求人への応募は3倍に 愛知県の運輸会社が「年間1000万円」かける“本気の健康経営”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月25日 8時25分
鍋嶋洋行社長
今年から始まった残業時間の規制により、ますます人手不足が深刻化する運輸業界。厳しい状況が続く中、愛知県瀬戸市の大橋運輸では県外からも求人に応募があり、6年連続で新卒も入社しているという。
社長の鍋嶋洋行氏は「今は、会社が人を選ぶのではなく人が会社を選ぶ時代」と語る。同社が選ばれる理由はどこにあるのか?
●「年間1000万円」もの健康への投資
今年、大橋運輸は経済産業省から8年連続となる「健康経営優良法人」の認定を受け、その中でも上位の中小企業に冠する「ブライト500」に4年連続で入選している。
鍋嶋社長によれば、社員の健康増進に力を入れるようになったのは15年ほど前。年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられる中、長く働き続けるには健康が何より重要だと考えたからだという。
「当時は、健康診断で病気の早期発見、早期治療をしましょう、ということが言われていました。しかし、ドライバーという職業では予防の方が大切だと考え、健康経営に取り組み始めました」(鍋嶋氏)
始めた当初は年間数十万円だった健康への投資は、今では約1000万円にのぼる。従業員1人あたり約10万円程度の投資だ。「最初から1000万というわけにはいかなかったけれど、続ける中で十分に回収可能なコストだと分かってきた」と鍋島氏は振り返る。
●健康経営の効果 喫煙率、肥満率はどれだけ改善した……?
目に見える成果としては、例えば喫煙率の低下がある。
運輸業界は世間一般に比べて喫煙率が高く、2022年に心幸ウェルネス(兵庫県尼崎市)が実施した調査では喫煙習慣がある運送ドライバーは50%に達した。
大橋運輸では、喫煙のリスクが分かりやすく描かれたアニメ『はたらく細胞BLACK』を紹介するなど頻繁に情報発信。禁煙を宣言した社員に対して禁煙外来受診料の補助、定期的なアドバイス、100日間の禁煙達成に対する表彰と副賞の授与などの施策でサポートしてきた。
その結果、2016年は50%だった喫煙率が2023年には32%にまで低下、今年5月の時点で社内5部門のうち大型トラックを扱う部署を除く4部門で喫煙者ゼロを達成。最新の集計では喫煙率29%となった。
他にも食事指導に加え、運動や睡眠などの健康情報の発信による従業員の意識改革が功を奏し、肥満率は2019年の39%から19%に低下、定期歯科検診受診率は64%に達するなど、社員の健康に対する意識の向上が数字に現れている(いずれも2023年の実績)。
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