GOOD DISTANCE研究会が提唱する最新の「東京都市生活」で求められる価値観とは?
ITライフハック / 2014年10月3日 9時0分
東京を中心とした最新の都市生活事情を研究する「GOOD DISTANCE研究会」では、先日、都内でプレス関係者向けに同研究会の活動内容を紹介するための「GOOD DISTANCEメディアセッション」を開催した。今回のメディアセッションではファッションディレクターの干場義雅氏をゲストに迎え、最新の「東京都市生活」で求められる価値観についてトークセッションが行われた。
■バランスのとれたライフスタイル感がトレンドになる
トークセッション前にGOOD DISTANCE研究会の代表を務めるマーケティング総合研究所田上嘉章氏より挨拶があった。
「先日、父の日に合わせ『理想の父親とライフスタイルに関する意識調査』を実施し、その調査結果から、都心と程よい距離を持つことでバランスのとれたライフスタイル感(都心回帰とは異なる指向性)が実現できることが導き出されました。これこそが今後の都市生活のトレンドになるのではないかと予見し、本研究会を発足させることになりました。」と田上代表。同研究会を立ち上げるに至った経緯を説明した。
■最新のライフスタイルとは?
第一部では最新の都市生活事情について「ファッションと住まいから見たライフスタイルの変化と最新のライフスタイル」と題し、出された内容に対し登壇者が順番にコメントを行った。
例えば都市生活の黎明期とも言える1920~1940年代(大正~昭和初期)は関東大震災・戦後における混乱期であり、地震被害からの復興、そして女性の社会進出が目覚ましかった時代である。この時代について
GOOD DISTANCE研究会 寺岡正則氏(マーケティング総合研究所)は、「大正に入って初めて日本が先進国の仲間入りをした。今の我々の状況では考えられないような新しい時代が生まれた。人々の中にそういう空気感で満たされていた時代だと思います。」と、当時の都市生活の状況について語った。
また、ファッションディレクターの干場義雅氏は「洋装の文化が入ってきた直後で、都会に住む人々の服装は着物より、好んで洋服を着る。たとえば、男の人だったら、当時で言う背広(スーツ)を仕立てて着る時代だったと祖父から聞いています。女性も割と綺麗な格好をしている。今となっては少し古めかしい格好かもしれないが、モダンボーイ、モダンガールと言われ、これが当時の最先端のファッションだったと思います。」と、当時の都会のファッションについて語った。
GOOD DISTANCE研究会の野口卓矢氏(読売広告社 クリエイティブディレクター)は、「職業婦人みたいな存在が急速に社会に台頭し出し、実際に商業とか経済の中心に女性がどんどん進出していった時代だと思います。広告は世の中を象徴するものなので、広告を見ると、その当時の様子がわかります。」と当時の広告を、時代を映す鏡の例として桃屋のコマーシャルを取り上げ、女性進出が始まった当時の世相を語っていた。
佐々木氏は、「この時代になりますと、現在と同じ通勤というスタイルが生まれてきた時代となりまして、その受け皿として田園調布の開発が進んでいました。単なる住宅だけの開発ではなく鉄道も開発されまして、まさに街としての開発が進んだ時期と言えると思います。」と、当時の住宅の開発状況について述べた。
野村不動産の大矢寛之氏は、「シャワーとかコンセントが住宅に最初から導入され始めたのがこの時期。同潤会アパートは、関東大震災の復興という目的で東京都内にいくつか作られましたが、日本近代の住宅の先駆けと言われています。そういったアパートの中に電気、水道等の設備が引き込まれた。とくにシャワーにつきましては、家庭用のボイラーが普及し始めた当時で、ホットシャワーの始まりと言われています。」と住宅設備の劇的な進化について語った。
以上のようにマーケティングの専門家、ファッションの専門家、広告の専門家、建築・都市開発の専門家といった。それぞれの専門家の目で見た都市の変化についての説明は、それぞれの理由から、なるほどと納得できる内容であった。
最新の東京都都市生活のライフスタイルトレンドの結論としては、下記のとおり。
1.ファッションやライフスタイルはバランスが重要
2.暮らし方は、都市と程よい距離をもって暮すのがトレンドになっていく
3.住まい開発(街開発)のトレンドはハード&ソフト
■都心と程よい距離をもった街作りとは
第二部では「東京の新しい街づくりと住まいの紹介」について、クロストーク形式で、それぞれの登壇者が得意とする分野の視点でより深に内容となった。
都心と程よい距離をもった街作りの事例として、稲城市の都市開発事業「スカイテラス南山」の話題となった。稲城市は「主婦が幸せに暮らせる街ランキング」で第2位となった街でもあり、住みやすい街との評価がある。
稲城市都市建設部市街地整備課課長の吉岡博文氏は「稲城にお住まいの方の満足度と思っています。都心と田舎の住みやすさというところで、皆さんの住みやすさという評価に繋がったのかなと思っています。」と語った。
さらに「土地の所有の皆さん、行政、協力いただく企業の皆さん、3種が既成概念にとらわれずに様々な経験や知恵を集めてより良い街を作るんだと協力して事業を進めていかなければならないと思っています。この事業への取り組みが今後の稲城の街作り、あるいは他の地区のいい宣伝になることを期待しております。」と続けた。
今回の街作りは「スカイテラス南山」というネーミングだが、そこに込めた想いについて、南山東部土地区画整理事業組合副理事長の森俊勇氏は「不利な北向きの斜面をどう売り出すかと考えたときに思い立ったのが、眺望のすばらしさです。眺望を一番のウリにしようとしたとき、専門家の人にいろんなアドバイスをいただいて出てきたものが『スカイテラス』というものでした。それを行政の稲城市、地元の自治会の方にもご意見を聞きまして、そういう中でだいたい良いのではないかと組合の総意として出たのが「スカイテラス南山」というネーミングです。このワードは、私どもがこの地区にたくさんの人に住んでいただきたいな、という気持ちを込めたものです。」と語った。
エリアマネジメント南山の都市プランナー宇野健一氏は「同地域はこれから10年に渡って2500世帯、7500人の人を受け入れていく必要があります。これからお迎えする人たちに楽しみながら自分たちの街を作っていく、そういう取り組みにチャレンジしていこうとしているのが、エリアマネジメントになるかと思います」と語った。
野村不動産の東伸明氏は「ひとつの大きな街を作るといったスケール感のある仕事です。私たち野村不動産がやっているのは大きく2つあります。ひとつは市民活動の拠点となるクラブハウスを公園の中に作る“場を作る”ということ。もうひとつは、様々な方々が活躍できる場を作る“場を作る”ということ。それが稲城南山クラブと、我々が今呼んでいるものです。行政単位の何か社会の基盤になっていくような、何か人的なネットワークを作ることを目指していけたら非常に面白いかなということで、皆さんと一緒にソーシャル・デベロッパーとして頑張ろうという決意であります。」と語った。
首都大学東京都市環境科学研究科観光科学域准教授の川原晋氏は「人々の活動の場として街を捉えたい。そのために空間のデザインも必要、活動のデザインも必要、それを支える運営組織も必要。こういったことが南山エリアマネジメントなんです。」と、コミュニティ活動の面からエリアマネジメントについて語った。
ファッションディレクターの干場義雅氏は、「失敗と成功を繰り返して今があると思います。そうした経験を元にして、皆さんがこうしたら良い街ができるのではないか? こうしたらより良い暮らしができるのではないか? 本当に考え抜いたうえで、皆さんが集まってきていると思います。海外の事例はあまり知らないのですが、こんなに考え抜いて住みやすい暮らしを作って頑張っているところは、ここくらいなのではと思いました。きっと、とても魅力的な、とても住みやすい街になると聞き惚れちゃいましたね。」と語った。
今後、都市は空洞化が進むと言われており、その土地に長く住んでもらうためには、ファッションやトレンド、そして生活環境が充実している必要がある。稲城の南山東部土地区画整理事業に関しては、どこよりも魅力的な住環境を作り上げることができるかがポイントなるだろう。
都心から電車で30分程度と利便性の良い場所における生活環境の新たなスタイルづくりが、これから人口が減っていく日本において“住みたい場所”を選ぶ重要なポイントになってくるということが見えたメディアセッションであった。
以上のように、街づくり開発はハードだけではなくソフトも重要になってきており、都市と程よい距離感を持った暮らし、これがこれからのトレンドになっていきそうだ。
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