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どうする書店不況 ジュンク堂「稼ぐ」サイネージ設置 “過小評価”を払拭せよ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月23日 12時5分

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書店が姿を消している(写真はイメージ)

 書店不況は深刻だ。出版科学研究所によると、2022年の日本の総書店数は1万1495店舗で、2003年時点では2万880店だった。約20年間でほぼ半減した形だ。

 書店という業態を存続させるには、書籍販売以外に収益の柱をつくることが欠かせない。そんな課題を解決するために、丸善ジュンク堂書店は、リテールメディア(小売り店が提供する広告媒体)の運用に乗り出している。

 同社は2月から、書店の入り口にサイネージを設置し、広告を配信している。広告の内容はオンライン英会話の商材だ。書店に訪れる人の「学びたい欲求」と親和性の高いものを選んでいる。「書店の数は減り、本の売り上げも右肩下がりが続く中で、本と文具に続く事業を開発していかなければならない」と、丸善ジュンク堂書店で新規事業開発を担当する坂本恭亮氏は話す。

 同社が導入したリテールメディアの仕組みはこうだ。書店に訪れた人がサイネージに表示されたQRコードを読み込み、広告主のサービスに会員登録をすると、ジュンク堂書店で使えるクーポンが付与される。こうした仕組みで、広告を見た後のアクションを後押しする。これは「AdCoinz」という、実店舗空間に特化したテック企業、LMIグループ(東京都港区)が提供するサービスだ。

●Web上のアフィリエイト広告に代われるか

 クーポン発行の原価は広告主からの広告費でまかなわれる。店舗側はサイネージを設置する場所を提供することで設置代を受け取れ、設置にかかる初期費用はかからない。来店客がクーポンを使用し、追加購買をすることで売り上げ増も見込める。

 広告を見た人がその広告のサービスを購入した場合、店舗側にもレベニューシェアが行われる。サイネージにはAIカメラが搭載されており、サイネージの前を通った人の属性データは店舗側、広告主側に提供されるようになっている。

 AdCoinzの広告効果は、Web広告よりも高い可能性があるという。LMIグループがカラオケ業態の企業で実証実験を行ったところ、一般的なアフィリエイト広告の3倍に相当するアクション数が得られたという。

●小売りは“過小評価”を受けている

 LMIグループの望田竜太副社長は、小売り業を展開する企業は市場から“過小評価”されているのではないかと指摘する。

 「GAFAに代表されるようなメガテック企業は、膨大な生活者の行動データを抱えている。そのデータが市場から高く評価され、時価総額に表れている。一方でリテールビジネスもまた消費者の膨大なデータを持っているはずなのに、同様の評価は受けていない」

 他方、Web広告ビジネスの先行きも順風満帆ではない。サードパーティークッキーの廃止によって、データを収集すること自体が難しくなった。「生活者のデータを収集し、広告によって何かしらの行動をおこしてもらうには、Web以外の世界に出ていく必要があると思っている」(望田氏)

 姿を消しつつある「まちの本屋さん」を惜しむ声は少なくない。書店が持つ空間の特性を生かし、いかに付加価値を生み出すかが、書店とリテールメディアの腕の見せ所だ。

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