HTML5の意義はどこにある? NTTコミュニケーションズ「第1回WebRTC/html5業界動向勉強会」
ITライフハック / 2014年12月4日 17時0分
スマートフォンやタブレット端末などが急速に普及する中で、Webサイトの閲覧といえばPCを経由していた時代は終わりを告げリッチコンテンツをPC以外の端末、スマートやタブレットで表示させる人が増えてきた。
動画やアニメーション、CG、音声などを駆使したリッチなWebアプリケーションは、もはや珍しくないほど登場してきており、こうしたサービスを実現する技術として、AdobeのFlash、マイクロソフトのSilverlightといったブラウザ用のプラグインを組み込むことでリッチなWebアプリケーションが楽しめるようになっている。
しかし、Androidの4.1(Jelly Bean)以降からは、ChromeブラウザはAdobeのFlashをサポートしなくなった。iOS用のSafariもFlashには非対応なためPC用のブラウザではFlashが組み込まれたページを閲覧できてもスマホやタブレットでアクセスすると閲覧できないという不具合が発生してしまう、
こういった不具合の解消を含めデバイスを問わないマルチプラットフォームのサービス開発が可能で、かつビジュアライゼーション機能の充実・双方向通信・P2P型の通信などに優れた次世代のWebブラウザの標準言語がHTML5だ。このHTML5および広義のHTML技術であるWebRTCが現在注目を浴びている。
こうした状況を踏まえ、NTTコミュニケーションズは、デバイスフリー時代におけるリッチコンテンツの開発を低コストで実現し、国内外でのサービス化が進むWebRTC/HTML5の技術について、市場のトレンド、国内外の標準化団体の活動状況、国内外のWebRTC/HTML5活用企業のポジションやサービスの特長、および今後の業界展望などについて解説する業界動向勉強会を開催した。
勉強会では、多くのHTML5関連書籍の執筆者であり有識者である株式会社ニューフォリア取締役で最高技術責任者(CTO)羽田野太巳氏を対談に迎えこの激動のブラウザ市場について、国内外で先行する活用トレンドなどもあわせて紹介しつつ最新動向を分かりやすく伝える内容となっていた。
■勧告化されたのは狭義のHTML5のみ
勉強会は「HTML5の意義とWebRTCの可能性」と題し、NTTコミュニケーションズ株式会社技術開発部担当課長の小松健作氏のプレゼンテーションから始まった。小松氏は「カエルさん」として知られる業界では有名なエヴァンジェリストだ。そうした理由から、今回の勉強会でもカエルの着ぐるみでの登場となった。
最初のWebを表示させたHTMLは、非常に簡単なものから始まった。主に文章とリンクによって構成されていた。それからここ10年間のWebの進化は目覚ましい。2005年に登場したGoogle Mapは画面に地図を表示させてスクロールできるようになった。さらに2014年のGoogle Mapでは、3Dで地図を表示できるようになった。2014年10月28日、HTML5は勧告を迎えた。
「HTML5は、あくまで冒頭で最初に紹介した文章、マークアップ表現の新しいバージョンのことを指していて、これくらいになります。ただ世の中でいうHTML5はそれ以外のものも指すというのが、非常に多いです。」と、小松氏。小松氏によると、勧告化されたのは狭義のHTML5のみというのだ。決まっている項目が非常に少ないのだ。
HTML5勧告化が与える意義であるが、既存のWeb制作の現場ではほとんど影響はない。既存のブラウザがHTML5以前のバージョンで動作できるためだ。いっぽうで周辺市場の活性化には繋がるという。具体的には、制作ツールや電子書籍、組み込み機器用ブラウザ等だ。SmartTVやTizen IVIをご存じの人なら、理解できるだろう。
小松氏による説明では、HTML5の勧告化は通過点でしかなく、各種機能(関連API)はHTML5とは独立したものになるという。またFlashやSilverlightに代わる機能として「WebRTC」が挙げられる。
■WebRTCが持つ可能性
WebRTCとは、Web Real Time Communicationの略であり、Webブラウザにプラグインを追加ぜずに、Webブラウザ上でリアルタイムコミュニケーションをサポートする。WebRTCでは、下記が可能だ。
・ブラウザでカメラとマイク、音声と映像を扱える。
・ブラウザ間の直接通信、リアルタイム通信が可能。
・テレビ電話や会議、チャットやファイル転送、音声認識、議事録の自動作成、IP電話や電話との連携。
WebRTCにより、複雑なプロトコル群を容易に利用可能になる。これにより、Webアプリを使いSkypeのようなリアルタイム通信が可能となる。WebRTCでは、WebRTCライブラリがオープンソースで公開されているため、低コストで相互接続性の高いオリジナルアプリ開発が可能となる。
