個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四〇回
ITライフハック / 2014年12月26日 9時0分
![個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四〇回](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/itlifehack/itlifehack_7252_0-small.jpg)
■はじめに
早いもので2014年最後の記事になります。
今年の十大ニュースなど扱うのが定番かもしれませんが、もっとユルい感じでいくつかのトピックをピックアップしてみたいと思います。
■最近のトピック
前回扱おうとしていて忘れていたトピックがあります。
楽天Koboの個人出版サービス「楽天Koboライティングライフ」がβ版ながらリリースされたことです。
楽天Koboライティングライフについては、夏ごろにも触れたことがあります。そのときは、海外版のKobo Writing Life用のEPUB制作ガイドラインが発表されたことを紹介しました。そのときも、海外版のKobo Writing Lifeを利用できる状態ではあったものの、日本で正式に公開されている状況ではありませんでした。
それからほどなく開催された東京国際ブックフェアで、2014年中の日本でのリリースがアナウンスされたこともお伝えしました。
それが何とか12月に、しかもβ版の位置づけでリリースされた、ということで若干の不安がないでもないですが、大手日本企業の運営する個人出版サービスということで大いに期待したいところです。
AmazonのKindle ダイレクト・パブリッシングやAppleのiBooksストアでの個人出版では、米国企業の運営になるので米国での源泉徴収が発生してしまいます。
これを回避するためにTIN(米国納税者番号)を取得する必要がありますが、これがなかなか面倒くさいのです(これについても触れたことがあります)。その面倒がない点だけでも個人出版の敷居は随分低くなると思います。
なお、海外版Kobo Writing Lifeに登録した楽天アカウントでは、日本版楽天Koboライティングライフが利用できません(2014年12月現在)。その場合、新たに楽天アカウントを作成して、そちらで日本版楽天Koboライティングライフの登録をする必要があります(Koboライティングライフへの問い合わせ回答)。
次のトピックは年末恒例のJEPA(日本電子出版社協会)主催の電子出版アワードです。こちらも投票受付が始まったときに取り上げました。
結果はJEPAさんのこちらのリンクからご確認いただけます。
・「電子出版アワード2014」
大賞は本ブログでもご紹介したことのある「たびのたね(JTBパブリッシング)」でした。
本ブログではソーシャルDRM(弱いDRM)に着目して紹介しましたが、それ以外にもいくつかのマイクロコンテンツ(記事)を組み合わせて、読者が自分だけのガイドブックを作れる合本機能などが特徴的なサービスです。電子書籍ならではの取り組みが少ない昨今、個人的に選考委員特別賞にはフリーのWebベースEPUBリーダー用ライブラリのBiB/iが選ばれました。
BiB/iはEPUB書籍をWebブラウザで閲覧するためのEPUBリーダーをWebページ内に組み込めるフリーのJavaScriptライブラリです。
電子書籍ストアで販売しているEPUB書籍のお試し版を、自分のサイトで公開する場合などに大変役立ちます。
お試し版のEPUBファイルをダウンロードできるようにしておくのではなくその場で読めるようにしておくというのは、読者にコンテンツに触れてもらうための障壁を大幅に減らすことにつながります。
■2014年のトピック
1年を通して私が個人的に印象に残っているのは、電子書店サービスの淘汰が進んだことです。
2010年当時、日本にも電子書籍が本格上陸すると話題になったときには、様々な事情からなかなか想像したほどには電子書店サービス(クラウドやスマホなどを利用した新世代の)が起ち上がりませんでした。
その後いつの間にか様々な企業から電子書店サービスがリリースされ、ちょっと戸惑うくらいの様相になっていましたが、2014年はサービスを終了するニュースをちょくちょく目にしました。
終了したサービス名をピックアップはしませんが、それらのニュースを目にする度に考えたのは、「電子書籍を購入することで何を得るのか」ということと「サービスの終わり方」です。
「電子書籍を購入する」と言っても、販売の形態によってその性質は異なります。
今回は電子書店のサーバーで購入したDRM保護された電子書籍をその書店用のリーダーアプリで閲覧するという、商用電子書店のスタンダードな形態に絞っています。
このような形態では、読者は書籍の読書権を購入するイメージです。
この場合、書籍を購入した電子書店がサービスを終了すると、一般的に購入した電子書籍は読めなくなってしまいます。
この点は、紙の書籍と大きく異なる点です。サービスが継続している間には気づきにくいですが、サービスが終了するときにクローズアップされます。
サービスが終了する場合、読者は購入した電子書籍が読めなくなります。購入した権利はどうなってしまうのでしょう?
何らかのポイントで購入額分を返還や、別の既存サービスへの統合など、何らかの形で保障するのが一般的です。
しかし、あるサービスでは保障なしにサービスを中止する旨アナウンスがあり、ネット界隈が騒然としたことがあります。結局そのサービスでは購入額分のポイント還元が行われることになりましたが、「電子書籍を購入することで何を得るのか」ということと「サービスの終わり方」を考えるための代表的な事例でした。
■最後に
2015年は電子書籍界隈でどのような動きがあるのでしょうか。
2014年はもう少し教育分野での利用について進展があるかと思っていましたが、2015年はその辺りを引き続き注目していきたいと思っています。
広く教育関連ということでは、図書館への導入なども進んでいくことでしょう。
2014年はコミックの電子化も大きく広がりました。コミックは電子書籍を牽引する大きな分野なので、今後どのような展開があるのか期待したいと思います。
2015年は1回お休みをいただき、1/22を初回とさせていただきます。
皆さまよい年末年始をお過ごしください。
■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi
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