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なぜヒグマ駆除が「日当8500円」なのか 背景に、働く人の責任感に甘えすぎる問題

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月29日 11時24分

なぜヒグマ駆除が「日当8500円」なのか 背景に、働く人の責任感に甘えすぎる問題

ヒグマの駆除に「1日8500円」、安いよ

 「高校生のコンビニのバイトみたいな金額でやれ。ハンターばかにしてない? って話ですよ」

 北海道猟友会砂川支部 奈井江部会の山岸辰人部会長は地元テレビ局の取材に対して、そんな不満をぶちまけた。

 北海道空知地方の奈井江町がハンターたちにクマ出没時の駆除を要請したのだが、その日当がたった8500円(発砲した場合は最大1万300円)しかなかったという騒動だ。

 この日当に山岸部会長が不満を漏らすのも無理はない。2023年、クマの人身被害は過去最多だった。中でも北海道では、大学生を殺して遺体の一部を食べ、捜索にきた消防団員まで襲ったヒグマも現れた。「宇宙船地球号に乗る同じ仲間」みたいなきれい事では済まされない現実もある。

 そこで頼りにされているのがハンターの皆さんなわけだが、当然「ボランティア」などと今どき虫のいい話はない。休業補償も必要だし、現地へ向かうための燃料費も値上がりしている。ということで、奈井江町の周辺自治体ではクマ駆除の「賃上げ」が相次いでいた。

 例えば、隣接する浦臼町は出動したハンターに対し、駆除の有無にかかわらず1日1万5000円を支払う。同じく隣接する芦別市は出動1回で1万1000円、駆除した場合は1頭3万円を支払っている。

 しかし、奈井江町は日当8500円。「ねえ、オレらのことナメてるでしょ」と町に対してカチンとくるのは当然かもしれない。

●奈井江町は経済的に困窮しているのか?

 という話を聞くと、「小さな自治体は財政が厳しいのでしょうがない」とかなんとか擁護する人もいるだろうが、奈井江町では先ごろ22億円かけた瀟洒(しょうしゃ)な新庁舎を建てたばかりだ。

 2022年度(令和4年度)決算でも一般・連結ともに赤字なし。地方公共団体の財政の全体像を浮き彫りにする「健全化判断比率」を見ても、健全化の必要となる基準を大きく下回っている。

 つまり、「日当8500円を1万5000円にしたら財政が破綻します」というほど経済的に困窮している自治体ではないのだ。それは裏を返せば、この町ではシンプルにハンターという人々の労働対価を、高校生のコンビニバイトと同程度に見積もっていたということなのだ。

 5月27日の報道によれば、三本英司奈井江町長がハンターへの報酬増額を検討しているという。ハンターという特殊技能を持つ人々への敬意を忘れず、その危険性や労力に見合う報酬にしていただきたい。

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