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公益通報者が自殺――不正を暴く人が守られない「法の抜け穴」の深刻な大きさ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月10日 7時5分

 お隣の韓国では、2011年に成立した公益通報者保護法で、解雇などの不利な扱いをした企業に対する、罰金や懲役を含む刑罰を定めました。

 また、世界一といわれるほど、内部通報の制度が整備されている米国では、通報者に報奨金が払われます。2023年5月には米証券取引委員会(SEC)が、寄せられた情報が法執行などに役立ったとして、内部告発者1人に過去最高の報奨金約2億7900万ドル(約380億円)を授与したと発表しています。

 報奨金を出すことについては賛否両論があります。しかし、米国はそもそも労働者を守る制度が徹底されているので、企業の不正防止への効果はあるといえるでしょう。

●人は正義感より、組織の在り方に影響される

 むろん最近は日本でも、内部通告により企業の不正やハラスメントなどが明らかになり、経営サイドが責任を取るというケースも増えてきました。しかし、「内部通報制度が機能する=内部通報者が守られる」とは言い切れません。

 大切なのは「勇気ある人」が不利益を被らないために、実効性のある制度を作ること。それでも「不利益を被った」と働く人が訴えた場合には、雇用主側に「不当解雇でないこと」を証明する責任を義務付けることが重要です。

 組織という存在が「働く人=個」にとって、いかに大きなものなのか? を考えれば当然ではないでしょうか。

 ちなみに、海外で行われた調査では、従業員が内部通報に踏み切れるか否かは「個人の正義感や道徳心」より、周囲の支持を得られそうかといった環境の影響が大きいと分かってます。

 「内部通報をしたら組織から多くの支持が得られる」と予測した場合、人は実際に「おかしいことはおかしい」という当たり前のことを通報します。その具体的な行動が「自分で何かを変えられる」という自信と自己効力感を高め、結果、企業の成長につながっていくのです。

●河合薫氏のプロフィール:

 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)がある。

2024年1月11日、新刊『働かないニッポン』発売。

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