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80億円集めた社債勧誘は「違法」──スタートアップは要注意、意外な“増資の落とし穴”

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月4日 7時20分

 49人以下の投資者を対象とする小規模な募集を「私募」というが、この場合は登録が必要ない。また、一定の資本要件などを満たした特定機関投資家(いわゆるプロ投資家)は、50人の人数に含まれない。資金が潤沢ではないスタートアップ企業であれば、ベンチャーキャピタルなどを順に訪問し、自社への投資をプレゼンすることもあるだろう。プロの投資家であれば50社を超えても問題ない。

 近年「株式投資型クラウドファンディング」という支援金に対して株式が付与されるタイプのクラウドファンディングの規制が緩和された。Webまたは電子メール経由での募集であることに加え、「調達額は1年間に1億円未満まで」「1投資家の投資額は1年間に50万円まで」といった少額に抑える要件を満たせば、不特定多数への募集も登録なしで行える。こうした仕組みを検討してもよいだろう。

●“楽天モバイル債”は利回り12%、どこが違う?

 ちなみに、今回問題となった「年利20%」という社債の条件だが、「こんな高い利回りにだまされる方がおかしい」と手厳しい声も見られる。低金利が続く日本の社債市場では、通常の社債の年利は0.08~1.5%程度と低く、元本毀損可能性が高いいわゆる「仕組債」でも、年利5~10%程度で落ち着くことが一般的だ。

 しかし、2024年1月に発表された楽天グループ社債は、上場企業が発行するドル建て社債の中でも最も高い年利12.125%を記録しており、利率だけを見たら疑いたくなる読者もいるだろう。

 社債の利回りは、一般にリスクの高さに比例する。信用リスクや財務上のリスクが高いほど、投資家はより高いリターンを期待するわけだ。

 上に挙げた楽天グループの社債は、同社の設備投資に向けて発行された社債であることから、一部では“楽天モバイル債”などと呼ばれている。要するに、相対的に高いビジネスリスクを抱えているといえる。

 これを消費者金融のローンで例えると、一流企業や公務員のような属性ほど低金利で大きな金額が借りられ、定職についていないような属性ほど、金利が高くなり、借りられる金額も小さくなる傾向に似ている。

 結論として、年利20%を超える社債は理論的には存在可能だが、実際にそのような商品に出会った場合、その条件が充足されるかについては十分に警戒した方が良い。

 さらに、赤字が継続している楽天の社債でさえも10%台で社債が発行されていることを考えると、「利回り20%」かつ「元本保証」という条件はやはり大きなリスクを伴う、詐欺をうたがった方が良い案件と考えて良いだろう。

 そもそも、個人向けの銀行系カードローン、ビジネスローンの金利負担は現状14~18%前後が上限である。そうであるならば、わざわざ年利20%の金融商品を募集しなくても、もっと良い条件で金融機関から調達できるはず。また、国や都道府県が提供する事業向け融資の中には金利1%未満で借りられるような制度もある。

 周辺の融資商品や社債の発行状況を参考にすることで、金利に関する「相場感覚」を醸成することも、ビジネスにおいては決して小さくない意味を持つ。

●筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら

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