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日ハム、JAL……他業種の「銀行サービス」参入が加速 一方「証券サービス」は鈍化、なぜ?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月18日 6時25分

 また、手数料無料化の流れも証券業界への新規参入を阻む要因となっている。米国の大手証券会社チャールズ・シュワブが株取引の手数料を無料化したことを皮切りに、日本でもSBI証券や楽天証券が株式の売買手数料を無料化した。これにより、従来のビジネスモデルが通用しなくなり、新規参入者は新たな収益モデルを構築する必要がある。

 さらに、日本の証券市場はすでに成熟しており、主要なプレーヤーが確立されているため、新規参入者が市場シェアを獲得するのは非常に難しい状況である。既存の大手証券会社は長年の経験と豊富なリソースを持ち、強力な競争力を誇っているため、新規参入者がこれらの企業と競争するのは容易ではない。

 NISA口座は一つの証券会社しか保有できないため、取扱商品が充実している大手の証券会社に投資資金を集中させる動きが生まれ、新規参入の壁を一層高めている。

 また、少額投資サービスの展望も厳しい。かつて注目を集めた「100円投資」のような少額投資サービスは、新NISAの一般化に伴い、投資信託の普及と投資単価の低下を招き、付加価値を提供しにくくなっている。少額投資は投資額が小さいため、証券会社にとって収益性が低く、コストがかさむ。

 このように、日本の金融業界では銀行業界への異業種参入が進む一方で、証券業界への異業種参入は停滞している。背景には、各業界特有の市場環境や規制、新NISAの影響がある。銀行業界は安定した収益モデルや規制緩和、フィンテックの進展により、異業種参入が容易になっている一方で、証券業界は個人投資家のための制度がむしろ業界の疲弊を招いている。

 証券会社が生き残るためには、取引手数料に依存せず、信用取引などの金利収入を多く負担する大口顧客の囲い込みや、投資信託の組成といった安定した収益源の確保が重要だ。証券会社はデジタル技術を活用した新たなサービスの提供や、顧客教育の強化を通じて、価値あるサービスを提供し続けることが求められる。これにより、競争の激しい市場環境でも持続的な成長を実現できるだろう。

 銀行と証券のサービス化は、低金利環境が続く中で、各社が新たな収益源を模索し、顧客に柔軟なサービスを提供するための鍵となる。日本の金融業界は大きな変革期を迎えており、デジタル技術を活用したイノベーションが、その未来を形作る重要な要素となるだろう。

●筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら

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