1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

AI導入を成功させるには? 不二家とリンガーハットの事例から学ぶ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月6日 7時30分

 技術者たちが尽力して良いシステムを構築したとしても、現場に定着しなければ意味がありません。また構築したシステムを実際に使用してもらい、定着させるためには「現場にとって本当に良いシステム」であることが必要です。そのためには、現場の声を聞き、システムに反映する必要があります。

 AI活用の成功というとシステムの中身に目が行ってしまいがちですが、実はこの「導入と定着の壁」を越えることこそが重要なのです。

 それではこの壁はどうしたら越えることができるのでしょうか。リンガーハットが500店舗近い直営店に需要予測AIを導入した事例をもとに、ポイントを紹介します。

 リンガーハットは、かねてよりAIを活用したシステムで、店舗の売り上げ予測を行っていました。ところがコロナ禍の外出自粛要請で客足がイレギュラーに減ったことで、既存システムの予測精度が著しく低下してしまいました。

 これを受け、パロアルトインサイトと共同で「緊急事態対応型需要予測モデル」を開発しました。このシステムは、地域ごとの情報やイベント、天候などの詳細なデータを基に消費者の需要を予測します。

 緊急事態宣言期間など、通常時と異なる環境に置かれた場合には、より直近のデータを需要予測に反映する「緊急事態対応モード」へシステムを切り替えることで、いちはやく市場変化に対応できるようにしました。

 さらに、このモデルをベースとした「自動発注アプリ」と「店舗シフト管理アプリ」も同時に開発し、毎月10数時間を要していたシフト作成業務が、数時間で終わるようになりました。作業の効率化により、人手不足の解消も見据えています。

 特筆すべきは、これらのシステムを10カ月という短期間で、全国の直営492店舗へ導入できたことです(2024年2月29日時点)。

●スムーズなAI導入に成功した理由

 スピード感をもって導入できた背景には、外部から招致したコンサルタントなどではなく、リンガーハット社内の人材をAIシステムの導入・運用担当にアサインした点があげられます。

 導入にあたっては、全国各地の店舗を訪問して説明会や意見交換セッションなど、現場とコミュニケーションを取りました。これにより、トップからの指示ではなく、現場との相互理解を深めながら「導入の壁」を乗り越えられました。

 また、社内のイントラネット上に専用の掲示板を構築し、従業員が直面する課題や改善提案などのフィードバックをリアルタイムで書き込み共有できるようにしました。これにより、実際の運用中に発生する問題に迅速に対応できる体制が構築され、「定着の壁」を乗り越えられました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください