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私鉄に「駅が多い」のは、なぜ? 小まめに乗客を集めている背景

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月1日 7時0分

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私鉄に「駅」が多い、なぜ?

 都市部の私鉄とJRを比較する際、「駅が多いか少ないか」という視点がある。私鉄は駅が多く、駅間距離が短い。JRは駅が少なく、駅間距離が長い。

 私鉄の場合、よく言われるのは経営戦略上「駅間距離を短くすることで各地域の利用者を確保するため」というものだ。

 JRの場合はそうではない。明治・大正時代に国の方針に沿う形でJR路線の前身となる各私鉄は駅をつくっていった。しかし、遠方への速達性を確保し、長距離を走るためにこまごまと停車する必要がなかったという事情がある。

 実際、中央本線が国有化される前の私鉄・甲武鉄道は、新宿~立川間で開業した際に中野、境(現在の武蔵境)、国分寺しか途中駅がなかった。吉祥寺や国立といった駅は、あとからできたものである。「甲武鉄道」という名前の通り、甲斐(山梨県)と武蔵(東京都など)を結ぶことを目的とした。

 そもそも甲武鉄道を経営していたのは、甲州出身の実業家・雨宮敬次郎氏である。この路線は国有化後に山梨県まで到達し、その後東京と名古屋を結ぶ路線となった。

●現在の都市圏私鉄は地域のためにつくられた

 現在JRとなっている路線の多くは、もともと全国ネットワークのためにつくられた私鉄の路線だった。国だけでは鉄道網をつくり切れなかったため、有力者などの力を借りて鉄道網をつくり出し、後に国有化したのだ。独特の「沿線カラー」があり、私鉄っぽさもある中央線にも、そういった過去がある。

 一方、関東や関西など都市圏で地域輸送のためにつくられた私鉄は、郊外と中心部を結ぶことを目的としているものだ。

 中央本線が旧甲州街道から離れた場所を通っているのに対し、京王電鉄京王線は旧甲州街道沿いを通っている。東海道本線が旧東海道沿いを走る路線であっても駅を厳選しているのに対し、京急電鉄は細かく停車している。

 ちなみに関西でも、阪神電気鉄道は並行する東海道本線よりも停車駅が多く、各駅停車のために加減速性能を向上させた車両を導入している。この鉄道は旧山陽道に並行している。

 現在JRとなっている路線は、長距離路線のため人が少ないところを通ったり、駅を厳選したりしていたが、私鉄は短距離志向で、駅を小まめに設けている。

 そもそも私鉄の駅は、どんな場所にあるのだろうか。

●私鉄の通る地域の歴史を考える

 筆者は京王線沿線の調布市に住んでいる。旧甲州街道沿いにあり、この道路は現在の国道20号線とほぼ一致する。

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