NTTコミュニケーションズのWebRTCへの取り組みとしては、WebRTC利用アプリを簡単に開発できるクラウド基盤「SkyWay」の提供を、2013年12月5日より開始しているそうだ。シグナリング等のAPI、ライブラリ、サンプルアプリ、ドキュメント等を提供しており、いまでは社外の約1000名以上の開発者が利用しているという。
小松氏は先行事例のひとつとして、Googleの「Hangout」を紹介した。「Hangout」は、写真や絵文字、グループでのビデオ通話を可能とするもので、SkypeのようなことがWebブラウザ上で可能となる。
また先行事例のふたつめとして、「Romo」「Double」を紹介した。「Romo」は、iPhoneを利用した「体感型エデュケーショナルロボット」だ。iPhoneのカメラを通した映像をWebで見ることができる。
もう一方の「Double」は、iPadを利用した「テレプレゼンスロボット」だ。病気で外出できない人でも、「テレプレゼンスロボット」を使えば、ほかの人とコミュニケーションを楽に取ることができる。
このようにWebRTCはビデオカンファレンスのゲームチェンジャーであり、ビジネスやライフスタイルを変えることができる。
■「HTML5の勧告は凄い説得力がある」(羽田野太巳氏)
引き続き小松健作 氏による司会で、株式会社ニューフォリア 取締役 最高技術責任者(CTO)羽田野太巳氏を交えたトークセッションが実施された。
まずHTML5勧告についてだが、羽田野氏いわく「勧告はすでにでき上がりましたというお墨付きと考えてよいと思います。」とのこと。エンジニアの気質として、新技術が発表されると、勧告などは気にせず、使い道がわからなくてもまずは使ってみようと、とりあえず使ってしまう人が多い。その中でバグを見つけたりして、情報を交換し合ったりと新しい技術に対してエンジニアは常に貪欲であり続けるわけだ。
「勧告は現場にとってあまり意味はないが、メリットをあげるとすれば、何がありますか?」との羽田野氏の問いに対して、小松氏は「いろいろと(上を)説得しやすくなります。」と即答。これには、羽田野氏も大いに同意するとのこと。決裁権を持った人は新しい技術について、その必要性がわからない人もいる。そうした人には、「勧告出ていますよ!ホラ!」と見せるだけでもの凄い説得力になるそうだ。勧告によってコンセンサスが取れ、抵抗なく使えるようになるというのだ。
そして話題は、WebRTCへと移る。「WebRTCは、ブラウザ上でSkypeみたいなことを実現してしまいます。NTTコミュニケーションさんの本業は電話事業ですが、WebRTCが普及してしまうと、本業を食いつぶすのではないでしょうか。そういったものを最先端で追いかけている小松さんのお立場は、NTTコミュニケーションさん的にはどうなのだろうと疑問が残ります。それでもWebRTCにコミットされているのには、NTTコミュニケーションさん的には何かしらのメリットがあるのでしょうか。」といった問いを投げ掛けた。
「そうですね。いわゆる電話収入が下がってくるというのは、別にWebRTCに始まった話ではなく、アナログの電話、VoIP、インターネット電話、そしてSkypeと、新技術の普及に反するようにどんどん電話収入は下がっています。それがもっと加速されるのだろうな。まあ、ゼロにもマイナスにもならない。よく言うさらっとした言い方としては、そんな中で手を出していかないと、ほかに取られたらしょうがないだろうと。その中でちゃんとチャンスを見いださなければならない、というのがひとつの答えだろうと思います。」と小松氏。
「もうひとつは、電話収入や回線収入が減っているなかで、我々の会社が何をやっているのかというと、やはりソリューションですね。ソリューションによってモノとして組み上げ、いろいろな付加価値を作り上げることによって、顧客にバリューを見いだす。単体の電話や電話回線ではないですよ。と、そういったやり方で、今、ビジネスをやらせていただいております。」と語った。
たとえば、コミュニケーションをとるようなテレビ会議であれば、そこに対するソリューションを作り上げることによって、アウトは下がるかもしれないが、牌が広がる、掛け算をしたら実はプラスであることをねらっていけたらよいというのだ。
今回の勉強会はトークセッションを含め、およそ1時間足らずの短いものだった。ついつい身を乗り出して聞きそうになる話もあり、エンジニアでない人でも十分に楽しめ、勉強になる内容であった。今後、HTMLを利用したリッチなWebが登場してくることは間違いないわけで、その際には先頭集団の中にNTTコミュニケーションズが入っていることは間違いないだろう。
■NTTコミュニケーションズ
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