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Nintendo Switch Lite搭載のファイルシステムを開発したイーソルによる自社製のスケーラブルリアルタイムOS「eMCOS(エムコス)」の新たな仮想化機能「eMCOS Hypervisor」が凄い

ITライフハック / 2020年6月26日 9時0分

Nintendo Switch Lite搭載のファイルシステムを開発したイーソルによる自社製のスケーラブルリアルタイムOS「eMCOS(エムコス)」の新たな仮想化機能「eMCOS Hypervisor」が凄い


イーソルという会社名、あまり聞きなれていない人もいるかもしれないが、実は凄い会社なのだ。同社はNintendo Switch Liteに搭載されているファイルシステム「exFATファイルシステム『PrFILE2 exFAT』」を開発した会社である。高速な読み書きが可能な同社のファイルシステムがあるからこそ、快適にゲームをプレイすることができるというわけだ。Nintendo Switch Liteユーザーは、知らないうちにイーソルの凄い技術に触れているのである。

PrFILE2 exFATを筆頭に同社は縁の下の力持ち的存在の製品が多く、たとえば「eMCOS(エムコス)」という産業機器、IoT機器、自動車関連機器、精密医療機器といった様々な機器を制御することができるスケーラブルリアルタイムOSも、まさに縁の下の力持ち的な製品なのである。

前述した「PrFILE2 exFAT」に加え、自分の身近なところでひそかに使われているかもしれない組み込みOSが「eMCOS(エムコス)」というわけだ。

その「eMCOS(エムコス)」をベースに仮想化機能を組込んだ「eMCOS Hypervisor」が正式にリリースされた。その「eMCOS Hypervisor」が切り開くであろう大きな可能性について紹介しよう。

■eMCOS Hypervisorでできることが広がる
eMCOS Hypervisorを使うと1台のハードウェアプラットフォーム上でリアルタイムOS上の堅牢なリアルタイムアプリケーションと、汎用OS上のリッチアプリケーションを同時に実行し、両者の統合を図ることができる。

ミックスド・クリティカル(※1)な各システムにおいて、それぞれを空間/時間的に完全に分離できるので、eMCOS Hypervisorは、eMCOSに仮想化機能を組み込むことにより、RTOSとしての高いリアルタイム性や安全性を確保しながら、LinuxやAndroidなどの汎用OSも組み合わせた、より柔軟なミックスド・クリティカルシステムの構築が可能となる。
※1:求められる信頼度および安全性能が異なる機能が混在することを指す

■eMCOS Hypervisorの主なメリット
eMCOS Hypervisorの導入には様々なメリットがあるが、大きく見ると以下の4つとなる。

1)eMCOSの高度なスケジューリング機能を利用可能
eMCOS Hypervisorは、同社の商用フルPOSIX OS「eMCOS POSIX」に仮想化機能を組み込む形で実現されており、ロードバランシングや時間分離などといったスケジューリング機能を、同一ハードウェアプラットフォーム上のゲストOSでも活用することができる。

2)汎用OSのブートシーケンスを容易にカスタマイズ可能
ゲストOSはeMCOS POSIXプロセスとして起動されるため、ゲストOSのブートシーケンスを単なるプロセスの起動処理として記述できる。したがって、時間差によるシーケンシャルな起動、マルチコアを用いた並行起動などを容易にカスタマイズできる。しかも、確実なリアルタイム性や安全性の確保を犠牲にすることなく複数のゲストOSを協調させ、かつ必要に応じて負荷分散を行いながら実行することが可能。

3)ドライバを容易に移植可能
Linuxで標準対応されているVirtIOドライバがサポートされており、Linuxゲストを容易に移植できる。さらに、仮想マシンモニターがハードウェアアクセスをフィルタ処理またはパススルーすることが可能なため、SoCに密接に結合されているような固有のドライバも容易に移植できる。

4)誤動作および悪意のあるソフトウェアに対する堅牢性
eMCOS Hypervisorのシステムは、権限の大きいハイパーバイザーおよびカーネル空間に組み込む仮想化のための機構を最小限とし、ユーザー空間に配置される仮想マシンモニター上で大部分の処理を実行するように設計されている。これによりゲストOSおよび仮想マシンの異常によってシステム全体のクラッシュにつながるような致命的な故障が起こることがない。

上記の4点をまとめると、具体的には同一のハードウェア上で仮想マシンを用いて異なるOSを複数立ち上げる際に時間差を設けて立ち上げたり、より多くの処理が必要なケースでは、必要なだけ仮装マシンを立ち上げて負荷分散を行うといった柔軟な対応が可能だ。

ハードウェアを制御する際、仮装マシン上の仮想デバイスを使うとオーバーヘッドが大きくなって処理が遅くなってしまうことを防ぐVirtIOドライバをサポートしているのでハードウェアにアクセスするのが容易に行える。加えて仮想マシンからダイレクトにハードウェアにアクセスさせるパススルー機能も使える。用途に応じて使い分けることができる。

また、仮想マシン上のゲストOSがフリーズしてしまったり、エラーで止まったりしても、eMCOS Hypervisorを含めてクラッシュするようなことが起きないように設計されているため悪意のあるソフトウェアによって仮装マシンが乗っ取られるようなことがあっても、その仮想マシンだけを切り離すことができる。システム全体を停止させる必要なく、仮想マシンの起動と終了が行えるため停止できないサービスなどを長期間連続して運用する際にも安心して利用できる。

以上、eMCOS Hypervisor導入のメリットについて紹介した。たとえばドメイン制御の自動運転車およびコネクテッドカー、スマートファクトリーへの対応、産業用ロボットの自律制御システムなど、今後本格的な普及が見込まれる分野では、求められるシステム要件は年々複雑化、大規模化しており、そうした要件をeMCOS Hypervisorを導入することで解決できる。

また、従来からリアルタイム性が重視されてきた分野においても、他のシステムとの協調動作や統合といった機能がこれまで以上に重要になってきている。自動車分野、産業分野、医療分野など、そうした分野でもeMCOS Hypervisorは、高いリアルタイム性や信頼性、安全性が求められるアプリケーションに最適というわけだ。

今後も私たちの気が付かないところでイーソル製品は縁の下の力持ちとして活躍してくれることだろう。なお、複数の仮想マシンを用いた複雑な制御システム構築を検討しているのであれば、eMCOS Hypervisorを導入してみることを検討することをおススメしたい。

■eMCOS Hypervisor
■イーソル

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