の許諾を得ずに勝手にアップロードした非公式にアップされたPVも多く見られるようになった。特に中国語表示の動画サイトでは公式配信ではないだろうとは思いつつもそのサイトでPVを視聴している人は多いだろう。日本国内では、非公式にアップロードされたPVは著作権者や管理団体によって発見次第、削除申し立てが行われてすぐに視聴できなくなってしまうためだ。

■動画サイトでの公式PVの公開が、あまり進んでいない日本の事情
日本ではその曲がどういった曲なのかを広く宣伝するための公式PVが、インターネットではデータが流出してしまい著作権者の意図しない広がり方をすることがあるため非常に扱いにくいと感じ、一律ネットでの無料公開を禁止しているというレコード会社や音楽事務所が多い。その一方で、PVを著作権者が自ら動画サイトに配信し、宣伝のために活用をしている海外アーティストが増えている。

2010年に宇多田ヒカルさんのYoutubeの公式チャンネルにレコード会社がアップしたPVを、そのレコード会社の委託を受けて非公式動画の削除依頼をしている団体が間違って削除要請をしてしまい動画が閲覧できなくなる騒ぎがあった。そのくらい非公式動画の削除要請は頻繁に行われている。しかし、曲の宣伝効果を狙って、わざとチェックをゆるくし削除される期間を延ばしてみたり、削除依頼すらかけないで、そのままにしているというアーティストもいるなど、それぞれ動画アップロードへの見解やスタンスが異なっているようだ。

聴く側としては、テレビやラジオなどで耳にして気になったという曲を聞いてみたいというときにネットで検索して聞くという人が多いだろう。ただ、その際に公式PVか非公式アップロードかを気にすることはあまりないだろう。動画サイトで検索して出てきた動画をクリックして聞いているという人がほとんどのはずだ。ユーザーから見れば、公式だろうが違法だろうが聞きたい曲であることに変わりはないわけで「この曲は違法アップロードされたから聞いてはいけない」と考える行儀の良い人は、逆に珍しい存在だと言える。

公式かそうでないかは別にしてYoutubeなどの動画サイトは新しい音楽配信のプラットフォームの1つになっているのが現状だろう。日本でも、締め付けるだけではなく活用すべきという動きも始まっているが、特にアメリカはこの分野での進化が早く、公式の動画アップロードはもちろん、さらなる活用も始まっている。

例えば、2014年夏にアメリカのヒットチャートで上位をキープしているアリアナ・グランデの「Problem ft. Iggy Azalea」は、通常のビデオに加えて、歌詞付きのビデオを公開しており、2本の合計視聴回数は8月中旬現在で、1億6千万回を超えている。Yotubeには再生回数に応じてインセンティブが支払われる仕組みがあるわけで、違法に再生されるくらいなら公式PVを配信して再生回数でのインセンティブを得たほうがよほど利益になる(利益を得ずに配信しているケースもある)。

「ケイティー・ペリー」が2013年にリリースしたアルバムの「プリズム」は、2014年8月現在で通常版アルバムに含まれる13曲中5曲が公開されている。こちらは通常のビデオや歌詞付きのビデオに加えて、オーディオのみのデータやメイキングビデオもありバリエーションが豊富だ。この中で、曲が全編収録された11本のビデオの合計視聴回数は、8月中旬現在で15億回を超えている。

■Youtubeをメインに活動する映像クリエイターとのコラボ作品が音楽の世界を変える
そしてこれだけの回数再生されながら、このアルバムに含まれる曲は音楽チャートでも上位を占めているということ。動画をアップロードすることで曲のプロモーションにつながり、相乗効果が出ている良い例だ。そしてこうしたPVを作ったのは、Youtubeをベースに活動している映像クリエイターたちで、彼らはYoutubeで自分たちの作品を公開している。こうした映像クリエイターたちの映像を気に入ったアーティストが、自分の曲のPVを作成するのに、こうした新進気鋭のクリエイターに依頼して作られたPVが大ヒットし、曲の売り上げを一気に押し上げるといった効果が出ているわけだ。

「アヴィーチー(Avicii)」はアルバムの「True」でミュージックビデオをいくつか公開している。このリミックスアルバム「True (Avicii By Avicii)」の曲では、「Channel 4」というプロジェクトでYouTubeの映像クリエイターとコラボレーションしたビデオを公開している。それぞれのクオリティは、非常に高く新しい形のミュージックビデオと言えるだろう。

このように、単に動画を公開するだけではなく、インターネットの特性をうまく活用してさらなるプロモーションに生かす動きも始まっている。違法アップロードが音楽の売り上げを落としていると騒いで、クラウドサービスからも権利金を搾り取ろうとしている頭の固い連中がいるいっぽうで、公式動画をどんどん配信し、再生回数を伸ばし、世界中に自分たちの作品を宣伝し、多くのファンを得て曲の売り上げも立てて、なおかつ広告収入を得ているアーティストたちの存在がネットを上手に活用したときの音楽の未来を物語っているのではないだろうか。日本の現状を見ると、こうした動きに乗り遅れる方向に進んでおり、フィーチャーフォンで世界に乗り遅れたように、音楽業界が世界に対してガラパゴス化してしまうかもしれない。

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

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