EVへの誤解が拡散するのはなぜか?

ITmedia ビジネスオンライン / 2019年8月26日 7時5分

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スズキのマイルドハイブリッドシステム「S-エネチャージ」。36Wh〜120Whといった低容量のバッテリーを使いコストを抑えている

 21日、ITmedia Newsに「電気自動車の世界市場予測 2年後にHVなど抜き主力に」という記事が掲載された。「THE SANKEI NEWS」からの転載記事だ。短いので全文を引用する。

 調査会社の富士経済は20日、電動車の世界販売台数予測について、電動モーターのみで動く電気自動車(EV)が、ガソリンエンジンと併用するハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を令和3(2021)年に抜いて主力となるとの見通しを発表した。17(2035)年には2202万台と、現在の17倍にまで急成長するという。

 従来はPHVが最多になるとみられていたが、中国や欧州などでの政策誘導や技術の進展でEVの伸びが急加速すると予想。日本の自動車メーカーが得意とするHVも増えるもののEVには後れをとる見込みだ。

 今回の予測で17年のPHVの販売台数は1103万台と、昨年予測の1243万台より伸びが鈍化。一方、HVは昨年予測の420万台から785万台に上向いたほか、EVは1125万台から2202万台へ倍増した。

 記事そのものはいわゆる「ストレートニュース」といわれるもので、媒体の見解や論評や考察を含まない単純報道の形になる。「そのように富士経済がいっている」ことを伝えますよという形だ。

 そして、この記事を何の先入観もなく普通に読むと、再来年にはEVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取ると読める。読み手が受ける印象は「日本沈没のXデーはもはやカウントダウン」だ。そう受け取った読者は多いのではないか? まずは安心してほしい。再来年に日本が沈没する可能性はゼロだ。

●記事で省かれた大事な要素

 問題はややこしい。「日本沈没のXデーが再来年」と受け取るのは、最終的には読者の誤読であるが、記事の形は誤読を誘発するようにでき上がっている。それは調査から読者がイメージするところまでの間で、伝言ゲームのように前提条件の欠落が発生し、そこに先入観による補強が加わって引き起こされている。

 そういう報道が繰り返されるのは、今の日本の自動車産業界にとって、さらに日本経済にとって非常に大きな障害ともいえる。ただでさえ悲観的に物事を受け止める癖のある日本人に、悲観的なニュースを送り続け、世相をますます暗くしてどうしようというのか?

 そういう報道が無邪気な無知によるのか、悪意によるのか、あるいは商売としてその方がメリットがあるのかは、おそらく渾然(こんぜん)としており、実態は紙一重だと思っている。今回はこの記事を一例として、何でそんな日本経済の悪い未来を書き立てる記事が繰り返し掲載されていくのかを検証してみたい。

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