1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

ロボット支援手術の第一人者に聞く 日本製「ヒノトリ」の可能性

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月23日 19時31分

写真

アイティメディアのインタビューに応じる竹政伊知朗氏(撮影:佐藤匡倫)

 この数年、ロボットを使った手術が広がってきている。従来の手術と比較して精密な操作が可能で、傷も少なく、入院期間も短く済む「ロボット手術」は着実に手術件数が増えてきた。

 消化器外科の領域で多くの手術をこなしてきたロボット手術の世界的第一人者である、札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座の竹政伊知朗教授が5月1日、「日本人に最も多い癌:大腸がん治療の最前線~ロボット支援手術~」と題した市民公開特別講座(札幌市の札幌禎心会病院主催、5月25日に再演)で講演した。同病院では4月から手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」が設置されている。

 同講座の内容と、竹政教授への単独インタビューから、日本製の手術支援ロボットの可能性や今後の展望に迫る。

●日本企業も新規参入 繊細な手術も思い通りに

 ロボット手術では、ロボットに電気メスなどの手術機器を持たせて、血管や神経を切らないように1ミリ単位の繊細な施術が可能だ。竹政教授はロボットの長所をいくつも挙げる。

 「人間の手で行うと手の震えにより正確性を欠くこともありますが、ロボットはそういうことはありません。人差し指ほどの大きさの穴を数カ所開けて、そこから電気メスなど手術機器を持つアームを挿入します。まるで指を動かすかのように手術機器を操作できるだけでなく、手術機器を360度の範囲で思い通りに動かせるので、指より可動範囲が広いのです。しかも患部は3次元かつ実際の10倍の大きさで見られるため、コインの大きさの実物がお皿くらいの大きさで見えます。このため繊細な作業が可能で、コメ粒に字を書くこともできます。またロボットは疲れませんから長時間操作でも繊細さが保てます」

 手術支援ロボットの足取りをみると、1999年に米インテュイティブサージカル社が最初の手術支援ロボット「ダヴィンチ」を発売し、日本には2010年に導入され、2012年に泌尿器領域で保険適用された。2018年に消化器領域でも保険適用され、以降国内でロボット手術の症例が飛躍的に増加。2024年4月現在で700台近くのダヴィンチが導入され、圧倒的なシェアを占めている。

 それが、ここにきて日本メーカーも新規参入している。自動車製造ラインなど日本で初めての産業用ロボットを製造してきた川崎重工業と、検査・診断の技術を保有し、医療分野に幅広いネットワークを持つシスメックスが手術支援ロボットを開発、「hinotori(ヒノトリ)」と名付けた。製造販売しているメディカロイド(神戸市)に話を聞くと、2020年8月から国内で販売を開始し、同年12月に泌尿器領域で、2022年12月に消化器領域でも保険適用になった。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください