加速するクラウド業界の未来は? 「2015年クラウド業界動向勉強会」レポート
ITライフハック / 2015年2月19日 17時0分
2015年2月17日、都内の会場で「2015年クラウド業界動向勉強会」が開始された。ここでは加速する業務系システムのクラウド化やIoT活用における課題、市場の拡大により示される各社の方針を含めて、2015年におけるクラウドビジネスの展望・予測が語られた。
登壇したのはNTTコミュニケーションズの林雅之氏。同氏は国際大学GLOCOMの客員研究員であるほか、クラウド利用促進機構の総合アドバイザーをつとめるほか、各種書籍を著したり、アイティメディアの「オルタナティブ・ブログ」に「ビジネス2.0」をキーワードに投稿。2700日以上、毎日更新するなど、精力的に活動している人だ。
■AWSのシェアは3割弱
まず、現状における世界のクラウドマーケットシェアだが、AmazonのAWS(Amazon Web Services)のシェアが3割近くになるなど、ここのところ優勢だが、その背後に着くマイクロソフトの追い上げがすごいとのこと。
翻って国内を見たとき、国内の市場規模は6,257億円だったのが、2015年度には1兆円を超える勢いを見せている。企業の8割は新たにシステムを構築する場合はクラウドを念頭に置いており、「クラウドファースト」の姿勢が顕著に現れているという。
詳しく見ると、SaaSやIaaS・PaaSといったパブリッククラウドではAWSが優位だが、ホステッドやオンプレミス、コミュニティといった分野でのプライベートクラウド事業者はNTTコミュニケーションズが優位となっているとのこと。しかもその規模は年々増加しているそうだ。
こうしたシェアを全体的に俯瞰してみると、やはり国内でもAmazonが強く26.8ポイント。その次にNTTコミュニケーションズ、富士通、日本アイ・ビー・エムが続く。Amazonはエンターテイメント業界でも強いが、エンタープライズ市場にも力を注いでおり、優位に立っている。それに続くのは通信分野でもトップクラスの強みがあるNTTコミュニケーションズであるが、それ以降はハードウェアを含めたトータルソリューションを提供できるメーカー。しかし通信に強いと思われるニフティやさくらインターネットといったISP事業者は厳しい現状となっている。
■クラウドは価格競争の時代へ
これからも加速されていくクラウドの業界では、世界的に見ても事業者が淘汰される時代に入っている。IDCによれば、「今後12か月から24か月の間に、IaaSプロバイダが提供するサービスの75%が再設計、再ブランド。あるいは廃止されていくだろう」とのこと。クラウドサービスが広がり、コモディティ化することにより、価格競争にさらされる時代が来ているというわけだ。
世界的に見ても、2014年の春にはGoogleが仮想サーバ「Google Compute Engine」を32%値下げ。マイクロソフトもそれに続く形で、「Microsoft Azure」の仮想サーバを最大35%値下げ。NTTコミュニケーションズも「BIZホスティングCloud n」で仮想サーバを最大37.5%の値下げを発表した。
そして国内では1コイン=500円でのサービスが当たり前に。Amazonに対抗する形での値引き合戦となっている。
■これからのエンタープライズクラウドの方向性は?
いずれにしても、エンタープライズ市場ではクラウド化の波を止めることはできない。まずはシステムの更改時にクラウドへの移行が優先的に検討される。そして旧時代のSAPやIBMi(AS/400)といった基幹システムもクラウド化されるほか、Windows Server 2003からの更改時にもクラウド化が検討されることになる。
クラウド事業者としては、冗長性などの信頼性の確保や、セキュリティ・第三者認証といったセキュア環境の構築が重要であるほか、グローバル拠点への展開が加速している。
こうした流れの結果、これまでのシステムと共存する「ハイブリッドクラウド」での運用が主流となるが、最終的にはクラウドに集約されるだろう、と林氏。
■2015年のクラウド業界ビジネスキーワードは?
2015年、これからクラウド業界の役割と課題はどこにあるのだろうか?
当然これまで以上にクラウドが浸透していくことにより、サービスだけでなくビッグデータ(オープンデータ)の活用がより進んでいくことになるだろう。ガートナーも2015年の戦略的テクノロジー・トレンドのトップ10に「Internet of Things」(IoT)、「Smart Machines」「Cloud/Client Computing」をあげており、IoTとSmart Machinesがどのようにしてクラウドを支えていくかが重要であると林氏は説く。
またクラウドサービスだが、これまではコンシューマーのクラウド、エンタープライズ分野でのクラウドが展開され、クラウドによるビッグデータの活用まで進んできた現状を踏まえてみると、これからはPCやスマートフォンといったパーソナルなデータを処理するだけでなく、よりインテリジェンス性の高い「スマートマシン」とも呼べる自立的に動き、自己学習する特性を持つ分野もターゲットになっていくだろう。
■2015年はクラウドネイティブ元年
こうした動向を踏まえて、2015年以降のクラウドサービスを見ていこう。ビジネスにおいてもクラウドサービスはもはや当然の選択であり、ミッションクリティカルなアプリケーションもすでにクラウドに移行済みもしくは2年以内に移行を検討している企業も増加。「クラウドネイティブ」とも言うべき時代が到来する。
「米調査会社のMarketsandMarketsによれば、2014年には100億ドルであったクラウドプロフェッショナルサービスの市場規模は、2019年には3倍以上の340億ドルに上る」と林氏。
今後はクラウド事業者間の相互接続も加速され、パブリッククラウドサービスの利用形態から、マネージド、あるいは管理プラットフォームを組み合わせて、ユーザー企業の個別ニーズに対応した設計や構築、運用を実施し、信頼性が高く、利便性も高いサービスを選択する企業も出るなど、顧客のニーズがより複雑化していくことは間違いない。そしてレイヤーごとのサービス競争が拡大していくとみられる。
そしてこれに加え、課題解決型のクラウドを基盤としたソリューションが重要に。クラウドを提供するだけでなく、それを基盤後下業界別のソリューションを提供することで、トータルでの収益を拡大する動きが加速していくだろう。
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